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第四章
ゴブリンは獣人の子供に心臓を教えます2
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ただカジアもちょっと悪いというか、魔物の前であるというのに普通に熟睡してしまうのだ。
今はみんなと鍛錬しているので仕方ない側面はあるけれど、神経を尖らせて眠れないなんて言うことがあればドゥゼアがカジオを出したことに気づくこともあったかもしれない。
カジアが変なところで図太いがためにカジオの存在に気づかないなんていうすれ違いが発生していた。
心中は察するが正直めんどくさいとは思ってしまうドゥゼアであった。
「よし、寝たな」
レビスとユリディカにメタメタにやられたカジアは怪我が残らない程度にユリディカに治療してもらった後すぐに眠ってしまった。
どこでもしっかりと眠れるというのはある意味良い性質ではある。
少し様子を見てカジアが完全に眠りに落ちたのを確認したドゥゼアは集中を高める。
「出てこい!」
魔力を高めてカジオを召喚する。
心臓から力の塊が飛び出していくような感覚は何回やっても慣れないものである。
『俺を出すのも早くなってきたな』
出てきたカジオが体の具合を確かめる。
召喚された最初の頃は自分の体なのに自分の体ではないような違和感を感じていた。
けれどカジオはあくまで召喚されたものであり、体も擬似的に再現されたものであると理解してからは違和感も受け入れられた。
『今日も……いいのか?』
「好きにしろ。どうせ時間が短すぎて他にできることもない」
集中していなければすぐにでも召喚を解除してしまいそうだったが今は召喚を維持しながらでも少し余裕が出てきた。
ドゥゼアの許可を得てカジオがカジアのことを見る。
カジアのそばに腰を下ろすとそっと手を伸ばす。
優しい目をしてカジアの頭を撫でてやる。
直に会話する勇気はないけれど息子と触れ合うことはカジオの楽しみだった。
呼び出したところで出ていられる時間は短い。
その短い時間で出来ることなどほとんどないので、その中でも最も有意義な時間の使い方だ。
『強く生きろ……きっとお前ならなんでも乗り越えられる』
カジオに撫でられてカジアはくすぐったそうに身をよじった。
「もう時間だ」
ドゥゼアの中の魔力も減ってきた。
これ以上維持すると今度はドゥゼアが辛くなる。
『毎度ありがとな』
「俺の鍛錬のついでだ」
カジオの体が透けていき、最後に残された魔力の塊がドゥゼアの中に戻ってくる。
一応カジオが体に戻ってくるとカジオの方にも魔力が残っているのか少しだけ魔力が回復する。
「くぅ……良い話ですね」
毎回カジオとカジアの短いふれあいを見てオルケはちょっとウルウルとしている。
もっと一緒にいたいだろう親子の微妙な距離感に妙な哀愁を感じずにはいられないのだ。
おそらく元人間だからなのだろう。
レビスとユリディカは分からないと言った顔をしていた。
カジオ召喚が終われば消耗も激しいので1日はほとんど終わりとなる。
あとは交代交代で魔物に襲われないように番をしながら夜の時間を過ごすのであった。
ーーーーー
『歩きながらも心臓を意識する……』
『そうだ。一流の者になると呼吸するように心臓の力を常に体に巡らせている。そしていざ使う時も自然と力を引き出せるものなのだ』
移動の最中もカジアの鍛錬は続く。
歩きながらも心臓から力を送り出して体を巡らせる。
意識して心臓から力を引き出すことはできるが、意識しなくても常に心臓から力を引き出すようにできることも必要なのである。
常に力を使うと常に心臓に負担をかけることになり、毎日わずかでも力が鍛えられるのだ。
カジオから言われたことをカジアに教えてやるとカジアは素直にそれに従う。
ドゥゼアもそのアドバイスを参考にして心臓を意識して歩いているが意外と難しい。
歩きながらだと集中が途切れがちになってしまう。
みんなに任せきりではなくちゃんと自分でも周りを警戒しようと思うと心臓から意識が逸れてしまうのだ。
『あの、ドゥゼアさん』
「なんだ?」
言葉は通じないが疑問に感じているニュアンスは文字にして書かずともカジアに通じる。
だから話としては通じているのだとカジアもそのまま続ける。
『最近良い夢を見るんです。ドゥゼアさんと会った最初の頃は怖かったのに、最近は……寝るとお父さんがいるんです』
「なに?」
『顔も分からないんですけど優しく声をかけて頭を撫でてくれるんです。なんでか分からないけどお父さんだって思うんです。……いつか、顔を見たいなって思います』
カジアは少しの寂しさと嬉しさが混じり合ったような笑顔を浮かべた。
寝ていても父親の存在は感じ取っていたのだ。
「だとよ、お父さん」
『…………もう少し、勇気を出す時間をくれ』
「前も言ったがもう時間はないからな。もしオゴンのところで別れることになれば二度と会うことはないだろう」
『……理解している』
『何話してるんですか?』
「なんでもねえよ」
今はみんなと鍛錬しているので仕方ない側面はあるけれど、神経を尖らせて眠れないなんて言うことがあればドゥゼアがカジオを出したことに気づくこともあったかもしれない。
カジアが変なところで図太いがためにカジオの存在に気づかないなんていうすれ違いが発生していた。
心中は察するが正直めんどくさいとは思ってしまうドゥゼアであった。
「よし、寝たな」
レビスとユリディカにメタメタにやられたカジアは怪我が残らない程度にユリディカに治療してもらった後すぐに眠ってしまった。
どこでもしっかりと眠れるというのはある意味良い性質ではある。
少し様子を見てカジアが完全に眠りに落ちたのを確認したドゥゼアは集中を高める。
「出てこい!」
魔力を高めてカジオを召喚する。
心臓から力の塊が飛び出していくような感覚は何回やっても慣れないものである。
『俺を出すのも早くなってきたな』
出てきたカジオが体の具合を確かめる。
召喚された最初の頃は自分の体なのに自分の体ではないような違和感を感じていた。
けれどカジオはあくまで召喚されたものであり、体も擬似的に再現されたものであると理解してからは違和感も受け入れられた。
『今日も……いいのか?』
「好きにしろ。どうせ時間が短すぎて他にできることもない」
集中していなければすぐにでも召喚を解除してしまいそうだったが今は召喚を維持しながらでも少し余裕が出てきた。
ドゥゼアの許可を得てカジオがカジアのことを見る。
カジアのそばに腰を下ろすとそっと手を伸ばす。
優しい目をしてカジアの頭を撫でてやる。
直に会話する勇気はないけれど息子と触れ合うことはカジオの楽しみだった。
呼び出したところで出ていられる時間は短い。
その短い時間で出来ることなどほとんどないので、その中でも最も有意義な時間の使い方だ。
『強く生きろ……きっとお前ならなんでも乗り越えられる』
カジオに撫でられてカジアはくすぐったそうに身をよじった。
「もう時間だ」
ドゥゼアの中の魔力も減ってきた。
これ以上維持すると今度はドゥゼアが辛くなる。
『毎度ありがとな』
「俺の鍛錬のついでだ」
カジオの体が透けていき、最後に残された魔力の塊がドゥゼアの中に戻ってくる。
一応カジオが体に戻ってくるとカジオの方にも魔力が残っているのか少しだけ魔力が回復する。
「くぅ……良い話ですね」
毎回カジオとカジアの短いふれあいを見てオルケはちょっとウルウルとしている。
もっと一緒にいたいだろう親子の微妙な距離感に妙な哀愁を感じずにはいられないのだ。
おそらく元人間だからなのだろう。
レビスとユリディカは分からないと言った顔をしていた。
カジオ召喚が終われば消耗も激しいので1日はほとんど終わりとなる。
あとは交代交代で魔物に襲われないように番をしながら夜の時間を過ごすのであった。
ーーーーー
『歩きながらも心臓を意識する……』
『そうだ。一流の者になると呼吸するように心臓の力を常に体に巡らせている。そしていざ使う時も自然と力を引き出せるものなのだ』
移動の最中もカジアの鍛錬は続く。
歩きながらも心臓から力を送り出して体を巡らせる。
意識して心臓から力を引き出すことはできるが、意識しなくても常に心臓から力を引き出すようにできることも必要なのである。
常に力を使うと常に心臓に負担をかけることになり、毎日わずかでも力が鍛えられるのだ。
カジオから言われたことをカジアに教えてやるとカジアは素直にそれに従う。
ドゥゼアもそのアドバイスを参考にして心臓を意識して歩いているが意外と難しい。
歩きながらだと集中が途切れがちになってしまう。
みんなに任せきりではなくちゃんと自分でも周りを警戒しようと思うと心臓から意識が逸れてしまうのだ。
『あの、ドゥゼアさん』
「なんだ?」
言葉は通じないが疑問に感じているニュアンスは文字にして書かずともカジアに通じる。
だから話としては通じているのだとカジアもそのまま続ける。
『最近良い夢を見るんです。ドゥゼアさんと会った最初の頃は怖かったのに、最近は……寝るとお父さんがいるんです』
「なに?」
『顔も分からないんですけど優しく声をかけて頭を撫でてくれるんです。なんでか分からないけどお父さんだって思うんです。……いつか、顔を見たいなって思います』
カジアは少しの寂しさと嬉しさが混じり合ったような笑顔を浮かべた。
寝ていても父親の存在は感じ取っていたのだ。
「だとよ、お父さん」
『…………もう少し、勇気を出す時間をくれ』
「前も言ったがもう時間はないからな。もしオゴンのところで別れることになれば二度と会うことはないだろう」
『……理解している』
『何話してるんですか?』
「なんでもねえよ」
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