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第二章
何が正しくて2
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「……いいんです。私にとって大切なのはトキュネスにいることじゃなくておばあちゃんといることだったんですから」
エミナが故郷に帰り、そこで冒険者として活動しようとしていた理由。
それはトキュネスが生まれ故郷であるということよりもそこに育ての親であったおばあちゃんがいたからであった。
残された唯一の身内でエミナを育ててくれた人。
まだ恩返しもできていない。
おばあちゃんの側で活躍してもう1人でも生きていけると証明して、安心させてあげたかった。
正直な話、パノンの姓があって顔を指される可能性がある限りはトキュネスで落ち着いて暮らすことなんて無理だ。
そのうちどこか別の場所に行く必要はある、エミナはそう思っていた。
とりあえず今はおばあちゃんがいる場所が自分のいる場所だから固定の場所で働く必要がない冒険者としてやっていこうと思っていたのだ。
どうしてエミナのおばあちゃんがキンミッコのところにいたのか。
それはエミナを無理矢理協力させて広告塔にするためであった。
普通に考えて結婚しろといって協力するはずがない。
そこでおばあちゃんを人質に取り、人を誘拐して結婚させようとしていたのだ。
トキュネスに未練はない。
人を結婚させて政治的交渉を優位に進めようとする国になんて未練なんてあるはずがなかった。
たまたまルフォンが救出していてくれて良かった。
「そうか」
「リュードさんたちこそ良かったんですか? あんな騒ぎになってしまって……」
「俺たちにとって一生トキュネスに近づけないこととエミナを天秤にかけた時、結果は分かりきっているさ」
「もちろんエミナちゃんの方が大事!」
トキュネスに行けないことなんてリュードとルフォンにとっては小さいことである。
むしろ今頃キンミッコはどんな顔をしているのか気になっている。
状況が把握できておらず、リュードたちの足取りも掴めていないのか追手もこない。
話に聞いているような人物だとしたら大激怒しているところだろう。
「リュードさん、ルフォンさん……」
本当に最高の二人だとエミナは泣きそうになってフードを深く被り直して顔を隠した。
すごく、すごく嬉しくて、それ以上言葉が出なかった。
「にしてもキンミッコとやら最悪の領主だな」
ルフォンが一緒に救出したおばあちゃん以外の人たちはいわゆる文官だった。
良心を持っていてキンミッコを摘発したり、キンミッコに忠言をしようとしたりした人たちだった。
交渉に当たるために一丸となって不正を隠蔽して乗り切る時に正義感を持つ文官は邪魔になった。
キンミッコは文官を捕らえてヤノチと同様に幽閉していたのである。
ヤノチと違って文官たちはそのまま放っておけば謎の失踪を遂げることになっていただろう。
文官たちにも付いてきていいのか尋ねたら、ヤノチの兄に会いに行くならカシタコウに行ってキンミッコを摘発すると答えた。
相当お怒りの文官たちは証拠も隠してあるらしく、ただの証言以上の効果を持ったカードをリュードは手に入れた。
ヤノチの兄がより交渉に有利になるなら悪くない。
出来る限り迅速に動きたいものだけどお年寄りもいて無理はできない。
移動を続けてちょうど国境を越えた時にはすでに日は落ちていた。
それでもカシタコウ側に入れて少し安心して野営の準備をして休息をとることにした。
理由は知らないが追手はこないので進行速度としては悪くない。
追手が未だに来ないのは1つではなくいくつもの忙しさが重なっているだろうなと推測する。
領内の混乱収拾に花嫁の誘拐事件、消えたヤノチの捜索や交渉の準備まで全ての計画が崩壊した。
さらにはキンミッコには優秀な指揮官もいなかった。
自分の保身しか考えないイエスマンしか周りに置いておらず、優秀な文官は捕らえた挙句ルフォンに助け出されてリュードたちと共にいる。
冷静に物事を進められていないのだ。
国境封鎖して検問でもされたら困ったが誰もいないので町の中を捜索で走り回らせるのが関の山なのだろう。
遅きに失する。
国境は越えてしまったので、隣の国に私兵を送り込むわけにもいかずキンミッコはもう手詰まりだ。
エミナのおばあちゃんを気遣ってのんびりと休んでも問題はない。
夜は少し冷える。
みんな暖を取ろうと自然と焚き火の周りに集まってくる。
監禁から解放され歩き通して疲れてしまったエミナのおばあちゃんや文官たちは早々と寝てしまった。
今起きているのは焚き火の見張り役のリュードとなんだか眠れないエミナとヤノチだけであった。
「エミナ、さんってパノンだったんですね……」
他の人が眠る中、ヤノチが重たく口を開いた。
ずっと考えていた。
エミナもエミナでいつ聞かれるのか気が気でなかった。
打ち解けてちゃん付けだったはずなのにヤノチとエミナは再び距離が出来て、またさん付けになっている。
ヤノチはエミナがパノンの娘であることを知ってしまったのだ。
ミエバシオを騙し討ちしたパノンの娘、エミナ。
知られたくなかったのに知られてしまった。
エミナが故郷に帰り、そこで冒険者として活動しようとしていた理由。
それはトキュネスが生まれ故郷であるということよりもそこに育ての親であったおばあちゃんがいたからであった。
残された唯一の身内でエミナを育ててくれた人。
まだ恩返しもできていない。
おばあちゃんの側で活躍してもう1人でも生きていけると証明して、安心させてあげたかった。
正直な話、パノンの姓があって顔を指される可能性がある限りはトキュネスで落ち着いて暮らすことなんて無理だ。
そのうちどこか別の場所に行く必要はある、エミナはそう思っていた。
とりあえず今はおばあちゃんがいる場所が自分のいる場所だから固定の場所で働く必要がない冒険者としてやっていこうと思っていたのだ。
どうしてエミナのおばあちゃんがキンミッコのところにいたのか。
それはエミナを無理矢理協力させて広告塔にするためであった。
普通に考えて結婚しろといって協力するはずがない。
そこでおばあちゃんを人質に取り、人を誘拐して結婚させようとしていたのだ。
トキュネスに未練はない。
人を結婚させて政治的交渉を優位に進めようとする国になんて未練なんてあるはずがなかった。
たまたまルフォンが救出していてくれて良かった。
「そうか」
「リュードさんたちこそ良かったんですか? あんな騒ぎになってしまって……」
「俺たちにとって一生トキュネスに近づけないこととエミナを天秤にかけた時、結果は分かりきっているさ」
「もちろんエミナちゃんの方が大事!」
トキュネスに行けないことなんてリュードとルフォンにとっては小さいことである。
むしろ今頃キンミッコはどんな顔をしているのか気になっている。
状況が把握できておらず、リュードたちの足取りも掴めていないのか追手もこない。
話に聞いているような人物だとしたら大激怒しているところだろう。
「リュードさん、ルフォンさん……」
本当に最高の二人だとエミナは泣きそうになってフードを深く被り直して顔を隠した。
すごく、すごく嬉しくて、それ以上言葉が出なかった。
「にしてもキンミッコとやら最悪の領主だな」
ルフォンが一緒に救出したおばあちゃん以外の人たちはいわゆる文官だった。
良心を持っていてキンミッコを摘発したり、キンミッコに忠言をしようとしたりした人たちだった。
交渉に当たるために一丸となって不正を隠蔽して乗り切る時に正義感を持つ文官は邪魔になった。
キンミッコは文官を捕らえてヤノチと同様に幽閉していたのである。
ヤノチと違って文官たちはそのまま放っておけば謎の失踪を遂げることになっていただろう。
文官たちにも付いてきていいのか尋ねたら、ヤノチの兄に会いに行くならカシタコウに行ってキンミッコを摘発すると答えた。
相当お怒りの文官たちは証拠も隠してあるらしく、ただの証言以上の効果を持ったカードをリュードは手に入れた。
ヤノチの兄がより交渉に有利になるなら悪くない。
出来る限り迅速に動きたいものだけどお年寄りもいて無理はできない。
移動を続けてちょうど国境を越えた時にはすでに日は落ちていた。
それでもカシタコウ側に入れて少し安心して野営の準備をして休息をとることにした。
理由は知らないが追手はこないので進行速度としては悪くない。
追手が未だに来ないのは1つではなくいくつもの忙しさが重なっているだろうなと推測する。
領内の混乱収拾に花嫁の誘拐事件、消えたヤノチの捜索や交渉の準備まで全ての計画が崩壊した。
さらにはキンミッコには優秀な指揮官もいなかった。
自分の保身しか考えないイエスマンしか周りに置いておらず、優秀な文官は捕らえた挙句ルフォンに助け出されてリュードたちと共にいる。
冷静に物事を進められていないのだ。
国境封鎖して検問でもされたら困ったが誰もいないので町の中を捜索で走り回らせるのが関の山なのだろう。
遅きに失する。
国境は越えてしまったので、隣の国に私兵を送り込むわけにもいかずキンミッコはもう手詰まりだ。
エミナのおばあちゃんを気遣ってのんびりと休んでも問題はない。
夜は少し冷える。
みんな暖を取ろうと自然と焚き火の周りに集まってくる。
監禁から解放され歩き通して疲れてしまったエミナのおばあちゃんや文官たちは早々と寝てしまった。
今起きているのは焚き火の見張り役のリュードとなんだか眠れないエミナとヤノチだけであった。
「エミナ、さんってパノンだったんですね……」
他の人が眠る中、ヤノチが重たく口を開いた。
ずっと考えていた。
エミナもエミナでいつ聞かれるのか気が気でなかった。
打ち解けてちゃん付けだったはずなのにヤノチとエミナは再び距離が出来て、またさん付けになっている。
ヤノチはエミナがパノンの娘であることを知ってしまったのだ。
ミエバシオを騙し討ちしたパノンの娘、エミナ。
知られたくなかったのに知られてしまった。
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