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第一章
もうすでに世界は救っています2
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「あ~ん、また寝過ごしちゃったぁ~!」
お前はまだ体の使い方が甘いなどとウォーケックの講釈が始まりそうになった時残念そうな女の子の声が聞こえてきてウォーケックの講釈はありがたいことに止まった。
慌てて出てきたのだろう、パジャマのまま腰まである長い黒髪をところどころピョンピョンと跳ねさせたままクリクリとした大きな目に涙を貯めるようにして女の子がお隣さん家の玄関に立っていた。
彼女はお隣さん家、つまりはウォーケックの娘さんであるルフォン・ディガンだ。
同時にリュードの幼馴染でもある。
リュードと同い年のルフォンは頭に黒い狼の耳が付いていてお尻からはフサフサとした真っ黒な尻尾が生えている。
慌てていたのか枕を抱えたまま耳をペタンとして残念そうな表情を浮かべるが悪いのは寝坊助なルフォンだ。
いつも鍛練の様子を見たいと言いながらも起きられずこうして拗ねたような顔をするのだ。
いやまあ可愛いんだけどねとリュードは微笑む。
それに居たところでルフォンは何をするわけでもない。
たまに早起きしたと思ったらニコニコと鍛練の様子を眺めているぐらいなものでそれの何が楽しいのだろうと疑問に思う。
「おはよう、ルフォン」
「お……おはよう」
疲れて肩で息をしている状態ではあるけれど幼馴染を無視するわけにもいかず笑顔で挨拶するとむくれ顔を枕で隠し尻尾を揺らしながらちゃんと挨拶を返してくれる。
そんな様子もすごくかわいいのだ。
ちなみに側に父親であるウォーケックもいるが空気と化している。
下手に口を出せば起こさなかったことなど怒られたりするので気配を消し、不本意でしぶしぶながらリュードが丸く収めるまで静観している。
ルフォンを手招きして呼び寄せると嬉しそうにリュードのところに来る。
横に来るとヘタって地面に座っているリュードの横にしゃがんでやや頭を寄せてくる。
正直ウォーケックの目がすごく怖いのだが慣れたもんでそれを無視してルフォンの頭を優しく撫ぜる。
尻尾はすっかり上がってパタパタと振られ、ご機嫌になったことが簡単に分かった。
気持ちよさそうに目を細めて嬉しそうに笑って頬を赤らめて笑顔を浮かべる。
「おい、獣人族同士がイチャついてるぜ」
「ほんとほんと、あんなんで恥ずかしくないのかね」
幸せな時間を邪魔する無粋な会話が聞こえてくる。
会話しているというよりはむしろリュードたちに聞かせるぐらいの意図がある声の大きさ。
リュードより多分1つか2つほど年上の男のガキが2人リュードたちを横目に近くを通り過ぎようとしていた。
悪意ある言葉が聞こえてきてルフォンは尻尾を丸めて2人の視線から外れるようにリュードの陰に隠れる。
獣人という言葉が向けられた相手はルフォン、そしてリュードにもである。
獣人族という言葉はこの場合は侮蔑的な意味をはらんでいるが相手は子供だから悪口程度の意識しかない。
ルフォンは狼の耳と尻尾、リュードは頭の前の方から後ろへと流れるように真っ黒な角が生えている。
この特徴を揶揄して獣人族と少年たちは口にしているのである。
実はリュードもルフォンも人ではない。
いや、人は人なのであるがリュードが思い描いているようないわゆる人間ではない。
この世界における人間は真人族といい人口の多くを占める種族である。
けれどこの世界に住んでいるのは真人族だけではない。
真人族以外の種族も多く存在している。
多数を占める真人族に対する種族として魔人族という概念があり、真人族以外の種族をまとめてそう言っている。
そう、リュードとルフォンは魔人族なのである。
さらにはリュードは魔人族の中でも竜人族という希少種族に転生してしまったのである。
「貴様らぁ! うちの娘を獣人とは何だ!」
「ヤベッ! 逃げるぞ!」
娘を獣人族などと馬鹿にされてウォーケックが怒りの表情をうかべた。
口の悪いガキ2人はウォーケックに怒られて逃げていく。
リュードは気にするなとルフォンの頭を撫でてやる。
最初は竜人族なんてわからなかった。
両親は普通の人と変わらない姿をしているし、竜人族だからと言って生活に特別変わったこともないからだ。
転生したリュードの意識は赤ちゃんの頃からあったのだけど、頭のツノにはある程度成長してから気がついた。
何か頭にあたっているとは赤子心に思っていたがまさかツノだとは思いもしなかった。
自分が竜人族だと気づいて騙されたなんて思ったりもしたけど今は竜人族で良かったとすら思っている。
よくよく考えれば可愛い幼馴染もいて貴族じゃないけど貧しくもなく、武芸や魔法を学べて程よい田舎でのびのび成長していける環境がある。
これはリュード自身が希望したもので希望をちゃんと叶えてもらった結果である。
希望したのは希望したのだけどこんな希望だったかは少し怪しい。
希望を出す時には酔っぱらっていたしもう何年も前のことなのでどんな希望を出したのか大体しか記憶に残っていない。
ひとまず竜人族は竜の血を引くとされていて強靭な肉体と高い魔力を持っている種族である。
魔人族があやふやな立場にあるのが多い中、今の時代において竜人族は意外と尊敬されるような種族でもある。
能力が高いというだけではなく400年前にあった真人族と魔王との戦争の時に竜人族の英雄は魔王側に立って戦った。
その誇り高い戦い方と戦後にまとめ役を担って真人族と交渉したりと真人族からも他の魔人族からも評価が高い。
今も昔も希少種族なので存在している人数も少なく、そう考えると竜人族になれたのは幸運だったかもしれない。
お前はまだ体の使い方が甘いなどとウォーケックの講釈が始まりそうになった時残念そうな女の子の声が聞こえてきてウォーケックの講釈はありがたいことに止まった。
慌てて出てきたのだろう、パジャマのまま腰まである長い黒髪をところどころピョンピョンと跳ねさせたままクリクリとした大きな目に涙を貯めるようにして女の子がお隣さん家の玄関に立っていた。
彼女はお隣さん家、つまりはウォーケックの娘さんであるルフォン・ディガンだ。
同時にリュードの幼馴染でもある。
リュードと同い年のルフォンは頭に黒い狼の耳が付いていてお尻からはフサフサとした真っ黒な尻尾が生えている。
慌てていたのか枕を抱えたまま耳をペタンとして残念そうな表情を浮かべるが悪いのは寝坊助なルフォンだ。
いつも鍛練の様子を見たいと言いながらも起きられずこうして拗ねたような顔をするのだ。
いやまあ可愛いんだけどねとリュードは微笑む。
それに居たところでルフォンは何をするわけでもない。
たまに早起きしたと思ったらニコニコと鍛練の様子を眺めているぐらいなものでそれの何が楽しいのだろうと疑問に思う。
「おはよう、ルフォン」
「お……おはよう」
疲れて肩で息をしている状態ではあるけれど幼馴染を無視するわけにもいかず笑顔で挨拶するとむくれ顔を枕で隠し尻尾を揺らしながらちゃんと挨拶を返してくれる。
そんな様子もすごくかわいいのだ。
ちなみに側に父親であるウォーケックもいるが空気と化している。
下手に口を出せば起こさなかったことなど怒られたりするので気配を消し、不本意でしぶしぶながらリュードが丸く収めるまで静観している。
ルフォンを手招きして呼び寄せると嬉しそうにリュードのところに来る。
横に来るとヘタって地面に座っているリュードの横にしゃがんでやや頭を寄せてくる。
正直ウォーケックの目がすごく怖いのだが慣れたもんでそれを無視してルフォンの頭を優しく撫ぜる。
尻尾はすっかり上がってパタパタと振られ、ご機嫌になったことが簡単に分かった。
気持ちよさそうに目を細めて嬉しそうに笑って頬を赤らめて笑顔を浮かべる。
「おい、獣人族同士がイチャついてるぜ」
「ほんとほんと、あんなんで恥ずかしくないのかね」
幸せな時間を邪魔する無粋な会話が聞こえてくる。
会話しているというよりはむしろリュードたちに聞かせるぐらいの意図がある声の大きさ。
リュードより多分1つか2つほど年上の男のガキが2人リュードたちを横目に近くを通り過ぎようとしていた。
悪意ある言葉が聞こえてきてルフォンは尻尾を丸めて2人の視線から外れるようにリュードの陰に隠れる。
獣人という言葉が向けられた相手はルフォン、そしてリュードにもである。
獣人族という言葉はこの場合は侮蔑的な意味をはらんでいるが相手は子供だから悪口程度の意識しかない。
ルフォンは狼の耳と尻尾、リュードは頭の前の方から後ろへと流れるように真っ黒な角が生えている。
この特徴を揶揄して獣人族と少年たちは口にしているのである。
実はリュードもルフォンも人ではない。
いや、人は人なのであるがリュードが思い描いているようないわゆる人間ではない。
この世界における人間は真人族といい人口の多くを占める種族である。
けれどこの世界に住んでいるのは真人族だけではない。
真人族以外の種族も多く存在している。
多数を占める真人族に対する種族として魔人族という概念があり、真人族以外の種族をまとめてそう言っている。
そう、リュードとルフォンは魔人族なのである。
さらにはリュードは魔人族の中でも竜人族という希少種族に転生してしまったのである。
「貴様らぁ! うちの娘を獣人とは何だ!」
「ヤベッ! 逃げるぞ!」
娘を獣人族などと馬鹿にされてウォーケックが怒りの表情をうかべた。
口の悪いガキ2人はウォーケックに怒られて逃げていく。
リュードは気にするなとルフォンの頭を撫でてやる。
最初は竜人族なんてわからなかった。
両親は普通の人と変わらない姿をしているし、竜人族だからと言って生活に特別変わったこともないからだ。
転生したリュードの意識は赤ちゃんの頃からあったのだけど、頭のツノにはある程度成長してから気がついた。
何か頭にあたっているとは赤子心に思っていたがまさかツノだとは思いもしなかった。
自分が竜人族だと気づいて騙されたなんて思ったりもしたけど今は竜人族で良かったとすら思っている。
よくよく考えれば可愛い幼馴染もいて貴族じゃないけど貧しくもなく、武芸や魔法を学べて程よい田舎でのびのび成長していける環境がある。
これはリュード自身が希望したもので希望をちゃんと叶えてもらった結果である。
希望したのは希望したのだけどこんな希望だったかは少し怪しい。
希望を出す時には酔っぱらっていたしもう何年も前のことなのでどんな希望を出したのか大体しか記憶に残っていない。
ひとまず竜人族は竜の血を引くとされていて強靭な肉体と高い魔力を持っている種族である。
魔人族があやふやな立場にあるのが多い中、今の時代において竜人族は意外と尊敬されるような種族でもある。
能力が高いというだけではなく400年前にあった真人族と魔王との戦争の時に竜人族の英雄は魔王側に立って戦った。
その誇り高い戦い方と戦後にまとめ役を担って真人族と交渉したりと真人族からも他の魔人族からも評価が高い。
今も昔も希少種族なので存在している人数も少なく、そう考えると竜人族になれたのは幸運だったかもしれない。
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