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パンダさんの絵
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そして数時間後、ハナはベッドの布団に包まって不機嫌そうにしていた。
「変態ヤクザ」
「誰が変態なの?」
隣で上機嫌に寝転んでいた弦人が、ハナの頭を撫でながらたずねた。やっぱりハナはまだ裸なのに、弦人はもうシャツとズボンを着ている。
前回と全く同じ構図に、ハナは憤りを隠さない。
「……目隠しして、更に途中から手まで縛るなんて……変態!!」
「だってハナちゃん目隠し取ろうとするから仕方ないでしょ」
飄々とした顔で弦人が言うので、ハナは口を尖らせた。
「うう、……何でこんな変態プレイを……」
「目隠し両手拘束くらいで変態プレイだなんて、ハナちゃんは可愛いね」
「弦人さんみたいにプロじゃないんです!」
「俺だってプロじゃないよ」
「でも手慣れてた!」
「いや、そりゃヤクザだから縛るのは手慣れてるけどさ」
物騒な事を言って弦人は、ハナの身体を引き寄せた。
「ごめんねハナちゃん。怖かった?」
「ちょっと怖かった」
ハナは口を尖らせた。
「だって、私がぎゅって出来ない。それに目隠しされたら誰に抱かれてるかわからなくなる」
「そっか。それは困るな」
弦人はハナをぎゅっと抱きしめた。
「こうやって抱いてるのは俺だってハナちゃんに刻みつけてやらないとだめなのに。次は別の方法を」
「見せて」
ハナは弦人の言葉を遮って言った。
「身体見せて下さい」
「ハナちゃん?」
「入れ墨を見せないようにしてるんでしょ。私が怖がると思ってですか?」
ハナの言葉に、弦人は困ったような顔をした。
「怖がると思って、っていうか。俺が怖いんだよ。入れ墨を見たハナちゃんが冷静にヤクザと付き合うことについて考えちゃって、そして我に返って俺から離れてしまうんじゃないかって」
「我に返って?」
思いがけない事を言われてハナは戸惑った。
「俺、怖がりだからさ」
弦人は情けなさそうな顔だった。
「ほらほら、ゆっくりお風呂でも入って少し寝よう。俺の入れ墨の事は今度ゆっくり考えてさ」
空気を変えるように弦人はそう言って、ベッドから立ち上がった。
ハナは自分もベッドから立ち上がり、弦人の背中に抱きついた。
「ハナちゃん!?」
「一緒に入りましょう。お風呂」
「えっ?」
「弦人さんの背中、私流します」
「あのねハナちゃん、だからそれは」
「私が入れ墨を見てどう思うかは私にも分かりません!」
ハナはキッパリと言った。弦人は目をぱちくりさせてハナを見つめた。
「引くかもしれない。引かないかもしれない。でも、先延ばしにしたってしょうがないじゃないですか。それに、個人的には我に返るなら早めに我に返りたいし」
「ハナちゃん、意外に身勝手だね」
弦人はなぜか嬉しそうに言った。
「でもね、俺も身勝手なんだよ。ハナちゃんが我に返って逃げ出しても、逃してなんかあげないよ。それでもいい?」
「望むところです」
ハナがそう力強く言うと、弦人はハナを抱きしめて勢いよくキスをした。
そのまま脱衣所に連れて行って、シャツとズボンを脱いだ。
「どうかな?」
弦人は恥ずかしそうにハナにたずねた。
ハナは声が出なかった。
胸から背中、腰、腕や太腿までびっしりと、思った以上に広範囲に渡って彫られた入れ墨は、覚悟していたはずのハナにも衝撃的だった。
そして柄は。
「鬼……?」
背中に一番大きく描かれていたのは、大きく口を開けて威嚇する鬼だった。
ハナは思わず弦人の肌に触れた。肌触りは普通の肌と同じでむしろすべすべしている。
「くすぐったいよ」
「意外……」
「意外?」
「正直、パンダさんの絵とか彫られてても驚かないと思ってたけど」
「そんな可愛いの彫ってたら組長に怒られちゃうよ」
弦人は笑ってみせた。
「変態ヤクザ」
「誰が変態なの?」
隣で上機嫌に寝転んでいた弦人が、ハナの頭を撫でながらたずねた。やっぱりハナはまだ裸なのに、弦人はもうシャツとズボンを着ている。
前回と全く同じ構図に、ハナは憤りを隠さない。
「……目隠しして、更に途中から手まで縛るなんて……変態!!」
「だってハナちゃん目隠し取ろうとするから仕方ないでしょ」
飄々とした顔で弦人が言うので、ハナは口を尖らせた。
「うう、……何でこんな変態プレイを……」
「目隠し両手拘束くらいで変態プレイだなんて、ハナちゃんは可愛いね」
「弦人さんみたいにプロじゃないんです!」
「俺だってプロじゃないよ」
「でも手慣れてた!」
「いや、そりゃヤクザだから縛るのは手慣れてるけどさ」
物騒な事を言って弦人は、ハナの身体を引き寄せた。
「ごめんねハナちゃん。怖かった?」
「ちょっと怖かった」
ハナは口を尖らせた。
「だって、私がぎゅって出来ない。それに目隠しされたら誰に抱かれてるかわからなくなる」
「そっか。それは困るな」
弦人はハナをぎゅっと抱きしめた。
「こうやって抱いてるのは俺だってハナちゃんに刻みつけてやらないとだめなのに。次は別の方法を」
「見せて」
ハナは弦人の言葉を遮って言った。
「身体見せて下さい」
「ハナちゃん?」
「入れ墨を見せないようにしてるんでしょ。私が怖がると思ってですか?」
ハナの言葉に、弦人は困ったような顔をした。
「怖がると思って、っていうか。俺が怖いんだよ。入れ墨を見たハナちゃんが冷静にヤクザと付き合うことについて考えちゃって、そして我に返って俺から離れてしまうんじゃないかって」
「我に返って?」
思いがけない事を言われてハナは戸惑った。
「俺、怖がりだからさ」
弦人は情けなさそうな顔だった。
「ほらほら、ゆっくりお風呂でも入って少し寝よう。俺の入れ墨の事は今度ゆっくり考えてさ」
空気を変えるように弦人はそう言って、ベッドから立ち上がった。
ハナは自分もベッドから立ち上がり、弦人の背中に抱きついた。
「ハナちゃん!?」
「一緒に入りましょう。お風呂」
「えっ?」
「弦人さんの背中、私流します」
「あのねハナちゃん、だからそれは」
「私が入れ墨を見てどう思うかは私にも分かりません!」
ハナはキッパリと言った。弦人は目をぱちくりさせてハナを見つめた。
「引くかもしれない。引かないかもしれない。でも、先延ばしにしたってしょうがないじゃないですか。それに、個人的には我に返るなら早めに我に返りたいし」
「ハナちゃん、意外に身勝手だね」
弦人はなぜか嬉しそうに言った。
「でもね、俺も身勝手なんだよ。ハナちゃんが我に返って逃げ出しても、逃してなんかあげないよ。それでもいい?」
「望むところです」
ハナがそう力強く言うと、弦人はハナを抱きしめて勢いよくキスをした。
そのまま脱衣所に連れて行って、シャツとズボンを脱いだ。
「どうかな?」
弦人は恥ずかしそうにハナにたずねた。
ハナは声が出なかった。
胸から背中、腰、腕や太腿までびっしりと、思った以上に広範囲に渡って彫られた入れ墨は、覚悟していたはずのハナにも衝撃的だった。
そして柄は。
「鬼……?」
背中に一番大きく描かれていたのは、大きく口を開けて威嚇する鬼だった。
ハナは思わず弦人の肌に触れた。肌触りは普通の肌と同じでむしろすべすべしている。
「くすぐったいよ」
「意外……」
「意外?」
「正直、パンダさんの絵とか彫られてても驚かないと思ってたけど」
「そんな可愛いの彫ってたら組長に怒られちゃうよ」
弦人は笑ってみせた。
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