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第四章
時には着飾って3
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「何だか楽しそうね」
ビューラはルフォンに色々なドレスを運んでいく店員を横目にラストにドレスを着せていた。
たくさんのドレスに囲まれているルフォンに対してラストの周りにあるドレスの数は多くない。
ラストの好みは知っているのでそれに合わせた数着しかビューラはドレスを持ってきていないのだ。
それなのにビューラが見せてくれるドレスは本当にラストの好みはドンピシャであった。
もう1人の店員に補助してもらいながらラストもドレスを試着していく。
「服選ぶって楽しいもんね。ルフォンも色々着てテンション上がってるのかな」
「あっちもそうだけどあなたのことよ」
なんだかラストの顔が明るい。
ドレスに合わせて髪型をいじりながらビューラはそう思った。
小さい頃は明るかったラストは段々と感情を表に出さなくなって、ビューラが最後にあった時には昔とは違う貼り付けたような笑顔をしていた。
今は昔のような柔らかで自然な笑顔を浮かべている。
また友人が出来ていたことにも驚いた。
さらに何よりも男性を側に置いていることには衝撃を受けた。
男性嫌いとまではいかないけれど陰湿な兄たちのせいでラストはやや男性が苦手だった。
表にそれを出したことはないけれど誰かと一緒にいることを避けていたはずなのにリュードの前ではラストも自然体であった。
ラストも変わったのだなと感じる。
「そ、そう?」
自分でも顔がニヤけてしまっていることはラストも分かっている。
ルフォンのことは友達だと思ってる。
こんな風に友達と服を買いに来ることができたのは嬉しかった。
小さい頃から店を手伝っていてよく人を見ているビューラまでそう言うなら隠しきれないぐらいに顔に出てしまっているのだなとラストは少し顔を赤らめた。
「あのドレスを選んでるお友達もそうだけど、私の見立てではきっとあっちの男の子の方がラストを笑顔にしてるのかな?」
「な、なん、なんでさ!」
「ほぉ~?」
軽い冗談のつもりだった。
リュードの顔なんてちょっと見ただけなのでラストがまた笑える理由がリュードにあるなんてビューラには確信はなかった。
あるかもしれないぐらいの感覚での発言だった。
たまたま赤いドレスを着ていたラストはドレス同じぐらいに顔を真っ赤にした。
「んー、もうちょっと背中が空いてるドレスとかにする?」
「しない!」
「この可愛い翼を見せつければ彼もイチコロじゃない?」
ビューラも血人族なので翼に対してフェチ的なところがある。
男ならラストの翼は非常にキュートで惹かれてしまうとビューラ自身も思っていた。
「うっさい!」
ただしリュードは血人族ではない。
翼を見せつけたところでそれを好きになってくれるかは血人族よりも確率が低いと言わざるを得ない。
それにミニ状態の翼を見せるのは恥ずかしいとラストはまた顔を赤くする。
ラストの翼についてはビューラも知っていた。
ドレスは自分1人だけで着ることが難しいものも中にはある。
そういった時には周りの誰かに補助についてもらってドレスを着るのである。
1着1着もバカにならない値段だし無理をして壊すのなんて最もやってはいけないことなのだ。
ビューラの母親の店長やこの店のベテランはラストのことを昔から知っている。
当然ドレスを着る補助についたこともある。
なのでラストの翼についてはこの店の中では知っている人も多く、また絶対に漏らしてはならない顧客の個人的な秘密でもある。
「別にそんなんじゃないし……」
拗ねたように口を尖らせる。
確かにリュードは見た目は良かったけど地位があるように見えなかった。
ラストは王族なので相手にも身分が求められる。
今でも大領主であるラストは身分的には高くてとてもリュードとは釣り合わない身分差のある恋。
だけど上等じゃないかなんてビューラは一人でニヤッと笑う。
「私があんたをお姫様にしたげる!」
「いきなりなに?」
身分だけでみるとラストは一応正真正銘のお姫様と言っても良い。
「お姉さんに任せなさい!」
身分差があっても乗り越えればいい。
ラストが望むなら身分の差なんてあってないようなものである。
そしてあちらにその気がないならその気にさせればいい。
とりあえずライバルはドレスが増えてきたからと隣の部屋に連れて行かれたルフォンであるとビューラは勝手に気合を入れ始めた。
ルフォンの容姿レベルも相当高かった。
可愛らしく肌もとても綺麗。
店員たちのテンションの上がり具合を見ると、体つきも良くドレスも見栄えが良くて何でも似合うことが見なくても分かる。
原石を磨くことが大好きな他の店員たちの気合も入っている。
きっと完成したらものすごいものが出てくるに違いない。
ラストはそれに負けないように、いや、勝つようにしなきゃならない。
ビューラが胸の内に秘めた戦いが勝手に始まったのであった。
ーーーーー
「腹が水分でチャポチャポになるな」
メインは女性もののドレスを置いているお店であるのだがちゃんと男性のものもお店には置いてあった。
待っているとリュードも声をかけられて採寸なんかを行なって礼服を決めたのだけど、頑張って時間を引き伸ばしても伸ばせる時間なんて高が知れている。
再び店の隅に戻って紅茶をすすることになる。
こんなに時の進みが遅く感じられるのはこの人生で初めてだった。
どこか行きたいところだけど離れたところに連絡を取れる手段もないので近くのお店なりで時間を潰すこともできない。
ビューラはルフォンに色々なドレスを運んでいく店員を横目にラストにドレスを着せていた。
たくさんのドレスに囲まれているルフォンに対してラストの周りにあるドレスの数は多くない。
ラストの好みは知っているのでそれに合わせた数着しかビューラはドレスを持ってきていないのだ。
それなのにビューラが見せてくれるドレスは本当にラストの好みはドンピシャであった。
もう1人の店員に補助してもらいながらラストもドレスを試着していく。
「服選ぶって楽しいもんね。ルフォンも色々着てテンション上がってるのかな」
「あっちもそうだけどあなたのことよ」
なんだかラストの顔が明るい。
ドレスに合わせて髪型をいじりながらビューラはそう思った。
小さい頃は明るかったラストは段々と感情を表に出さなくなって、ビューラが最後にあった時には昔とは違う貼り付けたような笑顔をしていた。
今は昔のような柔らかで自然な笑顔を浮かべている。
また友人が出来ていたことにも驚いた。
さらに何よりも男性を側に置いていることには衝撃を受けた。
男性嫌いとまではいかないけれど陰湿な兄たちのせいでラストはやや男性が苦手だった。
表にそれを出したことはないけれど誰かと一緒にいることを避けていたはずなのにリュードの前ではラストも自然体であった。
ラストも変わったのだなと感じる。
「そ、そう?」
自分でも顔がニヤけてしまっていることはラストも分かっている。
ルフォンのことは友達だと思ってる。
こんな風に友達と服を買いに来ることができたのは嬉しかった。
小さい頃から店を手伝っていてよく人を見ているビューラまでそう言うなら隠しきれないぐらいに顔に出てしまっているのだなとラストは少し顔を赤らめた。
「あのドレスを選んでるお友達もそうだけど、私の見立てではきっとあっちの男の子の方がラストを笑顔にしてるのかな?」
「な、なん、なんでさ!」
「ほぉ~?」
軽い冗談のつもりだった。
リュードの顔なんてちょっと見ただけなのでラストがまた笑える理由がリュードにあるなんてビューラには確信はなかった。
あるかもしれないぐらいの感覚での発言だった。
たまたま赤いドレスを着ていたラストはドレス同じぐらいに顔を真っ赤にした。
「んー、もうちょっと背中が空いてるドレスとかにする?」
「しない!」
「この可愛い翼を見せつければ彼もイチコロじゃない?」
ビューラも血人族なので翼に対してフェチ的なところがある。
男ならラストの翼は非常にキュートで惹かれてしまうとビューラ自身も思っていた。
「うっさい!」
ただしリュードは血人族ではない。
翼を見せつけたところでそれを好きになってくれるかは血人族よりも確率が低いと言わざるを得ない。
それにミニ状態の翼を見せるのは恥ずかしいとラストはまた顔を赤くする。
ラストの翼についてはビューラも知っていた。
ドレスは自分1人だけで着ることが難しいものも中にはある。
そういった時には周りの誰かに補助についてもらってドレスを着るのである。
1着1着もバカにならない値段だし無理をして壊すのなんて最もやってはいけないことなのだ。
ビューラの母親の店長やこの店のベテランはラストのことを昔から知っている。
当然ドレスを着る補助についたこともある。
なのでラストの翼についてはこの店の中では知っている人も多く、また絶対に漏らしてはならない顧客の個人的な秘密でもある。
「別にそんなんじゃないし……」
拗ねたように口を尖らせる。
確かにリュードは見た目は良かったけど地位があるように見えなかった。
ラストは王族なので相手にも身分が求められる。
今でも大領主であるラストは身分的には高くてとてもリュードとは釣り合わない身分差のある恋。
だけど上等じゃないかなんてビューラは一人でニヤッと笑う。
「私があんたをお姫様にしたげる!」
「いきなりなに?」
身分だけでみるとラストは一応正真正銘のお姫様と言っても良い。
「お姉さんに任せなさい!」
身分差があっても乗り越えればいい。
ラストが望むなら身分の差なんてあってないようなものである。
そしてあちらにその気がないならその気にさせればいい。
とりあえずライバルはドレスが増えてきたからと隣の部屋に連れて行かれたルフォンであるとビューラは勝手に気合を入れ始めた。
ルフォンの容姿レベルも相当高かった。
可愛らしく肌もとても綺麗。
店員たちのテンションの上がり具合を見ると、体つきも良くドレスも見栄えが良くて何でも似合うことが見なくても分かる。
原石を磨くことが大好きな他の店員たちの気合も入っている。
きっと完成したらものすごいものが出てくるに違いない。
ラストはそれに負けないように、いや、勝つようにしなきゃならない。
ビューラが胸の内に秘めた戦いが勝手に始まったのであった。
ーーーーー
「腹が水分でチャポチャポになるな」
メインは女性もののドレスを置いているお店であるのだがちゃんと男性のものもお店には置いてあった。
待っているとリュードも声をかけられて採寸なんかを行なって礼服を決めたのだけど、頑張って時間を引き伸ばしても伸ばせる時間なんて高が知れている。
再び店の隅に戻って紅茶をすすることになる。
こんなに時の進みが遅く感じられるのはこの人生で初めてだった。
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