35 / 101
7話 男の純情
3 下水道の探索
しおりを挟む
翌日
俺たちが支度を整え指定された場所に行くと、すでにエゴイは待機していた。
エゴイも手に薪割り斧を持ち、革のヘルメットと革の前掛けを身に付け、大きな丸い盾を背負っている。
軽装ではあるが悪くない武装だ。
待ち合わせ場所はダマスの町よりやや離れた窪地。
窪地の斜面にはモルタルで固めた横穴があり、見るからに頑丈そうな鉄格子が塞いでいる。あれが下水道の出入口なのだろう。
下水道から流れ出た水は思いの外に清らかで、小さな流れとなって窪地の裂け目より流れ出ている。
俺が「お待たせしました」と軽く謝罪すると、彼は手を軽く振って言葉を遮った。
どうやら挨拶は不要らしい。
「ここが下水の排水口だ。鍵を開けよう」
エゴイが鉄格子の鍵を開けると中にはさらに鉄格子が見えた。普段は頑丈に封鎖されているようだ。
中は真っ暗であり、松明が必要になるだろう。
トンネルになった内部は俺とシェイラが並んで歩くには狭いが、それなりの高さと広さはある。
床は真ん中が凹の形に窪んでおり、チョロチョロと水が流れているようだ。臭いはない。
「水が流れてますが、これは浄化した汚水ですか?」
俺が尋ねると、エゴイは「うむ」と頷く。
「ここに流れる水は4回も浄化槽を通過しておるから真水に近い。3層目くらいからは臭いぞ。目的の大物スライムは4層目、1番近い浄水槽に現れた。スライム以外にもオオネズミや巨大ローチがいるから気を付けるようにな」
エゴイの言葉を聞き、俺は「うえっ」と舌を出した。
オオネズミは、そのまんま子犬くらいあるドブネズミ、巨大ローチは50センチくらいあるゴキブリだ。
はっきり言って生理的に苦手なモンスターたちである。
「シェイラはネズミとかローチ平気か?」
俺が尋ねると「わりと美味しいぞ」と恐ろしい返事が返ってきた。
そう、この世界のローチは食用になる。種族によっては昆虫食がメインの亜人もいるので人間でも忌避感が薄い。
森で生活する森人にとって昆虫がタンパク源になるのは分かる、分かるが……俺はどうしてもダメだ。
どうしよう、もう森人とはキスできないかもしれない……したことないけど。
「シェイラ、これからはちゃんと歯を磨かないとキスしてやらないぞ」
「ふがっ! いいいきなりなんなんだよっ! 歯は一昨日磨いたよっ! 別にキ、キスとかしてほしくないしっ!」
シェイラが色気の無い変な声を出した。
暗がりでも分かるくらいに真っ赤になり、火をつけたばかりの松明を振り回す様子は見ていて楽しいが……松明消すなよ。
ちなみにこの世界では歯磨きしないヤツも多いので、彼女が特別不潔な訳でもない。たまに磨くのはましな部類だ。
毎日歯を磨く俺は身だしなみに気を使うオシャレマン枠なのである。
俺とシェイラは馬鹿みたいな話を下水道の入り口から大声で響かせる。
こうやって賑やかにすることはネズミやローチを避ける意味もある。
オオネズミやローチは人間を避けるので、こうしてこちらの位置を教えてやるのは大切なことだ。無駄な戦いはしないに限る。
俺たちの先頭は道案内を勤めるエゴイ。何と盾に松明ホルダーがついており、盾と斧を構えながら進む。地人のこうしたアイデア装備には驚かされるばかりだ。
真ん中は俺、敵が出れば前に出るタンク兼アタッカーだ。
今回の探索では戦闘を一手に担う形になるだろう。
そして最後尾はシェイラ。
松明を手に持ち、大量の塩が入った背嚢を背負う。そして小分けにした塩の袋を腰からぶら下げている。
スライムは塩をかけると浸透圧だかの関係で縮む。詳しくは分からんが効果的な駆除方法だ。
塩が苦手なモンスターはわりといるので、食用にならないような砂混じりの塩にも一定の需要があり流通している。
彼女は俺が無力化したスライムに塩を掛ける役だ。妖怪塩かけ森人(エルフ)。ちなみに塩は経費としてエゴイに認めさせた。
この隊列は賑やかに通路を進む。
すると、ほどなくしてエゴイが何かを見つけたようだ。
「ほれっ、いたぞい」
エゴイがブチュリと鼻水のようなモンスターを踏み潰し、シェイラが塩をパッパッと振り掛けた。
あわれなスライムはみるみるうちに萎んでいく。
スライムは核が無ければこの程度の存在である。
「この通路に居るのは浄化槽より溢れ出たヤツじゃ。遠慮なく片付けてくれ」
スライムが出たことで隊列を入れ替え、俺が前に出る。
視界の端ではオオネズミの死骸を取り込んでいたスライムが確認できた。
ネズミの死骸は気の弱い人なら直視できない感じに溶けている。
……ネズミを仕留めるとは核つきだな。
俺が油断せずにジリジリと近づくとスライムはネズミから離れ、バスケットボールくらいのサイズにまとまり飛び掛かってきた。
成人男性の胸の辺りまで跳ねるなど粘菌にあるまじき動きだ。
俺はスライムの動きに合わせてバットのフルスイングのように剣を叩きつけ両断し、むき出しになった核を勢い良く踏み砕いた。
するとスライムは弾力を無くし、べちゃりと鼻水のように広がる。
理屈は分からないが、核を持つスライムは周囲の組織を筋肉のように使い、ダイナミックに動く。両断した手応えも固くなりコンニャクゼリーみたいな感触だ。
核は軟骨みたいな白っぽい色合いで、先ほどのスライムだとピンポン玉くらいの歪な球体をしている。
成長すると核は前後に伸びていき、最終的には肋骨のように左右にも張り出してくるそうだが、さすがに下水道にそこまでの大物はいないと信じたい。
核スライムのダイナミックな動きにも驚かされるが、スライムの恐ろしさはそこではない。
スライムは人間を恐れない上に半透明で視認しづらく不意打ちにも注意しなければならない。気の抜けないモンスターだ。
どこかのゲームのようにザコではない。
俺の動きを見たエゴイが「ほほう、やるのう」と目を細めた。
どう言うわけかこの地人は俺に好意的だ。
初めはやり手の無い依頼を引き受けたからだと思っていたのだが、それにしてはシェイラへの態度が説明できない。
彼は森人が気に入らないのか、終始シェイラを『いないもの』として扱っている……無視しているのだ。
俺が依頼を受注したことに感謝しているのならシェイラに冷たくするのはおかしい。
まあ、種族的なことがあるので仕方ない面もあるとは思うのだが、俺とシェイラに対する態度の違いはそれだけでは無い気がするのだ。
だが、それが何かは分からず、何とも言えない違和感として残っている。
……まあ、考えても仕方ないか。
俺は水の中に核無しのスライムを見つけて蹴飛ばした。バシャリと水しぶきが立ちスライムが潰れる。
そこにシェイラがすかさず塩を掛けた。ナイスな連携だ。
「良し、狭い通路なら問題ないな。どんどん進んでいこう」
俺は2人に声をかけ、先に進む。
別に急ぐわけではないが微妙な人間関係の中、いつまでも下水道に閉じ籠ってスライム退治をするのは気が滅入る。さっさと終わらせたい。
――――――
数十分後、広い部屋に出た。
200坪くらいの広さがある空間、左の壁沿いが通路になっているのみで部屋の大半は膝くらいまでの浅い水槽だ。これが浄水槽なのだろう。
浄水槽を覗き込むと、びっしりとスライムが入っており、うぞうぞと蠢いている。
その様子に俺は生理的な嫌悪感を覚え、思わず仰け反った。気色悪すぎる。
「来るよっ! エステバン!!」
シェイラが叫ぶと同時に水中から何匹か核つきのスライムが跳ね上がった。
中には俺の腰くらいまである大物も混じっているようだ。
「数が多いぞっ! 囲まれる前に通路まで下がれ!」
俺は指示を出しながら飛び掛かってきたスライムを拳で叩き落とした。核スライムは硬いので殴ることができる。
スライムに取り込まれると徐々に溶かされるが、この程度の接触ならば特に問題はない。
俺は剣を振るって次のスライムを切り飛ばしたが、核は破壊できなかったようだ。スライムには恐怖心や痛覚は無いらしく、中途半端にダメージを与えても怯んだ様子は見せず次々に飛び掛かってくる。
2匹、3匹と切り払ったが核を破壊できたかは確認できない――暇が無いのだ。
「シェイラ、塩を撒け! ぶわっと盛大にな!」
俺の指示でシェイラが部屋の出口付近にバアッと塩を撒く。
これで少しはスライムの追撃を遅らせることができるはずだ。
再度、シェイラは塩を撒き、俺とエゴイは塩の結界に守られて退却した。
「なるほど、これは『掃除』が必要なわけだ」
俺はぼやきながら来た道を引き返す。
何も1回目のアタックで全てを片付ける必要はない。
偵察し、準備を整えて再アタックすれば良いのだ。
俺たちは一旦、外に出て体勢を整えることにした。
幸いに、距離をとればスライムは追ってこない。
「やれやれ、少なければ浄化に支障が出るし、多ければ手がつけられん。スライムの調整を間違えたようじゃ」
どこかのんびりとした様子でエゴイが嘆息した。
お前のせいやんけ。
■■■■■■
下水道
その名の通り、下水道。
雨水や生活排水・産業排水など、都市から出る下水を離れた場所に排出する施設。
アイマール王国ではあまり普及していないが、技術力のある地人の都市では下水道は古くから用いられている。
元々は下水を都市から離れた場所に垂れ流しにしていたようだが、その下水が周囲の環境を破壊し、特定のモンスターが爆発的に増える災害が多発した。そのため、スライムを利用した浄水槽などの研究が進められている。
ちなみにスライムを用いる浄化システムは地人都市でも最先端の技術であり、スライムの数の調整などは各都市の技術者の頭を悩ませているようだ。
今回の件も決してエゴイがヘボくてスライムが増えたわけでもなく、ダマスの町の下水道のデータは他の都市にフィードバックされるはずである。
実験場にされていることをダマスの領主が知ったら怒るかも知れないので、エゴイは自力で解決しようと頑張っているようだ。
俺たちが支度を整え指定された場所に行くと、すでにエゴイは待機していた。
エゴイも手に薪割り斧を持ち、革のヘルメットと革の前掛けを身に付け、大きな丸い盾を背負っている。
軽装ではあるが悪くない武装だ。
待ち合わせ場所はダマスの町よりやや離れた窪地。
窪地の斜面にはモルタルで固めた横穴があり、見るからに頑丈そうな鉄格子が塞いでいる。あれが下水道の出入口なのだろう。
下水道から流れ出た水は思いの外に清らかで、小さな流れとなって窪地の裂け目より流れ出ている。
俺が「お待たせしました」と軽く謝罪すると、彼は手を軽く振って言葉を遮った。
どうやら挨拶は不要らしい。
「ここが下水の排水口だ。鍵を開けよう」
エゴイが鉄格子の鍵を開けると中にはさらに鉄格子が見えた。普段は頑丈に封鎖されているようだ。
中は真っ暗であり、松明が必要になるだろう。
トンネルになった内部は俺とシェイラが並んで歩くには狭いが、それなりの高さと広さはある。
床は真ん中が凹の形に窪んでおり、チョロチョロと水が流れているようだ。臭いはない。
「水が流れてますが、これは浄化した汚水ですか?」
俺が尋ねると、エゴイは「うむ」と頷く。
「ここに流れる水は4回も浄化槽を通過しておるから真水に近い。3層目くらいからは臭いぞ。目的の大物スライムは4層目、1番近い浄水槽に現れた。スライム以外にもオオネズミや巨大ローチがいるから気を付けるようにな」
エゴイの言葉を聞き、俺は「うえっ」と舌を出した。
オオネズミは、そのまんま子犬くらいあるドブネズミ、巨大ローチは50センチくらいあるゴキブリだ。
はっきり言って生理的に苦手なモンスターたちである。
「シェイラはネズミとかローチ平気か?」
俺が尋ねると「わりと美味しいぞ」と恐ろしい返事が返ってきた。
そう、この世界のローチは食用になる。種族によっては昆虫食がメインの亜人もいるので人間でも忌避感が薄い。
森で生活する森人にとって昆虫がタンパク源になるのは分かる、分かるが……俺はどうしてもダメだ。
どうしよう、もう森人とはキスできないかもしれない……したことないけど。
「シェイラ、これからはちゃんと歯を磨かないとキスしてやらないぞ」
「ふがっ! いいいきなりなんなんだよっ! 歯は一昨日磨いたよっ! 別にキ、キスとかしてほしくないしっ!」
シェイラが色気の無い変な声を出した。
暗がりでも分かるくらいに真っ赤になり、火をつけたばかりの松明を振り回す様子は見ていて楽しいが……松明消すなよ。
ちなみにこの世界では歯磨きしないヤツも多いので、彼女が特別不潔な訳でもない。たまに磨くのはましな部類だ。
毎日歯を磨く俺は身だしなみに気を使うオシャレマン枠なのである。
俺とシェイラは馬鹿みたいな話を下水道の入り口から大声で響かせる。
こうやって賑やかにすることはネズミやローチを避ける意味もある。
オオネズミやローチは人間を避けるので、こうしてこちらの位置を教えてやるのは大切なことだ。無駄な戦いはしないに限る。
俺たちの先頭は道案内を勤めるエゴイ。何と盾に松明ホルダーがついており、盾と斧を構えながら進む。地人のこうしたアイデア装備には驚かされるばかりだ。
真ん中は俺、敵が出れば前に出るタンク兼アタッカーだ。
今回の探索では戦闘を一手に担う形になるだろう。
そして最後尾はシェイラ。
松明を手に持ち、大量の塩が入った背嚢を背負う。そして小分けにした塩の袋を腰からぶら下げている。
スライムは塩をかけると浸透圧だかの関係で縮む。詳しくは分からんが効果的な駆除方法だ。
塩が苦手なモンスターはわりといるので、食用にならないような砂混じりの塩にも一定の需要があり流通している。
彼女は俺が無力化したスライムに塩を掛ける役だ。妖怪塩かけ森人(エルフ)。ちなみに塩は経費としてエゴイに認めさせた。
この隊列は賑やかに通路を進む。
すると、ほどなくしてエゴイが何かを見つけたようだ。
「ほれっ、いたぞい」
エゴイがブチュリと鼻水のようなモンスターを踏み潰し、シェイラが塩をパッパッと振り掛けた。
あわれなスライムはみるみるうちに萎んでいく。
スライムは核が無ければこの程度の存在である。
「この通路に居るのは浄化槽より溢れ出たヤツじゃ。遠慮なく片付けてくれ」
スライムが出たことで隊列を入れ替え、俺が前に出る。
視界の端ではオオネズミの死骸を取り込んでいたスライムが確認できた。
ネズミの死骸は気の弱い人なら直視できない感じに溶けている。
……ネズミを仕留めるとは核つきだな。
俺が油断せずにジリジリと近づくとスライムはネズミから離れ、バスケットボールくらいのサイズにまとまり飛び掛かってきた。
成人男性の胸の辺りまで跳ねるなど粘菌にあるまじき動きだ。
俺はスライムの動きに合わせてバットのフルスイングのように剣を叩きつけ両断し、むき出しになった核を勢い良く踏み砕いた。
するとスライムは弾力を無くし、べちゃりと鼻水のように広がる。
理屈は分からないが、核を持つスライムは周囲の組織を筋肉のように使い、ダイナミックに動く。両断した手応えも固くなりコンニャクゼリーみたいな感触だ。
核は軟骨みたいな白っぽい色合いで、先ほどのスライムだとピンポン玉くらいの歪な球体をしている。
成長すると核は前後に伸びていき、最終的には肋骨のように左右にも張り出してくるそうだが、さすがに下水道にそこまでの大物はいないと信じたい。
核スライムのダイナミックな動きにも驚かされるが、スライムの恐ろしさはそこではない。
スライムは人間を恐れない上に半透明で視認しづらく不意打ちにも注意しなければならない。気の抜けないモンスターだ。
どこかのゲームのようにザコではない。
俺の動きを見たエゴイが「ほほう、やるのう」と目を細めた。
どう言うわけかこの地人は俺に好意的だ。
初めはやり手の無い依頼を引き受けたからだと思っていたのだが、それにしてはシェイラへの態度が説明できない。
彼は森人が気に入らないのか、終始シェイラを『いないもの』として扱っている……無視しているのだ。
俺が依頼を受注したことに感謝しているのならシェイラに冷たくするのはおかしい。
まあ、種族的なことがあるので仕方ない面もあるとは思うのだが、俺とシェイラに対する態度の違いはそれだけでは無い気がするのだ。
だが、それが何かは分からず、何とも言えない違和感として残っている。
……まあ、考えても仕方ないか。
俺は水の中に核無しのスライムを見つけて蹴飛ばした。バシャリと水しぶきが立ちスライムが潰れる。
そこにシェイラがすかさず塩を掛けた。ナイスな連携だ。
「良し、狭い通路なら問題ないな。どんどん進んでいこう」
俺は2人に声をかけ、先に進む。
別に急ぐわけではないが微妙な人間関係の中、いつまでも下水道に閉じ籠ってスライム退治をするのは気が滅入る。さっさと終わらせたい。
――――――
数十分後、広い部屋に出た。
200坪くらいの広さがある空間、左の壁沿いが通路になっているのみで部屋の大半は膝くらいまでの浅い水槽だ。これが浄水槽なのだろう。
浄水槽を覗き込むと、びっしりとスライムが入っており、うぞうぞと蠢いている。
その様子に俺は生理的な嫌悪感を覚え、思わず仰け反った。気色悪すぎる。
「来るよっ! エステバン!!」
シェイラが叫ぶと同時に水中から何匹か核つきのスライムが跳ね上がった。
中には俺の腰くらいまである大物も混じっているようだ。
「数が多いぞっ! 囲まれる前に通路まで下がれ!」
俺は指示を出しながら飛び掛かってきたスライムを拳で叩き落とした。核スライムは硬いので殴ることができる。
スライムに取り込まれると徐々に溶かされるが、この程度の接触ならば特に問題はない。
俺は剣を振るって次のスライムを切り飛ばしたが、核は破壊できなかったようだ。スライムには恐怖心や痛覚は無いらしく、中途半端にダメージを与えても怯んだ様子は見せず次々に飛び掛かってくる。
2匹、3匹と切り払ったが核を破壊できたかは確認できない――暇が無いのだ。
「シェイラ、塩を撒け! ぶわっと盛大にな!」
俺の指示でシェイラが部屋の出口付近にバアッと塩を撒く。
これで少しはスライムの追撃を遅らせることができるはずだ。
再度、シェイラは塩を撒き、俺とエゴイは塩の結界に守られて退却した。
「なるほど、これは『掃除』が必要なわけだ」
俺はぼやきながら来た道を引き返す。
何も1回目のアタックで全てを片付ける必要はない。
偵察し、準備を整えて再アタックすれば良いのだ。
俺たちは一旦、外に出て体勢を整えることにした。
幸いに、距離をとればスライムは追ってこない。
「やれやれ、少なければ浄化に支障が出るし、多ければ手がつけられん。スライムの調整を間違えたようじゃ」
どこかのんびりとした様子でエゴイが嘆息した。
お前のせいやんけ。
■■■■■■
下水道
その名の通り、下水道。
雨水や生活排水・産業排水など、都市から出る下水を離れた場所に排出する施設。
アイマール王国ではあまり普及していないが、技術力のある地人の都市では下水道は古くから用いられている。
元々は下水を都市から離れた場所に垂れ流しにしていたようだが、その下水が周囲の環境を破壊し、特定のモンスターが爆発的に増える災害が多発した。そのため、スライムを利用した浄水槽などの研究が進められている。
ちなみにスライムを用いる浄化システムは地人都市でも最先端の技術であり、スライムの数の調整などは各都市の技術者の頭を悩ませているようだ。
今回の件も決してエゴイがヘボくてスライムが増えたわけでもなく、ダマスの町の下水道のデータは他の都市にフィードバックされるはずである。
実験場にされていることをダマスの領主が知ったら怒るかも知れないので、エゴイは自力で解決しようと頑張っているようだ。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。
SHO
ファンタジー
相棒はあの名機!
航空自衛隊のベテランパイロット、三戸花乃介。
長年日本の空を守ってきた愛機も、老朽化には勝てずに退役が決まる。そして病に侵されていた彼もまた、パイロットを引退する事を決意していた。
最後のスクランブル発進から帰還した彼は、程なくして病で死んでしまうが、そんな彼を待ち受けていたのは並行世界を救えという神様からの指令。
並行世界が滅べばこの世界も滅ぶ。世界を人質に取られた彼は世界を救済する戦いに身を投じる事になる。これはチートな相棒を従えて、並行世界で無双する元自衛官の物語。
全ては、やがて輪廻の輪から解き放たれる、妻子の生きる場所を救うために。
*これは以前公開していた作品を一時凍結、改稿、改題を経て新規に投稿し直した作品です。
ノベルアッププラス、小説家になろう。にて重複投稿。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる