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第一章

ゴブリンは戦いに備えます2

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 次に少しでも戦いを有利に進める方法を考えたいのだけどドゥゼアとて万能ではない。
 ウルフとは勝手が違うしどうしたらいいのか良い考えも浮かんでこない。

 相手は巨大な蛇で1体だけなのらしいが逆に1体で猿たちを相手取るほどの強さがあるということだ。
 デカければデカいほど罠を作ろうと思うと大変になる。

 猿たちも能力は高い方であるが猿たちの知識や器用さでは巨大な罠を蛇に見抜かれないように作れるかは疑問である。
 せめて何か道具があればよかったのだけど蛇が来るまでに間に合うのかも分からない。

「お前はよくやってくれた。

 あとは戦うだけだ」

 策を捻り出せなくて悩んでいるドゥゼアにボス猿が近寄ってきた。

「これでも食え。

 食わなきゃ力が出ない。

 これを食べると気分が良くなる」

「これは?」

「この近くに生えている木から取れる実だ。

 アラクネもこれ欲しいと言っていた」

「ああ……これが」

 ボス猿が差し出したのは黄色い皮の果物であった。
 甘い匂いがしていて受け取ってみるとずっしりとした重さがある。

 美味しそうではあるが気分が良くなるとはなんだろうと思った。

「うっ、これは!」

 一口食べて口に広がる風味で理由を察した。
 酒の味がする。

 果物の甘みも強くてわかりにくいけど後味に酒の風味が残る。
 気分が良くなるとはつまり酒に酔うということだとドゥゼアには分かった。

「どうだ?

 美味いだろう?」

 果物の味は良く、さらには久々のお酒。
 果物にむしゃぶりつくドゥゼアをボス猿は嬉しそうに見ていた。

「良いものだな」

 確かにこれがあるならここを出ていきたくないというのも納得出来るなんて考えたりする。
 意外と含まれているお酒が強いのか一個食べただけで頭の芯がぼんやりとしてくる感覚があった。

「ドゥーゼーアー!」

「のわっ!

 なんだ?」

「ドゥゼア、好き!」

「おい、ユリディカ、レビス!」

 酒には強かったと思ったのにとぼんやりしていたけどよくよく考えてみれば今はゴブリンの体だ。
 もう今日は考え事するのは無理かもしれない。

 そんな風に考えてもう一個果物をもらおうとでも思っていたら急に後ろから抱きつかれた。
 ユリディカとレビスであった。

 何事かと思ったらユリディカの吐き出した息から酒の匂いがした。
 ユリディカとレビスも猿たちから果物をもらっていた。

 不思議な味だけど美味しいので食べていたらあっという間に酔っ払ってしまった。

「ねぇ、私ってぇ、メスとして魅力ない?」

 ユリディカはスリスリとドゥゼアに鼻を擦り付けて甘える。

「そんなことはないぞ?」

 人であった時なら分からなかった感覚なのだけど魔物になってみると他種の魔物であっても魅力的であると感じることがある。
 アラクネなんかだと上半身は人だから分からなくもないのだけどそうじゃない魔物でもそう思ってしまうこともあるのだ。

 ワーウルフであるユリディカだけど可愛らしくて良いメスである。
 人であった時なら当然無理だったがゴブリンである今ならそんなに悪くないんじゃないかと思ったりもしなくない。

「私は?」

「レビスもステキだよ……」

 基本的にドゥゼアはゴブリンが好きじゃない。
 自分が転生してしまうこともあるし造形的にあまり好みではないのだ。

 だけどレビスは愛嬌がある。
 長く一緒にもいるし他のゴブリンに比べると何倍も良い女である。

 それに魔石などを食べると魔物は少し洗練されてくる。
 最初よりも少しレビスも小綺麗な感じになっていた。

「ドゥゼアはすごくカッコいいよ……」

 ユリディカとレビスに抱きつかれて身動きが取れないドゥゼア。
 段々と自分も酔いが回ってきているしちょっと危険だ。

 酔っ払うとどうしてこう魔物も判断能力を鈍らせてしまうのか。

「使えるかもしれないな……」

「何が?」

「いい作戦が思いついたんだよ」

「ドゥゼアスゴイ」

「おい……レビス」

 チュッとドゥゼアの首にレビスは口づけした。

「あっズルい!」

「ヒャッ!

 お、おい!」

 それを見てユリディカがドゥゼアの首を舐める。
 これまでやられたことがなかったから知らなかったけどこのゴブリンの体は首筋が弱いみたいで非常にゾクゾクする。

「ドゥゼア……カッコいい」

「ドゥゼア……好き」

 目がトロンとしてきたユディットとレビスは酔いに耐えきれずそのまま眠りに落ちてしまった。
 もう少し押されていたらヤバいところだった。

「モテるオスは良い」

「なかなか大変だけどな」

 ずっと隣にいたボス猿は笑っていた。

「だけどそのおかげで上手くいけば蛇を弱体化出来る作戦を思いついた」
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