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第二章

神様のお願い3

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「祈りの間は空いていますか?」

 利用料を払い、神様に祈りを捧げたり懺悔をしたりをすることができるのが祈りの間である。
 空いていれば誰でも利用することができる。

 祈りの間は利用されている間は誰も入ってはいけないので密談に使われることもあるとかないとか。

「はい、空いておりますよ」

「じゃあ利用お願いします」

 神官にお金を払って個室に案内される。
 小さめのやや縦長の部屋でこちらも真っ白な壁をしている。

 横はリュードが両手を広げると届くぐらいで、入って正面には小さな祭壇がある。
 特定宗教の神殿ならその神様の宗教的象徴が置いてあったりするものだが、ここは複数神が祀られているので簡易的な祭壇しかない。

「さて、どうしたらいいのかな?」

 村に宗教はないし前世でも特別に宗教に傾倒したこともない。
 当然にお祈りなんてこともしたことがない。

 ではなぜリュードが神殿に来たのか。
 それは子供の頃にあった夢なのか、お告げなのかのためである。

『寝てるところごめんね~。言い忘れてたけどもしどっか神殿があるところに行ったらお祈りを捧げてほしいんだ。そしたら僕たちと話すことができるからさ。ちょっとお願いしたいことがあるんだ。信者でも何でもない人に神託とか天啓を下ろすのは大変で……後は…………しんでん……まっ………………』

 そんな声が聞こえてきて夜中に叩き起こされた。
 すっかり忘れていたのだが暇になって何をしようかと考えていたら神様のお告げをふと思い出した。
 
 すごく面倒だけど思い出してしまった以上は無視するわけにいかない。
 なのでわざわざ神殿に訪れて、お金まで払って祈りの間に来たのであった。

 それっぽければいいかと思った。
 両膝を床について座り、手を組んで目を閉じた。

 ーーーーー

「おお、やっと来てくれたね」

 久々に聞いた軽い話し方に目を開けると祈りの間でなかった。
 リュードは祈った時の体勢のままだったが、周りはいつの間にか日本家屋風の部屋なっている。

 そして目の前には座布団を枕に横になっている神様ケーフィスがいた。
 転生する前、この世界に来てから会った創造神である。

「君の感覚だと久しぶりというのかな? 確かに待ち遠しくて僕も長いこと待ったような感じがするね」

 まあそこに座ってと言ってケーフィスが指を鳴らすと上から座布団とちゃぶ台が降ってきた。
 上を見上げてみてもそこにあるのは木の天井。

 どこかでみたような光景である。
 とりあえずケーフィスの正面の座布団に座る。

「君のために用意したんだ、ささっ、どうぞ」

 ちゃぶ台の上には湯呑みに入ったお茶と木の器に入ったお茶請けのお菓子がある。
 ケーフィスがちゃぶ台の上に身を乗り出して木の器の中の物をリュードの前に置いた。

「これって……」

 茶色くて丸い小さいそれはまんじゅうであった。

「そう! 君が来てからあちらの世界と繋がっている時間が思っていたよりも長くてね、いろいろ教えてもらったのさ。これは君が好きだって聞いたから僕の信者に神託を出して作らせたのさ!」

 信託を出すという行為や信者の努力は知らないが、この神様とんでもないことをするなとリュードは思った。

「結構試行錯誤したみたいだけど上手く出来たんじゃないかな?」

 せっかくケーフィス(の信者)が作ってくれたまんじゅう食べてみる。

「ん! 美味い!」

 正直あまり期待していなかった。
 手に持った感じは相当クオリティは高い。
 
 思い切って丸々口に入れて一口で食べてみた。
 中にはちゃんとあんこが入っていて、甘さは控えめで何個でも食べられそうな味わい。

 最後にも食べた、前の世界でのお気に入りのお店のものとは少し味は違っているが、お店クオリティの美味しさがある。
 リュードの言葉を受けて鼻高々のケーフィスをよそにお茶をすするとこちらも普通に緑茶で美味しい。

「君たちの世界と同じとはいかないけど似たようなものとか同じようなものはあるからね。頑張れば再現できないこともないのさ」

 砂糖やなんかはあるのであずきのようなものがあればあんこの再現は出来る。
 まんじゅうに必要な他の材料は確かに存在しているし紅茶も存在しているのだから緑茶も作れる。

 日本風の文化がなかったとしても食べ物やなんかピンポイントで見ると近いものが存在しているのかもしれない。

「今日はわざわざありがとね。これまでずっと君のこと見てきたよ。その……謝らなくちゃいけないと思ってね」

 ニコニコと笑うのをやめて、真面目な顔になるケーフィス。

「君の希望はあくまでも人だった。ちょっと顔が良かったり望めば努力できる環境を希望したけれどね。それでさ、君が望んでいたのは人でも…………真人族だったんでしょ? こっちの手違い、というか、僕が単に人とだけ書いたからペルフェが人とつく種族なら何でもいいって解釈しちゃって……」

 気まずそうにするケーフィスは目が泳ぎまくって視線が定まっていない。
 怒られている子供みたいだ。

 リュードは人を望んだ。
 それは転生前と同じ普通の人、この世界における真人族という種族を望んでいた。
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