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第三章
ゴブリンはダンジョンに向かいます3
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洞窟を奥へと進んでいく。
不思議なものでダンジョンはその周辺にいる魔物を遠ざけてしまう。
魔物はなぜかダンジョンを忌避して基本的に離れていってしまう。
なので洞窟の中もダンジョンのせいか魔物の気配もない。
「というか魔法使えるんだから自分で明かり出せばいいんじゃない?」
「……はっ!?」
未だにドゥゼアに尻尾を巻き付けてそろりと歩いていたオルケを見てユリディカが首を傾げた。
盲点だったとオルケが目を見開いた。
オルケは火の魔法が使える。
ならば自分で火を出せば明かりを確保することができる。
火の魔法が使える魔法使いならば割と普通にやったりもすることなのだけどドゥゼアもそのことを完全に忘れていた。
「ま、まあ今はそれなりに明るいから?
目も慣れてきたし……」
オルケが暗闇怖い問題解決!
「明るーい……」
試しに小さい火の玉を作り出してみると洞窟の中が照らされる。
今は光るコケのおかげで困らないのですぐに消してみるけど自分自身で解決することができた。
「まあよかったじゃないか。
今度から夜も安心だな」
「怒ってないですか?」
「何を怒るんだ」
実際ドゥゼアもそんなこと忘れていたのに怒ることもない。
暗闇が怖い気持ちだって分からないものじゃない。
ゴブリンになって最初の頃はドゥゼアも暗いのが苦手だった。
当然ゴブリンが明かりなど使うはずもなく暗い中で他のゴブリンがキィーキィーと上げる声に気が狂いそうになっていた時もある。
恐怖は色々な判断能力を鈍らせる。
自分が魔法を使って周りを照らせることを忘れていてもそんなこと怒る必要がない。
むしろ忘れていたドゥゼアの方が悪いぐらいである。
「……ドゥゼアはいいゴブリンね」
「これぐらい普通だ。
……いや、普通じゃないけど」
常識としては怒らないのが普通だろう。
だけどゴブリンとして普通かと言われれば別に普通ではない。
「うふふ、みんながドゥゼアを好きな理由がよく分かるね」
「そうか、ありがとう」
歩いていると洞窟の中に川が現れた。
恐る恐る触ってみるととても冷たく、川底が見えるほどに透明度が高い。
「冷たくて美味いな」
口に含んでみると冷たい水が体に染み渡っていく。
「ほんのりと魔力が含まれているかもしれないな」
舌に集中すると甘味にも似たようなふくよかな味わいがある。
これはかなり良い水。
時々自然環境が優れていると魔力が溢れていて周りより植物や水に魔力が多く含まれている場合がある。
こうした時にはよく味わってみると普通のものよりも美味しく感じられる。
さらには魔力を含んでいるので体の魔力の回復も早くなり、調子を整えてくれるなどの効果がある。
希少な光るコケが生えていることからそんな感じがあることは分かっていたがこの洞窟は魔力で満ちている。
水にまで魔力が含まれているということはかなり恵まれた環境なのだ。
仮にダンジョンがなければゴブリンの巣にしたいぐらいである。
人に荒らされていないが故にこんな環境が保たれているのかもしれない。
「……あれがダンジョンか」
本当にダンジョンがあるのかと思い始めていたらそれがあった。
広めの空間、水が溜まって泉のようになっている。
その横に狭い割れ目があった。
そこがダンジョンだと一目見てわかった。
泉の上には光るコケが多く生えていてとても明るいぐらいであるのに割れ目の中は暗黒が広がっている。
まるで光が届いていないようで真っ暗に見えている。
覗き込んでみても奥は見えなくてコケも生えている様子がない。
洞窟における異常な場所、つまりはここがダンジョンの入り口なのであるとすぐにピンときた。
「あそこがダンジョンであーる」
「なるほどな……」
こんなところにあるダンジョンなどまず見つけられない。
色々なところに入り込めるクモだからこそ見つけられたのだろう。
「早速、行く?」
「いやまだだ」
「えー?」
ユリディカはやる気を見せているけれどドゥゼアは冷静である。
「何を見てるの?」
「天井」
上を見上げたドゥゼアに釣られてオルケも上を見上げるがそこにあるのはコケが生えて光っている天井だけである。
天井を見つめても何もない。
オルケは不思議そうに首を傾げた。
次にドゥゼアはキョロキョロと周りを見回している。
ドゥゼアが見ていたのは空間の広さ。
十分な高さがあって広さがある。
「ここをキャンプ地にしよう」
ダンジョンを攻略するということは大事であるがその前に状況を整えておくことも大事である。
ここまで移動してきた疲れも少なからずあるし、ダンジョンから出てきてヘトヘトになったまま床でただ寝るのでは回復も遅い。
今十分な休息をとり、後にも多少の準備ですぐに休めるような状況を設置しておいた方がいい。
空間の広さを見ていたのは火を焚けそうかどうかを確認するため。
ダンジョンの近くなので他の魔物がいない状況では遠慮なく焚き火を出来る。
天井が低かったり狭い場所だと焚き火をすればただの自殺行為であるが十分な広さがあれば焚き火をしてもいいだろう。
幸い広さは十分で煙も逃げていきそう。
近くには水もあるし優れた環境だと言っていい。
「ダンジョンに挑む前にまずはしっかりとした準備からだ」
不思議なものでダンジョンはその周辺にいる魔物を遠ざけてしまう。
魔物はなぜかダンジョンを忌避して基本的に離れていってしまう。
なので洞窟の中もダンジョンのせいか魔物の気配もない。
「というか魔法使えるんだから自分で明かり出せばいいんじゃない?」
「……はっ!?」
未だにドゥゼアに尻尾を巻き付けてそろりと歩いていたオルケを見てユリディカが首を傾げた。
盲点だったとオルケが目を見開いた。
オルケは火の魔法が使える。
ならば自分で火を出せば明かりを確保することができる。
火の魔法が使える魔法使いならば割と普通にやったりもすることなのだけどドゥゼアもそのことを完全に忘れていた。
「ま、まあ今はそれなりに明るいから?
目も慣れてきたし……」
オルケが暗闇怖い問題解決!
「明るーい……」
試しに小さい火の玉を作り出してみると洞窟の中が照らされる。
今は光るコケのおかげで困らないのですぐに消してみるけど自分自身で解決することができた。
「まあよかったじゃないか。
今度から夜も安心だな」
「怒ってないですか?」
「何を怒るんだ」
実際ドゥゼアもそんなこと忘れていたのに怒ることもない。
暗闇が怖い気持ちだって分からないものじゃない。
ゴブリンになって最初の頃はドゥゼアも暗いのが苦手だった。
当然ゴブリンが明かりなど使うはずもなく暗い中で他のゴブリンがキィーキィーと上げる声に気が狂いそうになっていた時もある。
恐怖は色々な判断能力を鈍らせる。
自分が魔法を使って周りを照らせることを忘れていてもそんなこと怒る必要がない。
むしろ忘れていたドゥゼアの方が悪いぐらいである。
「……ドゥゼアはいいゴブリンね」
「これぐらい普通だ。
……いや、普通じゃないけど」
常識としては怒らないのが普通だろう。
だけどゴブリンとして普通かと言われれば別に普通ではない。
「うふふ、みんながドゥゼアを好きな理由がよく分かるね」
「そうか、ありがとう」
歩いていると洞窟の中に川が現れた。
恐る恐る触ってみるととても冷たく、川底が見えるほどに透明度が高い。
「冷たくて美味いな」
口に含んでみると冷たい水が体に染み渡っていく。
「ほんのりと魔力が含まれているかもしれないな」
舌に集中すると甘味にも似たようなふくよかな味わいがある。
これはかなり良い水。
時々自然環境が優れていると魔力が溢れていて周りより植物や水に魔力が多く含まれている場合がある。
こうした時にはよく味わってみると普通のものよりも美味しく感じられる。
さらには魔力を含んでいるので体の魔力の回復も早くなり、調子を整えてくれるなどの効果がある。
希少な光るコケが生えていることからそんな感じがあることは分かっていたがこの洞窟は魔力で満ちている。
水にまで魔力が含まれているということはかなり恵まれた環境なのだ。
仮にダンジョンがなければゴブリンの巣にしたいぐらいである。
人に荒らされていないが故にこんな環境が保たれているのかもしれない。
「……あれがダンジョンか」
本当にダンジョンがあるのかと思い始めていたらそれがあった。
広めの空間、水が溜まって泉のようになっている。
その横に狭い割れ目があった。
そこがダンジョンだと一目見てわかった。
泉の上には光るコケが多く生えていてとても明るいぐらいであるのに割れ目の中は暗黒が広がっている。
まるで光が届いていないようで真っ暗に見えている。
覗き込んでみても奥は見えなくてコケも生えている様子がない。
洞窟における異常な場所、つまりはここがダンジョンの入り口なのであるとすぐにピンときた。
「あそこがダンジョンであーる」
「なるほどな……」
こんなところにあるダンジョンなどまず見つけられない。
色々なところに入り込めるクモだからこそ見つけられたのだろう。
「早速、行く?」
「いやまだだ」
「えー?」
ユリディカはやる気を見せているけれどドゥゼアは冷静である。
「何を見てるの?」
「天井」
上を見上げたドゥゼアに釣られてオルケも上を見上げるがそこにあるのはコケが生えて光っている天井だけである。
天井を見つめても何もない。
オルケは不思議そうに首を傾げた。
次にドゥゼアはキョロキョロと周りを見回している。
ドゥゼアが見ていたのは空間の広さ。
十分な高さがあって広さがある。
「ここをキャンプ地にしよう」
ダンジョンを攻略するということは大事であるがその前に状況を整えておくことも大事である。
ここまで移動してきた疲れも少なからずあるし、ダンジョンから出てきてヘトヘトになったまま床でただ寝るのでは回復も遅い。
今十分な休息をとり、後にも多少の準備ですぐに休めるような状況を設置しておいた方がいい。
空間の広さを見ていたのは火を焚けそうかどうかを確認するため。
ダンジョンの近くなので他の魔物がいない状況では遠慮なく焚き火を出来る。
天井が低かったり狭い場所だと焚き火をすればただの自殺行為であるが十分な広さがあれば焚き火をしてもいいだろう。
幸い広さは十分で煙も逃げていきそう。
近くには水もあるし優れた環境だと言っていい。
「ダンジョンに挑む前にまずはしっかりとした準備からだ」
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