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第一章
ゴブリンはワーウルフに出会いました6
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とりあえず襲いかかってこなさそうなので警戒を解いて短剣を鞘に収める。
「どうやらダンジョンはお前を外に出したくないみたいだな」
訳の分からない声がなんなのかドゥゼアにも説明する言葉を持たない。
しかしそれがダンジョンに由来する何かであって目的があってのことだろうと予想することはできる。
ダンジョンも魔物であると主張する学者もいたことをふと思い出す。
なんであれ冒険者としては攻略するだけだから興味もなかったがもう少しまともに調べてみればよかった。
何でもいいがワーウルフが疑問を抱いたり外に出ることを考え始めた瞬間に声が聞こえ始めたということはそうした考えを持たせたくない意図が透けて見える。
つまり逆説的に考えるとワーウルフがダンジョンを出られる可能性があるということだ。
「出られる……のですか?」
「多分な」
それにダンジョンがワーウルフに影響を与えているとしたらダンジョンから離れられれば殺人衝動みたいなものは無くなるかもしれない。
「分からんならやってみればいい。
ここであったのも何かの縁だから手伝ってやる」
実際のところ興味もある。
ダンジョンから生み出されて理性を持たない魔物の中でなぜか理性を持った魔物がダンジョンを離れることができるのか。
「本当ですか?」
「前を向いて生きようとするならいくらでも手を貸してやるさ」
「……あなた、変なゴブリンですね」
「チッ、言うに事欠いて変だと?」
「あふん!
そこはダメですぅ!」
「変な声出すな」
ギュッと尻尾を握るとワーウルフはピクリと体を震わせた。
「ドゥゼア、ダメ」
その様子を見ていたレビスが険しい顔をしてドゥゼアを止める。
「ダメ、エッチ」
「……これはエロいことなのか」
ワーウルフの尻尾が性感帯だなんて知る由もない。
レビスが何となく怒っているようなのでそっと尻尾から手を離しておく。
「やっぱりひどいことするつもりなんですね!」
「なんだそのひどいことって」
「知りません。
ただメスはひどいことされるかもしれないってゴーストが言ってました!」
「そのゴーストもなにもんだよ?」
「えっ?
ゴーストはゴーストですけど。
もう倒されてしまいましたし」
聞きたいのはそんなことではないが本人、というか本魔物がいないのでもう聞きようもない。
ワーウルフは無知な感じがするのにゴーストの方は変に偏った知識を持っていそうな気がした。
ゴーストの由来は人であるという説もあるし何かしら人の知識を持っているのだろうか。
しかし何にしても妙なことを吹き込んだものである。
「とりあえず出てみるか」
上手く冒険者を倒せたので短剣やお金が手に入った。
初心者用ダンジョンでは魔道具を望めるわけもないことは分かっている。
魔物がダンジョンに入っても襲われることは分かったし魔石などはそれなりに手に入った。
もう少しいたいところではあるのでワーウルフを見送ってもう少しダンジョンに潜るか考えることにしよう。
「あの~」
「何だ?」
「ええと、これは、なんというか、ちょっと……」
「こっちだって危険は避けなきゃいけないからな」
ダンジョンの出口に向けて移動を開始したドゥゼアたちであるがワーウルフを完全に解放とはいかない。
またいつ暴れ出すのか分からないために拘束を完全に解くわけにいかなったのである。
なので足の拘束は解いたけれど手は後ろに縛ったままでさらに今度は首に紐状にした皮を繋いである。
引っ張るとワーウルフの首が締まるようにしてあってまるで犬の散歩のようである。
人なら完全に犯罪者や奴隷の拘束のようでワーウルフは納得のいかなさを感じていた。
「次自由に暴れられたら殺すしかないからな」
腕で首を絞めて気絶させるなどそんな何回もやれない。
その点でこれなら首を絞めるのはやりやすい。
ゴブリンよりもワーウルフの方が強いのも悪い。
ケモノに近い能力があるので速さも力もゴブリンなんか一捻りである。
「我慢しろ。
嫌なら俺は行く」
「うぅ~!
分かりましたぁ!」
外は夜中なのかダンジョンの中に冒険者はいない。
ついでにダンジョンの魔物にも遭わない。
「ほう……?
どうやらダンジョンは俺たちを行かせるつもりがないようだな」
地下2階から地下1階に上がる階段のある部屋まできた。
そこにいたのはビッグボア。
多少デカいイノシシなのであるがゴブリンからすればガチガチに格上な敵である。
しかもこのビッグボア、ダンジョンのボスなのである。
ダンジョン魔物説がドゥゼアの中で強くなる。
ダンジョンボスを動かしてまでワーウルフを止めたいようだ。
ビッグボアはドゥゼアたちを見つけると足で地面をかいて突進の意思を見せた。
ドゥゼアが横に走るとビッグボアはドゥゼアのことを目で追いかける。
狙いはワーウルフの方ではなくドゥゼアの方である。
ビッグボアが地面を蹴って走り出す。
スモールホーンブルよりも速度が速く、ピリつくような威圧感を感じる。
ビッグボアの牙は大きくて、先は刃物に比べれば鈍そうだけど勢いのままに突き刺されると簡単に体を貫通してしまいそう。
「どうやらダンジョンはお前を外に出したくないみたいだな」
訳の分からない声がなんなのかドゥゼアにも説明する言葉を持たない。
しかしそれがダンジョンに由来する何かであって目的があってのことだろうと予想することはできる。
ダンジョンも魔物であると主張する学者もいたことをふと思い出す。
なんであれ冒険者としては攻略するだけだから興味もなかったがもう少しまともに調べてみればよかった。
何でもいいがワーウルフが疑問を抱いたり外に出ることを考え始めた瞬間に声が聞こえ始めたということはそうした考えを持たせたくない意図が透けて見える。
つまり逆説的に考えるとワーウルフがダンジョンを出られる可能性があるということだ。
「出られる……のですか?」
「多分な」
それにダンジョンがワーウルフに影響を与えているとしたらダンジョンから離れられれば殺人衝動みたいなものは無くなるかもしれない。
「分からんならやってみればいい。
ここであったのも何かの縁だから手伝ってやる」
実際のところ興味もある。
ダンジョンから生み出されて理性を持たない魔物の中でなぜか理性を持った魔物がダンジョンを離れることができるのか。
「本当ですか?」
「前を向いて生きようとするならいくらでも手を貸してやるさ」
「……あなた、変なゴブリンですね」
「チッ、言うに事欠いて変だと?」
「あふん!
そこはダメですぅ!」
「変な声出すな」
ギュッと尻尾を握るとワーウルフはピクリと体を震わせた。
「ドゥゼア、ダメ」
その様子を見ていたレビスが険しい顔をしてドゥゼアを止める。
「ダメ、エッチ」
「……これはエロいことなのか」
ワーウルフの尻尾が性感帯だなんて知る由もない。
レビスが何となく怒っているようなのでそっと尻尾から手を離しておく。
「やっぱりひどいことするつもりなんですね!」
「なんだそのひどいことって」
「知りません。
ただメスはひどいことされるかもしれないってゴーストが言ってました!」
「そのゴーストもなにもんだよ?」
「えっ?
ゴーストはゴーストですけど。
もう倒されてしまいましたし」
聞きたいのはそんなことではないが本人、というか本魔物がいないのでもう聞きようもない。
ワーウルフは無知な感じがするのにゴーストの方は変に偏った知識を持っていそうな気がした。
ゴーストの由来は人であるという説もあるし何かしら人の知識を持っているのだろうか。
しかし何にしても妙なことを吹き込んだものである。
「とりあえず出てみるか」
上手く冒険者を倒せたので短剣やお金が手に入った。
初心者用ダンジョンでは魔道具を望めるわけもないことは分かっている。
魔物がダンジョンに入っても襲われることは分かったし魔石などはそれなりに手に入った。
もう少しいたいところではあるのでワーウルフを見送ってもう少しダンジョンに潜るか考えることにしよう。
「あの~」
「何だ?」
「ええと、これは、なんというか、ちょっと……」
「こっちだって危険は避けなきゃいけないからな」
ダンジョンの出口に向けて移動を開始したドゥゼアたちであるがワーウルフを完全に解放とはいかない。
またいつ暴れ出すのか分からないために拘束を完全に解くわけにいかなったのである。
なので足の拘束は解いたけれど手は後ろに縛ったままでさらに今度は首に紐状にした皮を繋いである。
引っ張るとワーウルフの首が締まるようにしてあってまるで犬の散歩のようである。
人なら完全に犯罪者や奴隷の拘束のようでワーウルフは納得のいかなさを感じていた。
「次自由に暴れられたら殺すしかないからな」
腕で首を絞めて気絶させるなどそんな何回もやれない。
その点でこれなら首を絞めるのはやりやすい。
ゴブリンよりもワーウルフの方が強いのも悪い。
ケモノに近い能力があるので速さも力もゴブリンなんか一捻りである。
「我慢しろ。
嫌なら俺は行く」
「うぅ~!
分かりましたぁ!」
外は夜中なのかダンジョンの中に冒険者はいない。
ついでにダンジョンの魔物にも遭わない。
「ほう……?
どうやらダンジョンは俺たちを行かせるつもりがないようだな」
地下2階から地下1階に上がる階段のある部屋まできた。
そこにいたのはビッグボア。
多少デカいイノシシなのであるがゴブリンからすればガチガチに格上な敵である。
しかもこのビッグボア、ダンジョンのボスなのである。
ダンジョン魔物説がドゥゼアの中で強くなる。
ダンジョンボスを動かしてまでワーウルフを止めたいようだ。
ビッグボアはドゥゼアたちを見つけると足で地面をかいて突進の意思を見せた。
ドゥゼアが横に走るとビッグボアはドゥゼアのことを目で追いかける。
狙いはワーウルフの方ではなくドゥゼアの方である。
ビッグボアが地面を蹴って走り出す。
スモールホーンブルよりも速度が速く、ピリつくような威圧感を感じる。
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