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二人の出会いから現在まで
やらかすフォンティール
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【すみません!お話が一話前後してしまっていたようです!申し訳ない‥こちらが新しいところの二話目になります。繋がり変でしたよね~すみません‥】
そう言うとローフェルンはもう一度はあああと深いため息をついた。そしてフォンティールをキッと睨んだ。
「旦那様、絶対に既成事実先行はいけませんよ。あの青年は曇りなく働いて生家に恩返しがしたい、ということで当家を選んで参ったのです。旦那様と結婚するためではございません」
「だからこれからそう言えばいいだろう」
何だこいつ全然人の話も聞かねえし理解しようともしやがらねえな。と、ローフェルンの顔に書いてあるような気がしたが、フォンティールは知らぬふりをした。ローフェルンは地獄の底から湧き上がるような低い声で続けた。
「‥‥旦那さま。これからローフェルンの申し上げる事をお守りいただけないのでしたら、ダンゼル子息を全力をもって隠します。よろしいですか?」
「‥とりあえず聞こうか」
「子息が働くのを邪魔しないこと。旦那様から結婚の話をしないこと。子息の方から旦那様に何か働きかけがあった時にのみ、恋愛の話をすること。既成事実はもってのほかです。合意!合意が必要なんですよそういうことには!カイザがいいと言ったらですからね!」
「‥‥ふうん」
フォンティールは思った。今すぐにでもあの青年にキスから始めてどろどろに溶かして自分の情欲をぶち込んで監禁して犯し尽くしたいが。確かにセレステと結婚するときは大変で、結果結構時間もかかった気がする。
あの時に比べれば、今回は我が家で働くのだし毎日顔を合わせるからそのうち隙を見て犯してやろう。
‥‥はっきり言って異常思考である。だが悪いことにこの異常思考の持ち主は、その事に無自覚な上顔がとんでもなくよくて頭脳も明晰で商売の勘もあって政治的な手腕もあるのだ。異常なのは性癖というか恋愛関係においてのみである。
全く信用がならない、という顔をしてこちらを睨んでくる老執事に向かい、フォンティールはにっこり笑って「わかったよ」と返事をした。
そして働き出して三か月後、カイザはようやくフォンティールの手に落ちてきた。やはりカイザはとんでもなくかわいくて愛しくて、フォンティールの身体にぴたりと合った。これはこの先ずっとともに生きていく半身で間違いない。カイザを目の前にして三か月も待った自分の忍耐を褒めてほしいとさえフォンティールは思っていた。
だが、その後がいけなかった。せっかくカイザを囲い込んで可愛がっていたのに、ぶしつけなローフェルンが邪魔をするし(「三日も抱き潰す人がどこにいますか!」とか言っていたがまだたったの三日しか経ってない)、カイザにはその後全然会わせてくれない。侍女に聞けばどうやら少し衰弱して寝込んでいるとのことだったので、それなら見舞おうかというと、古参の侍女が珍しく怒りを滲ませた顔でこちらを見てきた。
「お言葉ながら、旦那様のお見舞いはお見舞いにならないと存じますので、どうかお控えください」
そう言ってさっさとその場から去ってしまった。
何だか屋敷中の使用人から冷たい目で見られている気がする。なぜだ。自分では結構いい雇用主だと自負しているのに。
ローフェルンにそう零すと、またこの老執事は深いため息をついた。
「あのですね、皆カイザを働く仲間として認めているんですよ。事前に旦那様のお気持ちがカイザにあることは通達しておりますが、カイザ自身は全く何も知らないことも皆存じておりますからね。‥急に三日も抱き潰すなんて、カイザがかわいそうです。みなそう思っているんです」
「‥なんでかわいそうなんだ、私はこんなにカイザを愛しているのに」
「それがわからない旦那様が相手だってことがかわいそうなんです!」
フォンティールの言葉にかぶせるようにローフェルンは言った。
結局そのあと十日も経ってからようやくカイザに会うことが許された。自分はこの屋敷の主人なのに、使用人に会うのもままならないとはおかしくないか?と思いながらじりじりとフォンティールは待っていた。
執務室にやってきたカイザは、相変わらず愛らしくかわいかった。思わず抱きしめようと近づいたら、さっと避けられる。
「‥旦那様、申し訳ありませんがそちらにおかけください」
固い声でカイザは言った。その後ろにはローフェルンと家令が控えている。カイザを抱きしめてすぐにでもキスしたいのをこらえながら、仕方なくフォンティールは長椅子に腰かけた。カイザは対面に座って話し始めた。
「‥‥私は、旦那様の事は好きです。‥多分、愛していると言ってもいいと思います」
「カイザ!!」
喜びのあまり立ち上がったフォンティールに、カイザは座るよう目顔で促してきた。仕方なく再び腰を下ろす。
「でも、結婚はしません。できません」
「どうして」
「前も言いましたけど、お子様方がまだお小さいです。そんな多感な年頃のお子様がいらっしゃるのに結婚はできません。‥せめて、アレスティード様が結婚なさるまでは無理です」
「そんなのいつになるかわからないじゃないか!」
フォンティールは叫んだ。この十日間だって相当長く、辛く感じた。毎日だってカイザをこの腕に抱きしめていたいのに。
「‥‥その時間が我慢できないなら、旦那様は私を愛しているわけではないと思います。ご自分の欲求を満たしたいだけです」
カイザは冷たくそう言い放つ。フォンティールは胸が抉られるような気がした。そんなことを言われるとは思っていなかった。
「それから」
まだあるらしい。フォンティールはそれでもカイザの顔を見つめながらその言葉を待った。
「私はここに、働きに来ました。それを優先してください。働いている途中に今回みたいなことになるのは嫌なんです」
カイザの働きぶりは陰日向なく、まじめで使用人たちにも可愛がられていることは聞いている。以前に聞いたような事情もあるし、まじめに働きたい気持ちはあるのだろう。それは理解できる。理解できるが、しかしフォンティールも譲れない部分はある。八年、八年も人生を乾いたまま空虚に送ってきたのだ。そのまま何も知らずにいれば残りの人生を過ごせたかもしれないが、自らの半身、最愛が身近にいる環境でその愛情を隠せ、構うなと言われるのは死ねと言われているのと同じだった。
フォンティールは言葉を尽くしてそう言った。だが、カイザはなかなか首を縦に振らない。フォンティールは自分の中にどす黒い感情がむくむくと湧き上がってくるのを感じた。
‥何をうるさいことを言っているんだろう。そんなにうるさく言うならここから引っ攫って、どこか遠い国へでも連れて行って毎日毎日犯し尽くしてやろうか。おれの気持ちを、愛情を身に沁みてわかるようになるまでその身体に叩きこんでやる。公爵家も家族も知ったことか。目の前の半身を手に入れられないのなら、何も意味なんかない。
そう思ってゆらりと立ち上がった時、後ろからローフェルンが駆け寄ってきた。この執事はだてに小さい頃からフォンティールを見てきていない。人の道を外れて何かをしそうだ、という雰囲気がフォンティールから洩れているのをいち早く察知したのだ。
そう言うとローフェルンはもう一度はあああと深いため息をついた。そしてフォンティールをキッと睨んだ。
「旦那様、絶対に既成事実先行はいけませんよ。あの青年は曇りなく働いて生家に恩返しがしたい、ということで当家を選んで参ったのです。旦那様と結婚するためではございません」
「だからこれからそう言えばいいだろう」
何だこいつ全然人の話も聞かねえし理解しようともしやがらねえな。と、ローフェルンの顔に書いてあるような気がしたが、フォンティールは知らぬふりをした。ローフェルンは地獄の底から湧き上がるような低い声で続けた。
「‥‥旦那さま。これからローフェルンの申し上げる事をお守りいただけないのでしたら、ダンゼル子息を全力をもって隠します。よろしいですか?」
「‥とりあえず聞こうか」
「子息が働くのを邪魔しないこと。旦那様から結婚の話をしないこと。子息の方から旦那様に何か働きかけがあった時にのみ、恋愛の話をすること。既成事実はもってのほかです。合意!合意が必要なんですよそういうことには!カイザがいいと言ったらですからね!」
「‥‥ふうん」
フォンティールは思った。今すぐにでもあの青年にキスから始めてどろどろに溶かして自分の情欲をぶち込んで監禁して犯し尽くしたいが。確かにセレステと結婚するときは大変で、結果結構時間もかかった気がする。
あの時に比べれば、今回は我が家で働くのだし毎日顔を合わせるからそのうち隙を見て犯してやろう。
‥‥はっきり言って異常思考である。だが悪いことにこの異常思考の持ち主は、その事に無自覚な上顔がとんでもなくよくて頭脳も明晰で商売の勘もあって政治的な手腕もあるのだ。異常なのは性癖というか恋愛関係においてのみである。
全く信用がならない、という顔をしてこちらを睨んでくる老執事に向かい、フォンティールはにっこり笑って「わかったよ」と返事をした。
そして働き出して三か月後、カイザはようやくフォンティールの手に落ちてきた。やはりカイザはとんでもなくかわいくて愛しくて、フォンティールの身体にぴたりと合った。これはこの先ずっとともに生きていく半身で間違いない。カイザを目の前にして三か月も待った自分の忍耐を褒めてほしいとさえフォンティールは思っていた。
だが、その後がいけなかった。せっかくカイザを囲い込んで可愛がっていたのに、ぶしつけなローフェルンが邪魔をするし(「三日も抱き潰す人がどこにいますか!」とか言っていたがまだたったの三日しか経ってない)、カイザにはその後全然会わせてくれない。侍女に聞けばどうやら少し衰弱して寝込んでいるとのことだったので、それなら見舞おうかというと、古参の侍女が珍しく怒りを滲ませた顔でこちらを見てきた。
「お言葉ながら、旦那様のお見舞いはお見舞いにならないと存じますので、どうかお控えください」
そう言ってさっさとその場から去ってしまった。
何だか屋敷中の使用人から冷たい目で見られている気がする。なぜだ。自分では結構いい雇用主だと自負しているのに。
ローフェルンにそう零すと、またこの老執事は深いため息をついた。
「あのですね、皆カイザを働く仲間として認めているんですよ。事前に旦那様のお気持ちがカイザにあることは通達しておりますが、カイザ自身は全く何も知らないことも皆存じておりますからね。‥急に三日も抱き潰すなんて、カイザがかわいそうです。みなそう思っているんです」
「‥なんでかわいそうなんだ、私はこんなにカイザを愛しているのに」
「それがわからない旦那様が相手だってことがかわいそうなんです!」
フォンティールの言葉にかぶせるようにローフェルンは言った。
結局そのあと十日も経ってからようやくカイザに会うことが許された。自分はこの屋敷の主人なのに、使用人に会うのもままならないとはおかしくないか?と思いながらじりじりとフォンティールは待っていた。
執務室にやってきたカイザは、相変わらず愛らしくかわいかった。思わず抱きしめようと近づいたら、さっと避けられる。
「‥旦那様、申し訳ありませんがそちらにおかけください」
固い声でカイザは言った。その後ろにはローフェルンと家令が控えている。カイザを抱きしめてすぐにでもキスしたいのをこらえながら、仕方なくフォンティールは長椅子に腰かけた。カイザは対面に座って話し始めた。
「‥‥私は、旦那様の事は好きです。‥多分、愛していると言ってもいいと思います」
「カイザ!!」
喜びのあまり立ち上がったフォンティールに、カイザは座るよう目顔で促してきた。仕方なく再び腰を下ろす。
「でも、結婚はしません。できません」
「どうして」
「前も言いましたけど、お子様方がまだお小さいです。そんな多感な年頃のお子様がいらっしゃるのに結婚はできません。‥せめて、アレスティード様が結婚なさるまでは無理です」
「そんなのいつになるかわからないじゃないか!」
フォンティールは叫んだ。この十日間だって相当長く、辛く感じた。毎日だってカイザをこの腕に抱きしめていたいのに。
「‥‥その時間が我慢できないなら、旦那様は私を愛しているわけではないと思います。ご自分の欲求を満たしたいだけです」
カイザは冷たくそう言い放つ。フォンティールは胸が抉られるような気がした。そんなことを言われるとは思っていなかった。
「それから」
まだあるらしい。フォンティールはそれでもカイザの顔を見つめながらその言葉を待った。
「私はここに、働きに来ました。それを優先してください。働いている途中に今回みたいなことになるのは嫌なんです」
カイザの働きぶりは陰日向なく、まじめで使用人たちにも可愛がられていることは聞いている。以前に聞いたような事情もあるし、まじめに働きたい気持ちはあるのだろう。それは理解できる。理解できるが、しかしフォンティールも譲れない部分はある。八年、八年も人生を乾いたまま空虚に送ってきたのだ。そのまま何も知らずにいれば残りの人生を過ごせたかもしれないが、自らの半身、最愛が身近にいる環境でその愛情を隠せ、構うなと言われるのは死ねと言われているのと同じだった。
フォンティールは言葉を尽くしてそう言った。だが、カイザはなかなか首を縦に振らない。フォンティールは自分の中にどす黒い感情がむくむくと湧き上がってくるのを感じた。
‥何をうるさいことを言っているんだろう。そんなにうるさく言うならここから引っ攫って、どこか遠い国へでも連れて行って毎日毎日犯し尽くしてやろうか。おれの気持ちを、愛情を身に沁みてわかるようになるまでその身体に叩きこんでやる。公爵家も家族も知ったことか。目の前の半身を手に入れられないのなら、何も意味なんかない。
そう思ってゆらりと立ち上がった時、後ろからローフェルンが駆け寄ってきた。この執事はだてに小さい頃からフォンティールを見てきていない。人の道を外れて何かをしそうだ、という雰囲気がフォンティールから洩れているのをいち早く察知したのだ。
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