上 下
73 / 366
第二章

闇のオークション5

しおりを挟む
 盾を使わず肉体で攻撃を受けるなんて異常なタンクもいるけれどスキルなどがある以上その方が効率が良いこともあるのかもしれない。
 そしてふと思い出したのは八重樫工房には盾は少なかった事。

 あのような大型のタンク用の盾だけでなく小型のアタッカーも使えるような盾もあまりなかったなと気がついたのだ。
 需要の面では人気が少ない部類ではある。

 そもそもモンスターの方が力が強いので受けるよりもかわした方がいいとの考えも根強いからだ。
 作り手にも得手不得手がある。

 盾はあまり作るのが得意ではないのかもしれない。
 圭はオークションで得たお金で八重樫工房の借金を肩代わりしてカレンを味方に引き入れるつもりだった。

 結局お金を盾にして交渉することになるので心が痛むところはある。
 でも圭の真実の目を自分の能力で守れるまで世間に広く知られるのは危険である。

 秘密をバラさないだろうという保証が欲しかったのである。
 もしカレンにその気がないのなら八重樫工房には専用装備でも作ってもらうつもりだ。

 この先も覚醒者としてレベルアップしてやっていくなら装備の更新は必要になるから無駄になる事はない。

『イスギスの盾
 エスギスの妹であるイスギスによって作られた大型の盾。
 □□□□□□で起きた真魔大戦の時にエスギスが使用していた。
 使用者に守護の力を与え魔を払うがエスギスがイスギスの裏切りにあって盾の力も封印されてしまった。
 神が作りし武器であり品質は非常に高く魔力の流れや魔法の発動を補助してくれる。 
 魔力伝送率が高く使用時に体力と筋力に補正を得られる。

 適性魔力等級:D(封印時)
 必要魔力等級:G(封印時)』

「はぁっ?」

「何かあった?」

 真実の目で見たものは他の人には見えていないということを忘れがちになる。
 驚きで声が出てかなみが不思議そうな顔をする。

 神が作った武器とは。
 文字通りの意味なのかもしれないがこのことをそのまま受け取ると色々な疑問やらが噴き出してくる。

 神が存在している。
 宗教的な信仰の話ではなく神が実在していると説明通りに受け取るとなってしまうのだ。

 こんな世の中なのだから神が存在していてもおかしくないが驚きの事実であることに変わりはない。
 さらには神様が作っただなんて信じ難い話である。

 その上封印状態にもある。
 圭が盾の情報を眺めていると入札が始まった。

 スタートは100万円。
 10万円単位で入札額が増えていく。

 けれど見たところ入札に参加している人もそんなに多くはない。

「……コール、350万」

 圭は少し後ろを振り返ってオークションの係員に伝える。
 オークションの係員が無線を通じて司会に圭のコールを伝える。

「コール、350万円! ……350、他にいませんか? …………7番のお客様、350万円でご落札です!」

 少し値段を跳ね上げただけでもう入札は無くなった。
 オークション前の圭なら350万円でもかなりの大金であるが、今はそれぐらいならポンと出せる。

「ふぅーん? 意外なものを買うのね?」

 かなみが興味深そうに目を細めて圭を見た。
 どう見ても圭が使うようには見えなかった。

 とすれば誰か他の人のためのもの。
 個人で覚醒者を雇っているのか、あるいは知り合いか。

 盾も見ただけでは価値が分かりにくいのに圭は一本釣りで落札した。
 かなみは興味深そうに圭の目を覗き込む。

「あの盾に何かあるのかな?」

「ええ、とんでもない秘密が」

「……んー、本当かしら?」

 笑顔で真っ直ぐ返されては逆に分からない。
 圭の言葉は本当なのだけど圭以外には誰にも知られることのない秘密が盾にはある。

 その後かなみは魔力を増幅してくれるというアーティファクトを落札し、オークションは何事もなく終わった。
 是非とも今度は仮面がない状態で会いたいなんてかなみは言っていたけれど外の世界に出ればきっと会うこともない。

 かなみが圭に気づくこともないだろうと思った。

「無事ご出品なされました商品の落札おめでとうございます。今回ジェイ様がご出品なされた商品の落札価格は2億8500万円。手数料はいただかないことになっておりますのでこのままの金額がジェイ様がお受け取りになられる金額となります」

「おお……」

 流石に額が大きくて現実味がない。

「いかがなさいますか。お受け取りは現金、銀行振込、後は当方に預けていくこともできます」

「こちらに預けられるのですか?」

「はい。カードとご通帳も用意させていただきまして、銀行と変わりがなくお預かりさせていただきます。ただ御出金なされたい時にはブラックマーケットを訪れていただく必要はございますが。
 ですが銀行よりもきちんとお金の管理はさせていただきます。他にバレることもございません。次回のオークションでもお預けいただいた預金からお支払いもいたせます」

「…………じゃあここに預けます」

「ありがとうございます」

 どの道使わない分まで含めた大金を持ち歩くことなど危険だし普通の銀行に入金されればきっと目をつけられる。
 普通にお金を持っていく選択肢は難しいところがある。

「ええと一部引き出していきたいんですが」

「もちろんジェイ様のお金ですから御出金なさっても大丈夫です」

「じゃあ、お願いします」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です

途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。  ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。  前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。  ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——  一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——  ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。  色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから! ※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください ※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

異世界で作ろう!夢の快適空間in亜空間ワールド

風と空
ファンタジー
並行して存在する異世界と地球が衝突した!創造神の計らいで一瞬の揺らぎで収まった筈なのに、運悪く巻き込まれた男が一人存在した。 「俺何でここに……?」「え?身体小さくなってるし、なんだコレ……?[亜空間ワールド]って……?」 身体が若返った男が異世界を冒険しつつ、亜空間ワールドを育てるほのぼのストーリー。時折戦闘描写あり。亜空間ホテルに続き、亜空間シリーズとして書かせて頂いています。採取や冒険、旅行に成長物がお好きな方は是非お寄りになってみてください。 毎日更新(予定)の為、感想欄の返信はかなり遅いか無いかもしれない事をご了承下さい。 また更新時間は不定期です。 カクヨム、小説家になろうにも同時更新中

処理中です...