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浮かれていた

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 チェックアウトの時間より少し延長して、ゆっくりと寝てから、ハナと弦人はまた市原の運転する車で帰っていった。



 昼過ぎにマンションに着き、弦人に優しくキスをされてから車を降りた。



 こんなに幸せなのは初めてだ。

 ハナは正直、浮かれていた。



「今お帰りですかぁ~」

 部屋に入ろうとしたとき、隣の部屋からカンナが顔を出してニヤニヤと笑っていた。

「あ、カンナさん。なんか昨日は途中で抜けちゃったみたいでごめんね」

「あーあー、そんな事はいいのいいの。それより、どう?いっぱいやってきた?」

「やってきた?」

「昨日、社長が抱いてくれないって駄々こねてたじゃん」

「!!や、やっぱり本当に私そんな事言ったの!?」

 ハナは真っ赤になった。

「やだもうー忘れてー」

「無理だよ。あの場にいた皆聞いてたもん。今日仕事行けば、キャスト全員に広まってるよ」

「最悪。もう絶対お酒飲まない」

 ハナは頭を抱えた。

「まぁまぁ、仕事の時間までこっちでゆっくり話聞かせてもらおうじゃない」

 そう言って、カンナはハナを部屋へ引きずり込んだ。



「てか、ハナの、金パクって逃げてる恋人どうした?この浮気者」

「うん。もういいの」

 ハナはスッキリした顔で答えた。

「もう関わらないようにする。まあ行方不明だから関わりよう無いけど」

「ふーん。まあ私も初めからハナの彼氏やべえ奴だと思ってたから、スッパリ切っちゃうのは賛成だわ」

 そう言って、カンナはハナの顔をまじまじと見た。

「だって、ハナ今明るい顔してるもんね。始めて会った時とか死にそうな顔をしてたもん」

「そんなに?」

 ハナは自分の顔を触った。そんなに変わっただろうか。


「で?どこ行ってきたの?もしかして高級ホテルとかで抱かれてきた?」

 カンナなニヤニヤと言うので、ハナは少し恥ずかしそうに答えた。

「いや、そんなんじゃなくて。

 まずは山奥に行って」

「山奥?」

「そこで枝垂れ桜を見て」

「桜?冬に?」

「て、ラブホ行った」

「結局普通にラブホかよ!」

 カンナは突っ込んだ。

「大体なんだ山奥で冬に桜って!いやまあハナが楽しいならいんだけどさ」

「楽しかった。きれいだったよ」

「くっそー、惚気けた顔しやがって」

 カンナはハナの頬を軽くつねった。

「痛いよー」

「でも良かったよ。まあ、社長もヤクザだから超優良物件ってわけでもないけどさ。優しいもんね」

 カンナはそう笑ってみせた。

「ま、じゃあそろそろ仕事行く準備しよっか。あ、そうだ聞いてる?今日ちょっと多めの団体客入るからヘルプ来るって」

「そうなんだ」

「ハナが知ってる子だと、セイラとか来るよ」

「セイラさん?」

 ハナはドキリとした。

 別に悪い事をしている訳では無いが、どう考えても気まずい。

「忙しそうだよねー。ハナも厨房大変なんじゃない?」

 ハナの心内を知らず、のんきにカンナは言った。


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