106 / 307
第二章
不倶戴天5
しおりを挟む
寝転がると馬車に耳が近くて中の会話がハッキリ聞き取れてしまうのであぐらをかくようにして座ることにする。
流石に歩きより馬車は速い。
歩きだったら今日も野宿だったろうところを日が暮れる頃には次の町に着くことができた。
そのまま同じ宿に泊まることにもなった。
4人部屋が2つ空いていたので男女で分かれて泊まる。
「失礼でなければどちらまで向かわれるのかお伺いしても?」
マジックボックスの袋の存在を隠すためにいくらか荷物は背負って移動している。
ただ時々マジックボックスがあるために何があって何がないか忘れることもるのでリュードが荷物の整理をしているとマザキシが声をかけてきた。
「今はとりあえずトキュネスかな」
「トキュネス……ですか」
表情には出さなくてもわずかに空気がピリついたのをリュードは感じた。
「トキュネスのご出身で?」
「いや、ヘランドに行くつもりでね。トキュネスはその途中だし、ちょっとした用があるんだ」
「そうですか、失礼しました」
エミナのことはあえて言わなかった。
なんだかトキュネスに対して特別な思いがあるように感じたからだ。
ミエバシオはある種の有名さがあってトキュネスに対して特別な思いがあるということが今のところは分かった。
ただこの2つを繋げるにはまだ情報も足りず、無理がある。
なんの関係もない可能性もあるけれど、なんの関係もないとはリュードには思えなかった。
荷物を整理して買うのかが必要なものを考えたり地図を眺めていたら日も落ちてきたので食事をヤノチたちと共にすることにした。
ルフォンとヤノチはいつの間にかかなり仲良くなっている。
やたらとエミナは静かなだけど、持ち前の人見知りが発動したかなんてリュードも考えていた。
改めて旅の予定について話してみるとリュードたちとヤノチたちは途中まで同じ道を行くことが分かった。
リュードたちはそのままトキュネスに入り、ヤノチたちはその手前まで行くのでほとんど同じ予定である。
なのでヤノチたちの誘いで一緒に行くことになった。
思惑としてヤノチたちは人手が欲しかったのだろうとリュードは考えた。
確実に敵でなく、利益を求めてこない味方を側に置いておきたかったのだろう。
リュードもそんな思惑には気づいていたけれど枷になることもないだろうと賛成し、2人にも意見を聞いた。
エミナは反対も賛成もしなかったがルフォンは二つ返事で賛成したので誘いを受け入れることになった。
「エミナ、何かがあるのか?」
少しエミナが暗い顔をしていることが気になったリュードが食事後にこっそりと声をかけた。
「う、ううん、なんでもないよ」
「あの3人と何かあったのか?」
「何もないよ……」
「もし一緒に行くのが嫌なら言ってくれ。途中で理由を付けて別れてもいいんだ」
口ではなんともないと言いながら表情は晴れない。
けれどエミナが自ら言い出さないのに聞き出すこともできない。
「大丈夫……これは私の問題だから」
「……そうか。だが何かあったら言ってくれよ? 俺たちはエミナの味方だから」
「ありがとうございます、リュードさん」
ーーーーー
エミナが何を心配しているのかはともかく、今のところヤノチたちは良い人であった。
次の日からリュードたちは馬車に乗せてもらって移動する。
配置は相変わらず馬車の中に女の子3人、御者台に2人、馬車の上に1人である。
歩かなくて良いのはやはり楽である。
結構揺れるけれど三半規管も強いリュードは乗り物酔いにも強く馬車の上であっても問題はない。
馬車の中では相変わらず話をしている。
なんだか気まずそうだったエミナも2人の勢いに押されて話すようになり、今ではキャイキャイと3人で話すようになっている。
1人だと何か悩んでしまうようだがいざ会話し始めると同年代の女の子同士で気は合うようだ。
広いカシタコウも馬車で進むと早いものだ。
魔物に襲われることもなくのんびりと進んできて、あっという間にヤノチたちの目的地の近くまで来ていた。
このまま何事もなさそうだ、なんて思っていると馬車が急に止まってリュードは馬車の上から落ちそうになった。
何事かと体を起き上がらせてみると急カーブの先で馬車が横転しているのが見えた。
周りは森で、不自然に道の真ん中を塞ぐ倒れた馬車。
嫌な予感がした。
馬車を起こすでもなく何かを話している馬車の持ち主っぽい2人組がいる。
何をしているんだと思ってみていたら森の中で何かがキラリと光るのが視界の端に映った。
「危ない!」
「ぐわっ!」
馬車の御者をしているマザキシを狙った矢が飛んできた。
リュードが気づけたので何本かの矢は防ぐことができたが1本がマザキシの肩に刺さってしまった。
森の中から何かが打ち上がり、赤い光を放つ。
信号弾である。
さらに森の中で次の矢を番えているのが見えて頭の中で警鐘が鳴る。
「ダカン、そこから降りろ!」
リュードがマザキシの服を掴んで馬車の上から引きずり下ろす。
ダカンもギリギリ御者台から転げ落ち、直後に御者台に矢が刺さる。
「ルフォン、エミナ、敵襲だ!」
馬車のドアを叩いて2人を呼ぶ。
流石に歩きより馬車は速い。
歩きだったら今日も野宿だったろうところを日が暮れる頃には次の町に着くことができた。
そのまま同じ宿に泊まることにもなった。
4人部屋が2つ空いていたので男女で分かれて泊まる。
「失礼でなければどちらまで向かわれるのかお伺いしても?」
マジックボックスの袋の存在を隠すためにいくらか荷物は背負って移動している。
ただ時々マジックボックスがあるために何があって何がないか忘れることもるのでリュードが荷物の整理をしているとマザキシが声をかけてきた。
「今はとりあえずトキュネスかな」
「トキュネス……ですか」
表情には出さなくてもわずかに空気がピリついたのをリュードは感じた。
「トキュネスのご出身で?」
「いや、ヘランドに行くつもりでね。トキュネスはその途中だし、ちょっとした用があるんだ」
「そうですか、失礼しました」
エミナのことはあえて言わなかった。
なんだかトキュネスに対して特別な思いがあるように感じたからだ。
ミエバシオはある種の有名さがあってトキュネスに対して特別な思いがあるということが今のところは分かった。
ただこの2つを繋げるにはまだ情報も足りず、無理がある。
なんの関係もない可能性もあるけれど、なんの関係もないとはリュードには思えなかった。
荷物を整理して買うのかが必要なものを考えたり地図を眺めていたら日も落ちてきたので食事をヤノチたちと共にすることにした。
ルフォンとヤノチはいつの間にかかなり仲良くなっている。
やたらとエミナは静かなだけど、持ち前の人見知りが発動したかなんてリュードも考えていた。
改めて旅の予定について話してみるとリュードたちとヤノチたちは途中まで同じ道を行くことが分かった。
リュードたちはそのままトキュネスに入り、ヤノチたちはその手前まで行くのでほとんど同じ予定である。
なのでヤノチたちの誘いで一緒に行くことになった。
思惑としてヤノチたちは人手が欲しかったのだろうとリュードは考えた。
確実に敵でなく、利益を求めてこない味方を側に置いておきたかったのだろう。
リュードもそんな思惑には気づいていたけれど枷になることもないだろうと賛成し、2人にも意見を聞いた。
エミナは反対も賛成もしなかったがルフォンは二つ返事で賛成したので誘いを受け入れることになった。
「エミナ、何かがあるのか?」
少しエミナが暗い顔をしていることが気になったリュードが食事後にこっそりと声をかけた。
「う、ううん、なんでもないよ」
「あの3人と何かあったのか?」
「何もないよ……」
「もし一緒に行くのが嫌なら言ってくれ。途中で理由を付けて別れてもいいんだ」
口ではなんともないと言いながら表情は晴れない。
けれどエミナが自ら言い出さないのに聞き出すこともできない。
「大丈夫……これは私の問題だから」
「……そうか。だが何かあったら言ってくれよ? 俺たちはエミナの味方だから」
「ありがとうございます、リュードさん」
ーーーーー
エミナが何を心配しているのかはともかく、今のところヤノチたちは良い人であった。
次の日からリュードたちは馬車に乗せてもらって移動する。
配置は相変わらず馬車の中に女の子3人、御者台に2人、馬車の上に1人である。
歩かなくて良いのはやはり楽である。
結構揺れるけれど三半規管も強いリュードは乗り物酔いにも強く馬車の上であっても問題はない。
馬車の中では相変わらず話をしている。
なんだか気まずそうだったエミナも2人の勢いに押されて話すようになり、今ではキャイキャイと3人で話すようになっている。
1人だと何か悩んでしまうようだがいざ会話し始めると同年代の女の子同士で気は合うようだ。
広いカシタコウも馬車で進むと早いものだ。
魔物に襲われることもなくのんびりと進んできて、あっという間にヤノチたちの目的地の近くまで来ていた。
このまま何事もなさそうだ、なんて思っていると馬車が急に止まってリュードは馬車の上から落ちそうになった。
何事かと体を起き上がらせてみると急カーブの先で馬車が横転しているのが見えた。
周りは森で、不自然に道の真ん中を塞ぐ倒れた馬車。
嫌な予感がした。
馬車を起こすでもなく何かを話している馬車の持ち主っぽい2人組がいる。
何をしているんだと思ってみていたら森の中で何かがキラリと光るのが視界の端に映った。
「危ない!」
「ぐわっ!」
馬車の御者をしているマザキシを狙った矢が飛んできた。
リュードが気づけたので何本かの矢は防ぐことができたが1本がマザキシの肩に刺さってしまった。
森の中から何かが打ち上がり、赤い光を放つ。
信号弾である。
さらに森の中で次の矢を番えているのが見えて頭の中で警鐘が鳴る。
「ダカン、そこから降りろ!」
リュードがマザキシの服を掴んで馬車の上から引きずり下ろす。
ダカンもギリギリ御者台から転げ落ち、直後に御者台に矢が刺さる。
「ルフォン、エミナ、敵襲だ!」
馬車のドアを叩いて2人を呼ぶ。
22
お気に入りに追加
404
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~
霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。
ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。
これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
転生幼児は夢いっぱい
meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、
ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい??
らしいというのも……前世を思い出したのは
転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。
これは秘匿された出自を知らないまま、
チートしつつ異世界を楽しむ男の話である!
☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。
誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。
☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*)
今後ともよろしくお願い致します🍀
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる