52 / 97
052:キーくぅん
しおりを挟む
「って火ノ神の近くまで来たものの、何もできん。おとりすらもできない状況なんだけど……。ディオスダードがいてくれなかったらどうなってたことやら……」
ディオスダードを助けるために戻ってきたキンタロウだったが燃えるジャングルの前で何もできないでいた。
「それに俺のパーカー丸焦げじゃんかよ。お気に入りの勇者ウサッギーパーカーなのに、くそッ」
勇者ウサッギーというボドゲのキャラクターが描かれているパーカーを落ち込んだ様子で見つめるキンタロウ。
着ることも可能だが背中の部分が焦げて穴も開いているので腰に巻くことにした。
パーカーを腰に巻いて結んでいる時、キンタロウの耳に火ノ神とは違う翼の音が届いた。
「2匹目!? ってこれさっきもやったな……」
キンタロウの後ろに着地したのは白鳥に変身しているソラだった。
「キーくぅん今戻ったよ~ん、って背中が、火傷、え、どうしたの?」
「キーくん?」
呼び方が変わっていることに首を傾げるキンタロウ。キンタロウの火傷をしている背中を見て慌てるソラ。
そんなソラは作戦会議を終えて真っ先にキンタロウの元へと飛んできたのだ。
「そのハーピィのスキルって筋力とかも増したりする? 筋肉男と小さな女の子を運べたりする?」
慌てているソラに向かってキンタロウが真っ先に口を開き質問を重ねる。
「は、はい! アタシのこの白鳥……じゃなくてハーピィのスキルは普段よりも力持ちになるよ。キーくぅん!」
素直に答えたソラの顔は燃えるジャングルよりも真っ赤に染まっていた。そして照れながら体をウネウネとさせている。
「だったら俺からのお願いだ。ノリとイチゴをスタート地点にまで連れてってくれ! 頼む!」
キンタロウはソラの翼を握りしめた。今度はもふらない。指と指の間に羽毛が入り込みもふりたい衝動に駆られるがキンタロウはもふらなかった。
なぜなら仲間を助けたいという意志の方が勝っているからだ。このままではスタート地点に戻っても火ノ神にやかれて死んでしまう。だから少しでも早く全員がスタート地点に戻らなくてはいけない。そのためにもソラの力が必要なのだ。
「未来の旦那のためなら、アタシはどこまでも飛びます。うへうへうへ」
「あっちの方、走ってると思うから頼んだ!」
ニヤけ顔のソラだったがキンタロウが手を離した瞬間にしょんぼりとした顔に豹変する。そして手を離したキンタロウはノリとイチゴが走ってるであろう方角を指差す。未来の旦那という言葉は完全に無視、否、気付いていなかった。
ソラはキンタロウの頼みを全力で応えるべく翼を大きく広げ低空飛行でキンタロウが指を差した方へ飛んで行った。
器用にハートの形を描きながら飛んでいる。煙などがあればハートの形が浮かび上がっていただろう。
そしてソラは「キーくぅん! キーくぅん!」と叫びながら目をハートにさせているのだった。
その飛び去る速さに「モグラよりも速ぇえ」と感動するキンタロウだった。
その後、キンタロウの耳にまた別の声が届く。
「キンちゃーん、ふぇはぇぁ……結構離れてて驚きました、はぁはぁ……」
その声の持ち主はモリゾウだった。息を切らし走ってきている。
「作戦通りに、っ、はぁ、いったみたいですね、はぁ……よ、よかったです」
「作戦? ソラ何も言ってなかったぞ、あ、いや、キークンって変な言葉唱えてた」
「えぇえええ、ソラさんしっかりしてくださいよー! キンちゃんに作戦を伝えに行ったんじゃないんですか……」
モリゾウとの作戦会議が終わった瞬間に作戦をキンタロウに真っ先に伝えに行ったソラだったが、キンタロウを目の前にした途端、作戦を伝えるのを忘れていたらしい。そんなここにいない鳥女にモリゾウは呆れた様子で文句を言った。
「それで、ソラさんはどこに行ったんですか?」
「ああ、俺がノリとイチゴのところに行くように言っちゃったけど作戦に支障はない?」
キンタロウはとっさにソラに頼み事をしてしまったのを後悔した。この頼み事で作戦に支障が出てしまえば全員の命に関わるかもしれない。もう少し慎重に行動すべきだと拳を強く握りしめて反省している。
そんなキンタロウにモリゾウはため息を吐き安心した表情に戻った。
「まったく、作戦通りってのが腑に落ちないですね!」
モリゾウはそのまま頭を搔いた。
「マジか、それならよかった。そんで俺たちはどうすんの?」
「まずはソラさんの考えた作戦を聞いてください。1回しか言わないんでちゃんと覚えてくださいよ」
「う、ういっす……」
モリゾウは人差し指をピーンと立たせながら言った。その姿に怯むキンタロウだった。
ディオスダードを助けるために戻ってきたキンタロウだったが燃えるジャングルの前で何もできないでいた。
「それに俺のパーカー丸焦げじゃんかよ。お気に入りの勇者ウサッギーパーカーなのに、くそッ」
勇者ウサッギーというボドゲのキャラクターが描かれているパーカーを落ち込んだ様子で見つめるキンタロウ。
着ることも可能だが背中の部分が焦げて穴も開いているので腰に巻くことにした。
パーカーを腰に巻いて結んでいる時、キンタロウの耳に火ノ神とは違う翼の音が届いた。
「2匹目!? ってこれさっきもやったな……」
キンタロウの後ろに着地したのは白鳥に変身しているソラだった。
「キーくぅん今戻ったよ~ん、って背中が、火傷、え、どうしたの?」
「キーくん?」
呼び方が変わっていることに首を傾げるキンタロウ。キンタロウの火傷をしている背中を見て慌てるソラ。
そんなソラは作戦会議を終えて真っ先にキンタロウの元へと飛んできたのだ。
「そのハーピィのスキルって筋力とかも増したりする? 筋肉男と小さな女の子を運べたりする?」
慌てているソラに向かってキンタロウが真っ先に口を開き質問を重ねる。
「は、はい! アタシのこの白鳥……じゃなくてハーピィのスキルは普段よりも力持ちになるよ。キーくぅん!」
素直に答えたソラの顔は燃えるジャングルよりも真っ赤に染まっていた。そして照れながら体をウネウネとさせている。
「だったら俺からのお願いだ。ノリとイチゴをスタート地点にまで連れてってくれ! 頼む!」
キンタロウはソラの翼を握りしめた。今度はもふらない。指と指の間に羽毛が入り込みもふりたい衝動に駆られるがキンタロウはもふらなかった。
なぜなら仲間を助けたいという意志の方が勝っているからだ。このままではスタート地点に戻っても火ノ神にやかれて死んでしまう。だから少しでも早く全員がスタート地点に戻らなくてはいけない。そのためにもソラの力が必要なのだ。
「未来の旦那のためなら、アタシはどこまでも飛びます。うへうへうへ」
「あっちの方、走ってると思うから頼んだ!」
ニヤけ顔のソラだったがキンタロウが手を離した瞬間にしょんぼりとした顔に豹変する。そして手を離したキンタロウはノリとイチゴが走ってるであろう方角を指差す。未来の旦那という言葉は完全に無視、否、気付いていなかった。
ソラはキンタロウの頼みを全力で応えるべく翼を大きく広げ低空飛行でキンタロウが指を差した方へ飛んで行った。
器用にハートの形を描きながら飛んでいる。煙などがあればハートの形が浮かび上がっていただろう。
そしてソラは「キーくぅん! キーくぅん!」と叫びながら目をハートにさせているのだった。
その飛び去る速さに「モグラよりも速ぇえ」と感動するキンタロウだった。
その後、キンタロウの耳にまた別の声が届く。
「キンちゃーん、ふぇはぇぁ……結構離れてて驚きました、はぁはぁ……」
その声の持ち主はモリゾウだった。息を切らし走ってきている。
「作戦通りに、っ、はぁ、いったみたいですね、はぁ……よ、よかったです」
「作戦? ソラ何も言ってなかったぞ、あ、いや、キークンって変な言葉唱えてた」
「えぇえええ、ソラさんしっかりしてくださいよー! キンちゃんに作戦を伝えに行ったんじゃないんですか……」
モリゾウとの作戦会議が終わった瞬間に作戦をキンタロウに真っ先に伝えに行ったソラだったが、キンタロウを目の前にした途端、作戦を伝えるのを忘れていたらしい。そんなここにいない鳥女にモリゾウは呆れた様子で文句を言った。
「それで、ソラさんはどこに行ったんですか?」
「ああ、俺がノリとイチゴのところに行くように言っちゃったけど作戦に支障はない?」
キンタロウはとっさにソラに頼み事をしてしまったのを後悔した。この頼み事で作戦に支障が出てしまえば全員の命に関わるかもしれない。もう少し慎重に行動すべきだと拳を強く握りしめて反省している。
そんなキンタロウにモリゾウはため息を吐き安心した表情に戻った。
「まったく、作戦通りってのが腑に落ちないですね!」
モリゾウはそのまま頭を搔いた。
「マジか、それならよかった。そんで俺たちはどうすんの?」
「まずはソラさんの考えた作戦を聞いてください。1回しか言わないんでちゃんと覚えてくださいよ」
「う、ういっす……」
モリゾウは人差し指をピーンと立たせながら言った。その姿に怯むキンタロウだった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
基本中の基本
黒はんぺん
SF
ここは未来のテーマパーク。ギリシャ神話 を模した世界で、冒険やチャンバラを楽し めます。観光客でもある勇者は暴風雨のな か、アンドロメダ姫を救出に向かいます。
もちろんこの暴風雨も機械じかけのトリッ クなんだけど、だからといって楽じゃない ですよ。………………というお話を語るよう要請さ れ、あたしは召喚されました。あたしは違 うお話の作中人物なんですが、なんであた しが指名されたんですかね。
世界樹とハネモノ少女 第一部
流川おるたな
ファンタジー
舞台は銀河系の星の一つである「アリヒュール」。
途方もなく大昔の話しだが、アリヒュールの世界は一本の大樹、つまり「世界樹」によって成り立っていた。
この世界樹にはいつからか意思が芽生え、世界がある程度成長して安定期を迎えると、自ら地上を離れ天空から世界を見守る守護者となる。
もちろん安定期とはいえ、この世界に存在する生命体の紛争は数えきれないほど起こった。
その安定期が5000年ほど経過した頃、世界樹は突如として、世界を崩壊させる者が現れる予兆を感じ取る。
世界を守るため、世界樹は7つの実を宿し世界各地に落としていった。
やがて落とされた実から人の姿をした赤子が生まれ成長していく。
世界樹の子供達の中には、他の6人と比べて明らかにハネモノ(規格外)の子供がいたのである。
これは世界樹の特別な子であるハネモノ少女の成長と冒険を描いた壮大な物語。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
ベル・エポック
しんたろう
SF
この作品は自然界でこれからの自分のいい進歩の理想を考えてみました。
これからこの理想、目指してほしいですね。これから個人的通してほしい法案とかもです。
21世紀でこれからにも負けていないよさのある時代を考えてみました。
負けたほうの仕事しかない人とか奥さんもいない人の人生の人もいるから、
そうゆう人でも幸せになれる社会を考えました。
力学や科学の進歩でもない、
人間的に素晴らしい文化の、障害者とかもいない、
僕の考える、人間の要項を満たしたこれからの時代をテーマに、
負の事がない、僕の考えた21世紀やこれからの個人的に目指したい素晴らしい時代の現実でできると思う想像の理想の日常です。
約束のグリーンランドは競争も格差もない人間の向いている世界の理想。
21世紀民主ルネサンス作品とか(笑)
もうありませんがおためし投稿版のサイトで小泉総理か福田総理の頃のだいぶん前に書いた作品ですが、修正で保存もかねて載せました。
【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?
俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。
この他、
「新訳 零戦戦記」
「総統戦記」もよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる