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第一章

ゴブリンに転生しました4

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 ただ狩りもしていないので邪魔とも言い切れない。
 それにこのメスゴブリンやはり賢い。

 ドゥゼアが狩りをするつもりがないことを分かっていて食料として途中途中で虫を見つけて食べている。
 ゴブリンの中には狩りが出来るようになって得意になり、虫なんかに目を向けなくなる奴も多い。

 しかし経験もないゴブリンがすぐに狩りに成功するなんてあり得ない話だ。
 失敗してその日食べるものすらない。

 そこでまず目をつけるべきなのはこれまで食べてきた虫なのだ。
 どこに虫がいて、そして見つけたらこれまで食べてきた安全な虫であることを確認して食べるのが生きていく上で賢い生き方なのである。

 メスゴブリンはちゃんと虫を見つけて食べている。
 体格的に生きていくのは難しいと考えていたがこのまま大きな事件がなければ案外最後まで生き抜くのはこうしたゴブリンである。

「虫……食べる?」

 時間をかけて巣の周辺の地形や出てくる生物を確認した。
 平坦で起伏の少ない森でゴブリンの巣は崖の下にある洞窟を利用している。

 特に強そうな魔物は巣の周辺にいないようで比較的安全。
 狩りができそうな対象としてはビッグラットやホーンラビット、ランダックといった小型の魔物がいた。

 どの魔物だって大人しく狩られてくれるものではないがまだ狩りやすい方である。
 そして2日間メスゴブリンは飽きもせずドゥゼアに付いてきていて、ドゥゼアが何も口にしていないことも知っていた。

 巣に戻ろうとしたドゥゼアにメスゴブリンはスッと虫を差し出した。

「ふふっ、ありがとう。

 じゃあいただくよ」

 せっかくの好意だ。
 虫ならドゥゼアも容易く取れるが無下にすることもないので受け取って虫を食べる。

 白いイモムシはクリーミーで慣れてくると案外悪くない。

「そうだな……お前…………」

 ここまで言って気がついた。
 このメスゴブリンには名前がない。

 別にドゥゼアにも名前などない。
 ゴブリンには基本的に名前なんてつける習慣がない。

 特別に個体を識別する必要もなく、すぐに死んでは入れ替わるようなことも多いので名前が必要とされない。
 ドゥゼアはこのメスゴブリンを狩りをする際のパートナーにしようと思った。

 賢いので指示を出せばしっかり役割とこなしてくれるはず。
 ドゥゼアに敵対することがなく従順なのでそうした面でもパートナーにいい。

 1匹でも狩りは出来るが効率を考えると2匹でやった方が楽になる。
 そうなると個別に識別し、指示を出すためにも名前があった方がいいなと思い至る。

「お前は……レビスだ」

 ふとドゥゼアの頭に浮かんだ名前を口にした。
 はるか昔、ドゥゼアが無限ゴブリン転生に巻き込まれる前の人だった頃の記憶。

 もうその人が生きているのかも分からない。

「レ……ビス」

「そうだ。

 お前の名前はレビスだ」

「レビス……!」

「明日から狩りをする。

 レビス、手伝ってくれるか?」

「うん、手伝う!」

 笑顔になったレビスは首がちぎれそうになる程うなずいている。
 狩りが上手くいって肉が食えるようになればレビスの能力も高くなってすぐに成長するはずだ。

 巣に戻ってみると他のゴブリンたちも戻っている。
 その様相は二分している。

 狩りに成功したものと狩りに失敗したものの2つである。
 成功したものは色艶も良くなんだか自信ありげな顔をしている。

 失敗したものはげっそりとしている。
 食べられなかっただけでなく追いかけ回すことによって体力も消耗しているからだ。

 狩りに失敗しているものにはドゥゼアたちと同世代の若いゴブリンが多く、狩りを上手くやっているのはドゥゼアたちよりも先に生まれて生き残ってきたゴブリンたちが多い。
 ドゥゼアは適当に空いている場所を見つけて腰掛ける。

 レビスはその隣にちょこんと座る。

「早く寝ておけ。

 明日は早いぞ」

「分かった」

 焦るわけではないが早めに力をつけなきゃいけない。
 そうドゥゼアは思って硬い地面に寝転がって目をつぶった。
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