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魔道具を使わないのか?

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 ヴァルは引き続きシンの特訓を続け、その近くではパティがまたも寝っ転がり暇そうにしている。
「そうそう、その調子で動きに慣れるのよ」
「は、はいっ。……てやぁっ!」
 数分おきに襲いかかるストライクバードは、集中力を切らすとその動きには対応出来なくなる。
 そうでなくても避けるのがギリギリで、剣を当てるのは非常に難しい。
「み、皆さん……こんなふうに特訓してるんですね。
 ……はぁっ、結構しんどいです」
 重さは2、3kg程度だろうが、剣を本気で振りかぶるのは思いの外過酷であった。
 遠心力もかかるため、それを握っておくのに必要な握力が、どんどんと奪われていくのだ。
 冒険者なら簡単に稼げると言う者も多いが、それほど旨い話でもないことをシンはこの時に知った。
 ところがヴァルは言う。
「いえ……普通は大きな盾にぶつかってきたところを仕留めるわよ。
 こんな訓練する人いないんじゃないかしら?」
「そ、そうなんですか……?」
「うん。やっぱり魔物の特徴を捉えて行動するっていうのも大事だしね。
 剣の腕を磨くためにやるのかと思ってたんだけど……違った?」
 シンは少しだけ呆気に取られてしまった。
 いや、たしかに剣を使ってみたいと言い出したのは自分であり、魔物の倒し方を学びに来たわけではなかったのだが。
 結局そんなことを口にすることはできず、初日はほとんど成果も得られずに終了してしまった。

「じきに暗くなりますし、続きは明日にいたしましょうか?」
「う、うん。
 一応2匹は狩れたから、宿代くらいは……」
 頑張って狩ることができた2匹のストライクバード。
 初日だし仕方ないとは思うものの、なんとなく残念な気持ちはあった。
 ところが、未だに寝そべっているパティに目をやると、その傍には膨らんだ麻袋が1つ。
「ん……クシュッ……
 ……なんだ、やっと終わったのか?
 もう冷えて仕方ないぞ、早く町に戻ろう」
 その髪には葉が2枚3枚と。
 何しに来たのかと思うくらいだが、実はしっかりと狩りをしていたようで不思議である。
「相変わらずパティはマイペースですよね。
 こっちは頼まれて来てあげてるっていうのに」
「まぁまぁ、さっさと換金して飲もうじゃないか」
 おそらく十数匹、帰り道にヴァルに尋ねてみたところ『寝そべりながら魔道具の力を使って手掴みにしていたわよ』と聞かされる。
 換金に間に合うよう急ぎ足で町に向かうパティの後ろを、シンは追いかけながら疑問に感じていた。
 その小さな身体のどこにそんな体力があるのだろうかと。
 そこそこの重量の魔物を抱えるパティを、シンは追いかけるのが精一杯だったのだ。

 ヴァルにも仕事があるからということで、3日目までは半日のみ訓練に付き合ってくれて、その後はパティと2人きりということになった。
 剣の腕は増すどころか、疲労のせいで日に日に傷が増えていく。
 自らの狩った魔物だけでは生活が厳しく、これならばピアラビットを捕まえた方がマシだったとも思える。
 しかし、そちらも全てがうまくいったわけではないようで、今は買い取るのが難しいのだと聞かされていた。
 結局のところ、また薬草採取に戻るか別の魔物を狩るしかなかったわけだ。

「よーし、邪魔者も消えたことだし、もう少し奥に向かうかー」
 そして何故か意気揚々と林の奥へ向かおうとするパティ。
「えっ⁈
 ちょ、ちょっと奥って……魔物がたくさん出てくるから危険だってヴァルが」
「だから向かうんじゃないか。
 こんなところで緊迫感も無しに特訓してても魔道具の使い方なんて覚えられないぞ」
 さらっととんでもないことを言い出すものだ。
 つまりは自分に死に物狂いで戦えと言っているんだなと理解する……いや理解はできないシンであった。
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