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第一章
ゴブリンと猿は蛇と戦います1
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蛇は怒りを抱えていた。
自分よりも格下の猿どもがナワバリを明け渡さず抵抗を見せたことに。
集団で必死に抵抗して自分に傷をつけてくれたことは許さない。
山を自分のナワバリとし、猿ども食らって再び力を蓄えることにしようと蛇は思っていた。
1度目でそれなりに猿にも被害を与えた。
猿どもに次に耐えられるほどの力はないだろうと蛇は動き出す。
前回は山の麓まで来ただけでキーキーうるさかった今度は静かだ。
すでにナワバリを捨てたのかもしれない。
それならそれでも好都合である。
頂上まで登ってきたが猿の姿はない。
あれだけ抵抗して見せたのにいざとなればナワバリを捨てたのかと蛇は嘲笑う。
そんな蛇の前にこれまで見たこともないものが現れた。
地面がくぼんだように掘られて穴になっている。
その穴の中に何かの液体が溜まっていた。
ドロリとして色々浮いていて、水ではなさそう。
興味を持ってその液体に顔を近づけて、少し口にしてみた。
蛇は毒に対する耐性もあるので仮に毒だったとしても大丈夫である。
その液体を飲んで蛇は驚いた。
美味いと思った。
基本的に獲物は丸呑みで何かを美味いなど思ったことはなかった。
なのにこの液体は美味い。
蛇は舌で舐めたり、あるいは顔を突っ込んで思い切りそれを飲んだりもした。
飲んでいると気持ちが良くなってきた。
頭がふわふわして怒りを抱えていたことなど忘れてきてしまった。
強い相手を倒した時のような高揚感がある。
穴の中にあった液体を飲み尽くして蛇はすっかり気分が良くなっていた。
「今だ!」
穴の底でトグロを巻いてフラフラと頭を揺らす蛇。
そこにドゥゼアの号令で一気に猿たちが襲いかかった。
もちろんナワバリを捨てるはずがない。
猿たちは蛇が来た時には少し離れてあたかも逃げ出したかのように蛇に見せていた。
そして蛇が油断した頃合いを見計らって戻ってきた。
「グオオオオッ!」
ボス猿がアラクネにも聞こえたほどの雄叫びをあげて蛇にかかっていく。
その背中にはアラクネから借りた杖をくくりつけてある。
最大限に杖を活かすためにはボス猿が杖を持っているのが1番いい。
しかし手に持っていれば壊れてしまうかもしれないし、ボス猿としても片手が塞がっていると戦いにくい。
そこで背中には紐でくくりつけたのである。
ボス猿が蛇の頭を殴りつけると蛇は耐えきれずに大きく揺れた。
続いて猿たちが襲撃する。
手には過去に倒した冒険者たちが持っていた武器がある。
猿たちの方にも冒険者はくるし戦うこともある。
そうしたものも猿たちは適当にまとめていたのを聞いたドゥゼアはそれらを活用することにした。
普段は武器など持たないのだけど今回はそんなことも言っていられない。
剣や槍を蛇に突き立てる。
鋭い痛みがあるはずなのに蛇の反応は鈍い。
「よし!
あんだけあったの全部飲み干しやがって」
ドゥゼアが考えた作戦は酔っ払わせ作戦である。
発酵してお酒の成分を含むようになる果物がこの山には生えていた。
アラクネも要求したその果物は甘味も強いが意外と含まれるお酒も強い。
ドゥゼアは猿と共に穴を掘ってそこにタネを取り除いた果物を入れていった。
その後足で果物を潰してざっくりと液体状にした。
果物を潰す過程で多くの猿が酔っ払ってしまうほどの大量の果物のお酒が出来上がった。
蛇が酒を飲んでくれるか心配であったが大好物だったようで遠慮なく飲み干してくれた。
酔っ払った蛇は頭も正常に働いておらず完全に猿に押されている。
「このまま倒せればいいけど……」
かじりついたり武器で攻撃したり猿たちは猛烈な勢いで蛇に攻撃している。
「やるウキー!」
猿リーダーは大きな剣で蛇の体を切り付けている。
「やっちゃえー!」
ドゥゼアたちは少し離れて応援する。
流石に猿と同列には戦えない。
「あっ!」
ぼんやりとしていた頭に急に血が上った。
蛇のしなやかな体が高速で動いてボス猿が尻尾で跳ね飛ばされた。
やはり蛇もそのまま倒されてくれるほど甘くはなかった。
穴から蛇が飛び出してシャーと大きく鳴いた。
暴れ始める蛇。
だけど酔っ払っている影響か狙いが雑で素早い猿たちに攻撃は当たっていない。
戦いの危険度は大きく増したが依然として優位には戦えている。
「点火!」
ドゥゼアが用意していた作戦はお酒だけではない。
穴の周りには枯れ枝などを集めた焚き火がいくつも用意されていた。
猿たちやドゥゼアはその焚き火に一斉に火をつける。
「あぶな!」
ドゥゼアが火をつけた焚き火に蛇の尾が振り下ろされた。
「戦えー!」
ぶっ飛ばされたボス猿が復帰して再び蛇に襲いかかる。
蛇は大きく混乱してまた焚き火に尾を振り下ろした。
「ふん、マヌケめ」
蛇の目は通常のものとは違っていて温度を感知している。
そのことを知っていたドゥゼアはその特性を逆手に取るにことにした。
枝やなんかを集めて猿ぐらいの大きさになるぐらいに積み重ねた。
そしてそれに火をつけた。
普段なら騙されることもないのかもしれないが酒で酔っ払い、縦横無尽に襲いかかってくる猿たちの中にいたのなら蛇の目には燃える焚き火は動かない猿のようにも映った。
ほんの少しでも冷静になれば分かるだろうけどもはやそんな判断力も残されていなかった。
自分よりも格下の猿どもがナワバリを明け渡さず抵抗を見せたことに。
集団で必死に抵抗して自分に傷をつけてくれたことは許さない。
山を自分のナワバリとし、猿ども食らって再び力を蓄えることにしようと蛇は思っていた。
1度目でそれなりに猿にも被害を与えた。
猿どもに次に耐えられるほどの力はないだろうと蛇は動き出す。
前回は山の麓まで来ただけでキーキーうるさかった今度は静かだ。
すでにナワバリを捨てたのかもしれない。
それならそれでも好都合である。
頂上まで登ってきたが猿の姿はない。
あれだけ抵抗して見せたのにいざとなればナワバリを捨てたのかと蛇は嘲笑う。
そんな蛇の前にこれまで見たこともないものが現れた。
地面がくぼんだように掘られて穴になっている。
その穴の中に何かの液体が溜まっていた。
ドロリとして色々浮いていて、水ではなさそう。
興味を持ってその液体に顔を近づけて、少し口にしてみた。
蛇は毒に対する耐性もあるので仮に毒だったとしても大丈夫である。
その液体を飲んで蛇は驚いた。
美味いと思った。
基本的に獲物は丸呑みで何かを美味いなど思ったことはなかった。
なのにこの液体は美味い。
蛇は舌で舐めたり、あるいは顔を突っ込んで思い切りそれを飲んだりもした。
飲んでいると気持ちが良くなってきた。
頭がふわふわして怒りを抱えていたことなど忘れてきてしまった。
強い相手を倒した時のような高揚感がある。
穴の中にあった液体を飲み尽くして蛇はすっかり気分が良くなっていた。
「今だ!」
穴の底でトグロを巻いてフラフラと頭を揺らす蛇。
そこにドゥゼアの号令で一気に猿たちが襲いかかった。
もちろんナワバリを捨てるはずがない。
猿たちは蛇が来た時には少し離れてあたかも逃げ出したかのように蛇に見せていた。
そして蛇が油断した頃合いを見計らって戻ってきた。
「グオオオオッ!」
ボス猿がアラクネにも聞こえたほどの雄叫びをあげて蛇にかかっていく。
その背中にはアラクネから借りた杖をくくりつけてある。
最大限に杖を活かすためにはボス猿が杖を持っているのが1番いい。
しかし手に持っていれば壊れてしまうかもしれないし、ボス猿としても片手が塞がっていると戦いにくい。
そこで背中には紐でくくりつけたのである。
ボス猿が蛇の頭を殴りつけると蛇は耐えきれずに大きく揺れた。
続いて猿たちが襲撃する。
手には過去に倒した冒険者たちが持っていた武器がある。
猿たちの方にも冒険者はくるし戦うこともある。
そうしたものも猿たちは適当にまとめていたのを聞いたドゥゼアはそれらを活用することにした。
普段は武器など持たないのだけど今回はそんなことも言っていられない。
剣や槍を蛇に突き立てる。
鋭い痛みがあるはずなのに蛇の反応は鈍い。
「よし!
あんだけあったの全部飲み干しやがって」
ドゥゼアが考えた作戦は酔っ払わせ作戦である。
発酵してお酒の成分を含むようになる果物がこの山には生えていた。
アラクネも要求したその果物は甘味も強いが意外と含まれるお酒も強い。
ドゥゼアは猿と共に穴を掘ってそこにタネを取り除いた果物を入れていった。
その後足で果物を潰してざっくりと液体状にした。
果物を潰す過程で多くの猿が酔っ払ってしまうほどの大量の果物のお酒が出来上がった。
蛇が酒を飲んでくれるか心配であったが大好物だったようで遠慮なく飲み干してくれた。
酔っ払った蛇は頭も正常に働いておらず完全に猿に押されている。
「このまま倒せればいいけど……」
かじりついたり武器で攻撃したり猿たちは猛烈な勢いで蛇に攻撃している。
「やるウキー!」
猿リーダーは大きな剣で蛇の体を切り付けている。
「やっちゃえー!」
ドゥゼアたちは少し離れて応援する。
流石に猿と同列には戦えない。
「あっ!」
ぼんやりとしていた頭に急に血が上った。
蛇のしなやかな体が高速で動いてボス猿が尻尾で跳ね飛ばされた。
やはり蛇もそのまま倒されてくれるほど甘くはなかった。
穴から蛇が飛び出してシャーと大きく鳴いた。
暴れ始める蛇。
だけど酔っ払っている影響か狙いが雑で素早い猿たちに攻撃は当たっていない。
戦いの危険度は大きく増したが依然として優位には戦えている。
「点火!」
ドゥゼアが用意していた作戦はお酒だけではない。
穴の周りには枯れ枝などを集めた焚き火がいくつも用意されていた。
猿たちやドゥゼアはその焚き火に一斉に火をつける。
「あぶな!」
ドゥゼアが火をつけた焚き火に蛇の尾が振り下ろされた。
「戦えー!」
ぶっ飛ばされたボス猿が復帰して再び蛇に襲いかかる。
蛇は大きく混乱してまた焚き火に尾を振り下ろした。
「ふん、マヌケめ」
蛇の目は通常のものとは違っていて温度を感知している。
そのことを知っていたドゥゼアはその特性を逆手に取るにことにした。
枝やなんかを集めて猿ぐらいの大きさになるぐらいに積み重ねた。
そしてそれに火をつけた。
普段なら騙されることもないのかもしれないが酒で酔っ払い、縦横無尽に襲いかかってくる猿たちの中にいたのなら蛇の目には燃える焚き火は動かない猿のようにも映った。
ほんの少しでも冷静になれば分かるだろうけどもはやそんな判断力も残されていなかった。
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