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第二章
ゴブリンはリッチに協力します7
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「起き上がれ!」
リッチが嫌われる理由として大きなものが1つある。
何もアンデッドとは骨に限ったものじゃない。
戦いの中で死んでいった人たち、そうした死体に対してもリッチの力は及ぶのだ。
フォダエによって倒された冒険者たちがゆっくりと立ち上がる。
スケルトンを倒しても倒された仲間がいるなら相手の戦力にされてしまう。
こうしたやり方が嫌われるのは当然のことである。
「やれ!」
死んでいて、リッチに操られていようともほんの少し前までは仲間だった。
通常ならば戦うことにためらいもあるはずなのにジジイは全く躊躇なく冒険者ゾンビを切り捨てた。
「オルケ!
地下に行くわよ!」
「は、はい!」
「おい、どこに行く!」
フォダエが急に敵に背を向けて屋敷の中に入っていく。
ドゥゼアたちも顔を見合わせたがとりあえずフォダエを追いかけることにした。
「ピュアン、コイチャ!」
「コイチャ、あのゴブリンを追いかけて!」
「承知した」
周りのスケルトンが倒される中泥臭くに戦い続けていたピュアンたちもドゥゼアの後を追う。
『逃げたぞ!』
『追いかけろ!』
『くそっ、どけろ!』
リッチであるフォダエが逃げたことで冒険者たちもそちらに向かおうとした。
けれど残りのスケルトンたちが壁になるように立ちはだかって冒険者の邪魔をする。
「開きなさい!」
屋敷の1番奥の部屋。
木で彫られた魔物の木像が並んでいる部屋の真ん中でフォダエが杖で床を突いた。
すると魔法陣が浮かび上がって床板が開いて階段が現れた。
「地下まであったのか……」
デカい屋敷なのに加えて地下まである。
地盤も緩いだろうにそこに地下を作るのは楽ではなかったはずだ。
地下を降りていくとそこは実験場だった。
「これは……」
いろいろなものがあって目を引くけれど1番全員の注目を集めたのは巨大な氷の塊。
透明度の高い氷の塊の中には白い大きなトカゲのような魔物が閉じ込められていた。
ある種幻想的とも言える光景に目を奪われた。
「リザードマンよ」
「あれが?」
驚きに再び氷に目を向ける。
中に見えるのは白い姿。
リザードマンといえば黒っぽかったり、緑色っぽかったりとややくすんだような色をしているのが普通である。
しかし氷の中にいるのは全体的に白くて知っているリザードマンとは少し異なっていた。
造形的にもやや丸みが強いような印象もある。
「貴重な素体……あの子はあの白い体が原因で群れを追い出されたの……
私が拾って治療を施そうとしたのだけど長いこと持たなかったわ。
復讐、その代わりにあの子は自分の体を好きにしてもいいと言ったの」
先のリザードマンならいけそうという言葉こうしたところから出てきたのかと思った。
「……オルケ、あなたの魂をこの体に移します」
白いリザードマンを見上げながらフォダエは静かに告げた。
「えっ……」
「本当ならもっと研究を続けてあなたを人に戻してあげたかった。
でももう研究の成果を持って逃げるには間に合わない。
今あるものを全て失えば次にこのような機会が訪れるのはいつになるか分からないわ」
仮に逃げられたとしてもまた住む場所を見つけて、研究するのに良い環境を整えて物を集め、さらには研究の対象まで探していく。
それを資料も失われた中でやっていくのは楽なことではない。
今こうして得られた知識や成果を失うのはあまりにも惜しい。
そして自分を差し出した白いリザードマンを捨てていくこともフォダエには決心がつかなかった。
ならばここでこれまでの研究を活かしてしまう方がいい。
「ここを守って、研究を完成させたかったけれどあの化け物はとても止められそうにないわ。
だからせめてこの体だけでも……」
ここに来てようやくオルケはフォダエが何を目指していたのかを知った。
「ご、ご主人様……ですが」
「お願い……やるって……言って」
生の肉体を手に入れたって魔物は魔物。
他のものに殺されてしまうこともあるし、それが幸せなことなのかといえば分からない。
けれど死ぬこともなければ食も睡眠も何の楽しみもないアンデッドのままでいるよりは絶対にいい。
アンデッドは生と死の間にある歪んだ存在。
自ら死ぬこともできないのならせめて生の中にオルケを引き戻してあげたかった。
「……分かりました。
ご主人様がそう言うなら」
「ありがとう」
これを不思議な会話だとはドゥゼアは思わない。
死にたいのに死ねない気持ちはドゥゼアには分かる。
ゴブリンに転生し続けるドゥゼアはゴブリンになることが嫌で自ら命を絶とうとしたこともあった。
けれどどうしても自分じゃ死ねなかった。
だからといって冒険者を前にすると生きたいという思いが溢れ出してただ殺されるだけにもいられなくなる。
必死に逃げた先、抵抗した先なんかであればどうにか自分を納得させられるのだけど死ぬだけってことは本能なのか出来ないのである。
ただドゥゼアとフォダエたちの違いは生きているかどうか。
ドゥゼアは生きていくために日々必死になっている。
明日の食べ物さえ不安、いくら危険な場所でも寝なきゃ体は弱っていく、痛みは感じるし時には喜びだってある。
そうした刺激が少ないのがアンデッドなのだ。
いかに辛いかは想像するしかないが想像には難くない。
リッチが嫌われる理由として大きなものが1つある。
何もアンデッドとは骨に限ったものじゃない。
戦いの中で死んでいった人たち、そうした死体に対してもリッチの力は及ぶのだ。
フォダエによって倒された冒険者たちがゆっくりと立ち上がる。
スケルトンを倒しても倒された仲間がいるなら相手の戦力にされてしまう。
こうしたやり方が嫌われるのは当然のことである。
「やれ!」
死んでいて、リッチに操られていようともほんの少し前までは仲間だった。
通常ならば戦うことにためらいもあるはずなのにジジイは全く躊躇なく冒険者ゾンビを切り捨てた。
「オルケ!
地下に行くわよ!」
「は、はい!」
「おい、どこに行く!」
フォダエが急に敵に背を向けて屋敷の中に入っていく。
ドゥゼアたちも顔を見合わせたがとりあえずフォダエを追いかけることにした。
「ピュアン、コイチャ!」
「コイチャ、あのゴブリンを追いかけて!」
「承知した」
周りのスケルトンが倒される中泥臭くに戦い続けていたピュアンたちもドゥゼアの後を追う。
『逃げたぞ!』
『追いかけろ!』
『くそっ、どけろ!』
リッチであるフォダエが逃げたことで冒険者たちもそちらに向かおうとした。
けれど残りのスケルトンたちが壁になるように立ちはだかって冒険者の邪魔をする。
「開きなさい!」
屋敷の1番奥の部屋。
木で彫られた魔物の木像が並んでいる部屋の真ん中でフォダエが杖で床を突いた。
すると魔法陣が浮かび上がって床板が開いて階段が現れた。
「地下まであったのか……」
デカい屋敷なのに加えて地下まである。
地盤も緩いだろうにそこに地下を作るのは楽ではなかったはずだ。
地下を降りていくとそこは実験場だった。
「これは……」
いろいろなものがあって目を引くけれど1番全員の注目を集めたのは巨大な氷の塊。
透明度の高い氷の塊の中には白い大きなトカゲのような魔物が閉じ込められていた。
ある種幻想的とも言える光景に目を奪われた。
「リザードマンよ」
「あれが?」
驚きに再び氷に目を向ける。
中に見えるのは白い姿。
リザードマンといえば黒っぽかったり、緑色っぽかったりとややくすんだような色をしているのが普通である。
しかし氷の中にいるのは全体的に白くて知っているリザードマンとは少し異なっていた。
造形的にもやや丸みが強いような印象もある。
「貴重な素体……あの子はあの白い体が原因で群れを追い出されたの……
私が拾って治療を施そうとしたのだけど長いこと持たなかったわ。
復讐、その代わりにあの子は自分の体を好きにしてもいいと言ったの」
先のリザードマンならいけそうという言葉こうしたところから出てきたのかと思った。
「……オルケ、あなたの魂をこの体に移します」
白いリザードマンを見上げながらフォダエは静かに告げた。
「えっ……」
「本当ならもっと研究を続けてあなたを人に戻してあげたかった。
でももう研究の成果を持って逃げるには間に合わない。
今あるものを全て失えば次にこのような機会が訪れるのはいつになるか分からないわ」
仮に逃げられたとしてもまた住む場所を見つけて、研究するのに良い環境を整えて物を集め、さらには研究の対象まで探していく。
それを資料も失われた中でやっていくのは楽なことではない。
今こうして得られた知識や成果を失うのはあまりにも惜しい。
そして自分を差し出した白いリザードマンを捨てていくこともフォダエには決心がつかなかった。
ならばここでこれまでの研究を活かしてしまう方がいい。
「ここを守って、研究を完成させたかったけれどあの化け物はとても止められそうにないわ。
だからせめてこの体だけでも……」
ここに来てようやくオルケはフォダエが何を目指していたのかを知った。
「ご、ご主人様……ですが」
「お願い……やるって……言って」
生の肉体を手に入れたって魔物は魔物。
他のものに殺されてしまうこともあるし、それが幸せなことなのかといえば分からない。
けれど死ぬこともなければ食も睡眠も何の楽しみもないアンデッドのままでいるよりは絶対にいい。
アンデッドは生と死の間にある歪んだ存在。
自ら死ぬこともできないのならせめて生の中にオルケを引き戻してあげたかった。
「……分かりました。
ご主人様がそう言うなら」
「ありがとう」
これを不思議な会話だとはドゥゼアは思わない。
死にたいのに死ねない気持ちはドゥゼアには分かる。
ゴブリンに転生し続けるドゥゼアはゴブリンになることが嫌で自ら命を絶とうとしたこともあった。
けれどどうしても自分じゃ死ねなかった。
だからといって冒険者を前にすると生きたいという思いが溢れ出してただ殺されるだけにもいられなくなる。
必死に逃げた先、抵抗した先なんかであればどうにか自分を納得させられるのだけど死ぬだけってことは本能なのか出来ないのである。
ただドゥゼアとフォダエたちの違いは生きているかどうか。
ドゥゼアは生きていくために日々必死になっている。
明日の食べ物さえ不安、いくら危険な場所でも寝なきゃ体は弱っていく、痛みは感じるし時には喜びだってある。
そうした刺激が少ないのがアンデッドなのだ。
いかに辛いかは想像するしかないが想像には難くない。
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