上 下
246 / 307
第四章

決戦! 亡者の騎士デュラハン6

しおりを挟む
 前に出ているヴィッツではなくルフォンを集中的に狙った。
 弱そうな相手を優先して狙うという戦略を考えるだけの若干の知恵がある。

 ただし見た目ほどルフォンもか弱くはない。
 飛んでくる黒い魔力の矢をルフォンは回避する。

 避けられないものはナイフで叩き落として、服にすら魔法が掠ることもさせない。
 それでいながら迫り来る剣のスケルトンナイトのこともちゃんと見ている。

 突き出された剣のスケルトンナイトの剣をルフォンは体を回転させながらナイフを当てて逸らす。
 そのまま回転の勢いを利用して剣のスケルトンナイトの頭に目がけてナイフを振る。

 剣のスケルトンナイトはすぐさま体を逸らしてルフォンのナイフを回避すると後ろに飛び退いた。

「これは驚きですね」

 やはりただのスケルトンたちではなかった。
 戦い方に知性があるとヴィッツはわずかに目を細めてスケルトンナイトたちに視線を向ける。

 魔法を使うタイミングも連携も取っていて戦い方を知っている戦いをしている。

「……私のことなめてるのかな?」

 けれどスケルトンナイトが連携していることなんてどうでもよく、弱いと思われたことにルフォンはムッとしていた。
 スケルトンたちが優先してルフォンを狙った理由はそれしかない。

 リュードといるなら仕方ないけどヴィッツと一緒にいて見比べた時にサッと倒せる相手にでも見えたのだろうか。
 見た目で軽んじられるのはルフォンも許せない。

「いいよ、じゃあ少しだけ本気、見せたげる」

「これは……」

 人狼族だと聞いてはいたがヴィッツが目の前でルフォンの魔人化した姿は見たことがなかった。
 弱そうならば力を見せてやるとルフォンが魔人化して人狼の姿になる。

 真っ黒な毛に覆われた猛き姿を見てまだ弱そうなどと思えるだろうか。

「ヴィッツさんサポートお願いね」

 魔人化した姿でも声は同じく可愛らしいということに不思議さを感じずにはいられない。

「速い……!」

 ルフォンは地面を蹴るとルフォンに切りかかってきた剣のスケルトンナイトと距離を詰める。
 体ごと叩きつけるようにナイフを振り下ろすと剣のスケルトンナイトはギリギリ反応してナイフに剣を当てた。

 しかしルフォンの力が強くて剣のスケルトンナイトは押し切られて地面に転がる。
 スケルトンメイジが魔法を使ってルフォンを拘束しようと試みる。
 
 地面から黒い触手が何本もルフォンの体に伸びていく。

「させません!」

 それをヴィッツが炎をまとった剣で切り裂く。

「流石ヴィッツさん!」

 魔法を使った直後で動けないスケルトンメイジにルフォンが飛びかかる。
 ルフォンの魔力と聖水による神聖力がこもったナイフが額に当たり、そのまま頭蓋骨を2つに叩き割る。

 スケルトンメイジの体が魔力を失ってバラバラと崩れる。
 1体倒した。

 すぐさま槍のスケルトンナイトがルフォンに襲いかかる。
 分かっていたかのようにルフォンは飛び上がり、槍のスケルトンナイトの上を飛び越えながら体を反転させる。

 着地してすぐさま反撃を繰り出す。
 ナイフが鎧を切り裂くが槍のスケルトンナイトに変化はない。

 中に体が詰まっているのではないので鎧が傷付けられただけに終わったからだ。

「私に背を向けるとはいい度胸ですね」

 槍のスケルトンナイトがスケルトンメイジを助けようとしたのかは分からない。
 もしかしたらまだルフォンの方が弱そうで先に攻撃しにきたのかもしれない。

 槍のスケルトンナイトはヴィッツに背を向けてルフォンの方に向かっていった。
 当然ヴィッツがその隙を見逃すはずがない。

 後ろからヴィッツが槍のスケルトンナイトを斜めに両断する。
 炎をまとった剣は鎧ごと槍のスケルトンナイトを真っ二つに切った。

「残るは2体ですね」

「ヴィッツさんはメイジをお願い」

 ルフォンは剣のスケルトンナイトに向かう。
 立ち上がった剣のスケルトンナイトはルフォンのナイフを防ぎ、段々と後退していく。

 実力は悪くはないと思った。
 剣のスケルトンナイトは剣を操り、押されながらも何とかルフォンの猛攻に耐えている。
 
 スケルトンナイトにしては相当できる方。
 ルフォンが片手しか使っていないとしても相当なスピードなので対応できるのは純粋にすごいと思った。
 
 もしこのスケルトンナイトにゼムトやガイデンのような自我があったならもっと強かったのだろう。
 もしかしたらこのスケルトンナイトはそんな感じの強い人のスケルトンナイトだったのかもしれないとすら感じる。

 防ぐことも限界に達した時を見計らってルフォンは使っていなかった左手のナイフも使った。
 もうギリギリのところで防いでいた剣のスケルトンナイトはルフォンの左手に反応することができなくて、首を切り落とされた。

 頭蓋骨が地面を転がっていてもまだ動く気配があったが、ルフォンがナイフを投げて頭蓋骨にトドメを刺すとスケルトンナイトの体が倒れて動かなくなった。

「危ない戦いでございました」

 危なげなんてなかった。
 前衛がいなきゃスケルトンメイジなんて相手ではないので、ヴィッツはもうすでにスケルトンメイジを片付けていた。

「どちらに向かいますか?」

 どちらというのはデュラハンと戦うリュードの方か、スケルトンたちと戦うモノランの方かである。

「……モノランの方に行こう」

「分かりました」

 リュードたちなら心配ない。
 きっとデュラハンも倒してくれるはず。

 今は余裕がなさそうなモノランの方を助けてあげることにした。
 もうモノランはあまり魔力がなくてスケルトンたちにチクチクと攻撃されながら少しずつ後退している。

 そちらの方が助けが必要そう。
 ルフォンはまずモノランを助けに行くことに決めた。

 ーーーーー
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

転生幼児は夢いっぱい

meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、 ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい?? らしいというのも……前世を思い出したのは 転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。 これは秘匿された出自を知らないまま、 チートしつつ異世界を楽しむ男の話である! ☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。 誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。 ☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*) 今後ともよろしくお願い致します🍀

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...