101 / 101
最終話 新たな冒険
最終話 新たな冒険
しおりを挟む
俺たちは開拓村ゲラからほど近いオリダ市へと移動し、数日滞在していた。
もともとナバーロ国に入る予定は無かったのだが、できれば崩壊したエスコーダ領を回避したかったのと、開拓村で人別標をもらった偶然が重なり進路を変えたのだ。
そして、このまま西に大きく迂回して南に向かう――はずだったのだが、ここで思わぬ足止めを食らった。
その足止めの原因とは隣で「ふがふが」と色気のないイビキをかいている。
そう、シェイラだ。
レーレと別れてから、シェイラは大泣きに泣いた。
その嘆きは大変なもので、まともに歩くこともできず、この町へは俺がおぶって来たほどだ。
そして、シェイラをなだめ慰めしてるうちに……なんというか、なるようになったのだ。
レーレと3人で旅をしていたバランスが崩れたのもあるだろう。
それに、互いに憎からず思う男女が2人で旅をすれば、そこは時間の問題でもあったと思う。
心配していたアレの具合も、ハイコボルドのぬるぬると、シェイラが『練習』してたお陰でクリアできた。1度成功してしまえばなんとでもなる。
いざ、こうなってみるとシェイラは可愛い女だ。
恥ずかしがりながら「じ、自分で練習したから大丈夫だ」とか言われたときはアレがコレもんに反応してヤバかった。
それ以来、俺たちは食事の時間も惜しんでイチャイチャしてるわけだ。今も互いに素っ裸、実に有意義な時間である。
「ふがっ!? う、ん……どうしたんだ、エステバン?」
じっと眺めているとシェイラが目覚めた。
無呼吸症候群が心配になるような目覚めである。
俺が「寝顔を見ていたのさ」と伝えると、彼女は大照れして布団を頭から被った。
これが可愛く思える辺り、俺もだいぶやられてるみたいだ。
……処女を嫁にもらうとパン屋が休むって本当だなあ。
これはアイマール王国の言葉だ。
処女を嫁にすると夢中になり、普段は休めないパン屋でさえ店を閉めてしまう、という意味である。
……ま、パン屋ならぬ冒険者が休業したって構わないさ。
俺はそっとシェイラの布団を引き剥がし、視線を合わせた。
そして顔を近づけ――
『きしし、よかったねシェイラ』
耳慣れた声が、どこかで聞こえた。
シェイラが大きく目を開き、勢いよく頭を起こす。
「あぶっ!」
「痛ーっ、こら」
顔が至近距離だったために、俺とシェイラの前歯同士がぶつかった。
地味だが痛い。
「痛てて。ごめん、でも――」
声のした方に顔を向けると、レーレがちょこんと窓際に座っていた。
シェイラが「レーレ!」と喜びの声を上げる。
「きしし、2人ともお楽しみだねー」
レーレは嬉しそうにしているが、彼女はリリパットの里で群れを率いることになったはずだ。
放り出してきたなら、さすがにマズイだろう。
「おいおい、ここにいていいのか?」
つい、心配になって声をかけてしまう。
すると、こちらの心配を察したか、レーレが「心配しないで」と片目をつぶった。
あざとい仕草だが、よく似合っている。
「考えてみたらボクはリリパットの里に帰りたかったワケじゃないんだよね。それに――」
レーレが部屋のすみに視線を向けると、無数の気配がうごめくのを感じた。
本能的な恐怖が背筋を刺激する。
「みんなもエステバンのことが好きになったから、ついて行きたいんだってさ」
レーレの言葉を合図にして、リリパットたちがベッドに群がってきた。
シェイラは嬉しそうな顔で「あはっ」とか喜んでるが……どうすんだこれ。
「また、また一緒に冒険できるなっ!」
「これからもよろしくね、2人とも」
だが、再会を喜ぶ彼女らを見れば、なにも言えなくなってしまう。
シェイラはレーレを手の平に乗せ、嬉し涙を流した。
レーレもニコニコと満面の笑みだ。
「ま、いいか」
俺もリリパットたちにたかられながら喜びの輪に加わった。
色々と問題はありそうだが、あとの心配はあとですればいい。
今は再会を喜ぶのだ。
「よし、それじゃナバーロ国を越えて魔族の国に向かうか」
「あはっ、大冒険だな!」
俺たちの言葉を聞いてリリパットたちも歓声をあげた。
俺は3等冒険者エステバン。
まだまだ冒険は続くようだ。
もともとナバーロ国に入る予定は無かったのだが、できれば崩壊したエスコーダ領を回避したかったのと、開拓村で人別標をもらった偶然が重なり進路を変えたのだ。
そして、このまま西に大きく迂回して南に向かう――はずだったのだが、ここで思わぬ足止めを食らった。
その足止めの原因とは隣で「ふがふが」と色気のないイビキをかいている。
そう、シェイラだ。
レーレと別れてから、シェイラは大泣きに泣いた。
その嘆きは大変なもので、まともに歩くこともできず、この町へは俺がおぶって来たほどだ。
そして、シェイラをなだめ慰めしてるうちに……なんというか、なるようになったのだ。
レーレと3人で旅をしていたバランスが崩れたのもあるだろう。
それに、互いに憎からず思う男女が2人で旅をすれば、そこは時間の問題でもあったと思う。
心配していたアレの具合も、ハイコボルドのぬるぬると、シェイラが『練習』してたお陰でクリアできた。1度成功してしまえばなんとでもなる。
いざ、こうなってみるとシェイラは可愛い女だ。
恥ずかしがりながら「じ、自分で練習したから大丈夫だ」とか言われたときはアレがコレもんに反応してヤバかった。
それ以来、俺たちは食事の時間も惜しんでイチャイチャしてるわけだ。今も互いに素っ裸、実に有意義な時間である。
「ふがっ!? う、ん……どうしたんだ、エステバン?」
じっと眺めているとシェイラが目覚めた。
無呼吸症候群が心配になるような目覚めである。
俺が「寝顔を見ていたのさ」と伝えると、彼女は大照れして布団を頭から被った。
これが可愛く思える辺り、俺もだいぶやられてるみたいだ。
……処女を嫁にもらうとパン屋が休むって本当だなあ。
これはアイマール王国の言葉だ。
処女を嫁にすると夢中になり、普段は休めないパン屋でさえ店を閉めてしまう、という意味である。
……ま、パン屋ならぬ冒険者が休業したって構わないさ。
俺はそっとシェイラの布団を引き剥がし、視線を合わせた。
そして顔を近づけ――
『きしし、よかったねシェイラ』
耳慣れた声が、どこかで聞こえた。
シェイラが大きく目を開き、勢いよく頭を起こす。
「あぶっ!」
「痛ーっ、こら」
顔が至近距離だったために、俺とシェイラの前歯同士がぶつかった。
地味だが痛い。
「痛てて。ごめん、でも――」
声のした方に顔を向けると、レーレがちょこんと窓際に座っていた。
シェイラが「レーレ!」と喜びの声を上げる。
「きしし、2人ともお楽しみだねー」
レーレは嬉しそうにしているが、彼女はリリパットの里で群れを率いることになったはずだ。
放り出してきたなら、さすがにマズイだろう。
「おいおい、ここにいていいのか?」
つい、心配になって声をかけてしまう。
すると、こちらの心配を察したか、レーレが「心配しないで」と片目をつぶった。
あざとい仕草だが、よく似合っている。
「考えてみたらボクはリリパットの里に帰りたかったワケじゃないんだよね。それに――」
レーレが部屋のすみに視線を向けると、無数の気配がうごめくのを感じた。
本能的な恐怖が背筋を刺激する。
「みんなもエステバンのことが好きになったから、ついて行きたいんだってさ」
レーレの言葉を合図にして、リリパットたちがベッドに群がってきた。
シェイラは嬉しそうな顔で「あはっ」とか喜んでるが……どうすんだこれ。
「また、また一緒に冒険できるなっ!」
「これからもよろしくね、2人とも」
だが、再会を喜ぶ彼女らを見れば、なにも言えなくなってしまう。
シェイラはレーレを手の平に乗せ、嬉し涙を流した。
レーレもニコニコと満面の笑みだ。
「ま、いいか」
俺もリリパットたちにたかられながら喜びの輪に加わった。
色々と問題はありそうだが、あとの心配はあとですればいい。
今は再会を喜ぶのだ。
「よし、それじゃナバーロ国を越えて魔族の国に向かうか」
「あはっ、大冒険だな!」
俺たちの言葉を聞いてリリパットたちも歓声をあげた。
俺は3等冒険者エステバン。
まだまだ冒険は続くようだ。
0
お気に入りに追加
62
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
おっチャンの異世界日記。ピンクに御用心。異世界へのキッカケは、パンツでした。
カヨワイさつき
ファンタジー
ごくごく普通のとあるおっチャン。
ごく普通のはずだった日常に
突如終わりを告げたおっチャン。
原因が、朝の通勤時に目の前にいた
ミニスカートの女性だった。女性の
ピンク色のナニかに気をとられてしまった。
女性を助けたおっチャンは車にはねられてしまった。
次に気がつくと、大きな岩の影にいた。
そこから見えた景色は、戦いの場だった。
ごくごく普通だったはずのおっチャン、
異世界であたふたしながらも、活躍予定の物語です。
過去の自身の作品、人見知りの作品の
登場人物も、ちょっと登場。
たくさんの方々に感謝します。
ありがとうございます。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ハイペースの更新ありがとうございます。面白く読ませていただいています。
9話の1が8話の6と同じ内容になっていますが、更新ミスでしょうか?