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第5章:大戦争『悪王侵略編』
334 ロイVSスクイラル -秒殺-
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フレンムとエームを倒したロイは、目的地である鹿人族の国に到着する。
到着してからの目的は悪魔が生み出したスキルの所持者を探すこと。
そしてもう一つ、ロイの仲間であるアマゾンと合流することだ。
戦闘しているであろうアマゾンを探すのは容易い。血の臭いや殺気、気配などを辿ればいいだけ。そこにアマゾンはいるのだ。
血の臭いや殺気、気配などを辿った結果、アマゾンが死闘を繰り広げたであろう現場に到着する。
そこで小さな傭兵団団長スクイラルと副団長のモモン、団員のリリィ、そして聖騎士団玄鹿副団長のセルフ・メジカと出会うこととなる。
そして意識を失っているアマゾンの姿も。
この状況にはロイ自身も少し驚いていた。
「おや? 予想外の状況で少し驚いてるよ。やっぱり細かく未来を視るべきだったかな?」
「ロイ殿!? どうしてここへ?」
スクイラルは驚きながらもロイに問いかけてきた。
ロイはその問いかけに答えることなく飄々としながら独り言を呟く。
「大事なところだけを重点的に視るってのもダメだね。でも全部知っちゃうとさ面白味が欠けちゃうんだよな。まあいいか。実際、今こうして驚いてるのもなんだか楽しいからね。あははは」
「な、なにを言ってるのでござるか? それにその気配は……」
スクイラルの言葉を無視し続けるロイは、倒れているアマゾンの元へと歩み寄る。
そして仰向けで倒れているアマゾンの横でしゃがみ、飄々とした表情でアマゾンの傷口を見ながら口を開く。
「あらら。派手にやられちゃったね。残念っ……」
それだけ。ただそれだけを言って立ち上がった。ロイにとってアマゾンは盤上の駒としか思っていないからだ。
立ち上がったロイはそのままスクイラルたちの方へと笑顔を向ける。
その笑顔を見たスクイラルたちは、時間が止まったのかと錯覚するほどの恐怖心に襲われる。
「全員今すぐ逃げるでござる!」
ロイが敵であると確信したからこそ真っ先に出た言葉だ。
その言葉を聞いた瞬間、モモンとメジカの二人は動き出した。
メジカは全速力で駆けて、モモンはリリィを掴んで飛んだ。
「団長ぉおおおお!!!」
空から聞こえるリリィの遠ざかる声。
その声を聞いたスクイラルは心の中でモモンに感謝をする。
(ありがとう。リリィを連れてくれて)
メジカ、モモン、リリィの三人は聖騎士団玄鹿の本部に一度集まった。避難民をさらなる脅威から避難させるためだ。
どこに避難するのか。それは決まっている。鹿人族の国がダメなら友好国である兎人族の国だ。
スクイラルの逃げろという言葉は、この場からではなくこの国からという意味を含んでいたのである。
それを瞬時に読み取ったからこそ、メジカたちは行動に移せたのだ。
スクイラルは腰にかけてある鞘から短剣を抜いた。国民を兎人族の国に避難するための時間稼ぎをするつもりだ。
国王に剣を向ける傭兵団の団長。
誰がこの場面を想像したことがあるだろうか。誰一人として想像しなかった場面が今この場で起きているのだ。
「覚悟の表情ってやつかな? あはっ。面白いね」
「ロイ殿……いや、ジングウジ・ロイ。御主が――」
この時、スクイラルの脳裏である言葉が浮かび上がった。
アマゾンとの戦いの最中に何度か聞いた言葉。名称とでも呼ぶあの言葉を。
「――御主が、キングでござるか?」
「正解っ!」
ロイは己がキングであることを見事に的中されて喜んでいる。満面の笑みだ。
両腕を大きく広げて、その喜びを全身で表現していた。
ロイは笑顔のまま短剣を構えるスクイラルに向かって口を開く。
「僕はね。白き英雄と黒き者、それと幻獣の三人が厄介だと思ってるんだけどさ。実はね、あと数人同じくらい厄介だと思ってる人がいるんだよ」
ロイは折った指を立てながら、厄介だと考えている人物が何人いるのかを数え始めた。
立った指は片手だけ。途中でやめたのか全員を思い浮かべられたのかは不明だが、そのままロイは喋り続けた。
「その一人がスクイラル、キミなんだよ。正確に言えばキミの加護なんだけどね」
「なんでこんなことをするのでござるか? 大きな傭兵団の他にも朱猿と青犬も御主の味方だと聞いたでござるよ。何が目的でござるか?」
「う~ん。話してもいいけどさ。その前に一つだけ質問していい?」
ロイはスクイラルから質問をしていいかの回答を待たずに質問を始める。
それだけマイペースな性格だということだ。
「キミの加護は僕を何秒で倒せるって言ってるの?」
スクイラルの加護は相手を倒すまでの時間がカウントダウンで知らせてくれる『秒読みの加護』というものだ。
ロイは自分がどのくらいの時間で倒されるのかを知りたがっているのである。
「…………い、言わないで、ござる」
言わないのではない。言えないのだ。
もしも口に出してしまえば、覚悟が揺らいでしまいこの場から逃げ出したくなってしまうかもしれないと思ったからだ。
それだけの時間がロイを倒すためにかかってしまうのである。
その時間は桁が把握できないほど。たった一つわかることは寿命が尽きるまで戦っても倒せないということ。
下手すれば来世分と再来世分の寿命を費やしたとしても倒せないかもしれないということ。
それほどの時間をスクイラルの『秒読みの加護』が定めているのだ。
「そうか。残念。楽しみだったんだけどなぁ~。それじゃ僕も目的を話さないからね。いいよね?」
スクイラルは頷く代わりに一歩踏み出した。
目的を話さなくてもいいというのを行動で示したのだ。それが二人の戦闘開始の合図となった。
スクイラルはコマのように回転をかけながらロイに向かっていく。その勢いを利用して短剣をロイの首元に振りかざす。
「――回転馬車ォオ!!」
躊躇うことのない一閃。スクイラルの大技だ。
ここで躊躇いや迷いが生じてしまえば、それは死へと直結する。
そうなった場合、時間稼ぎすらできなくなり、誰も守れなくなってしまう。だからこその本気の一撃――本気の一閃だ。
しかしスクイラルの本気の一閃は、ロイが放出する禍々しいオーラ――呪いによって防がれてしまう。
「――なッ!?」
「攻撃自体は悪くないけど……やっぱりキミよりも加護の方に期待してたからさ。ちょっと残念な気持ちだよ」
ロイは期待外れと言った表情を浮かべながらスクイラルを吹き飛ばした。
吹き飛ばしたと言ってもロイ自身が吹き飛ばしたのではなく、スクイラルの大技を防いだ禍々しい呪いがスクイラルを吹き飛ばしたのだ。
「準備運動はもう済んでるからさ。それに高揚感も鎮めたくないんだ。だからすぐに――」
話の最中でロイはその場から姿を消した。
「――楽にしてあげる」
姿が消えたと思ったらスクイラルの目の前に現れる。瞬間移動をしたのだ。
そのままロイはスクイラルの腹部目掛けて拳を殴打する。
スクイラルは瞬間移動してきたロイに反応することができず、そのまま拳の殴打を受けることとなるが、拳の殴打を受けたとは思えないほど吹き飛ぶこととなる。
「――ガハッ!!!!!!」
まるでトラックに衝突したかのような勢いで吹き飛び続けるスクイラル。そのまま聖騎士団玄鹿の本部の外壁に激突。
激突した衝撃は凄まじく、外壁は粉々に砕ける。そのまま聖騎士団玄鹿の本部は崩壊した。
外壁に激突した瞬間のスクイラルは、内臓が口から飛び出るのではないかと思うほど大量に血を吐いていた。その後、瓦礫に埋もれたのだ。
すでにアマゾンとの死闘で貧血状態のスクイラルだ。もしここでスクイラルが死んだのなら、死因は圧死ではなく失血死だろう。
どちらにせよ助かる見込みはないということ。
聖騎士団玄鹿の本部に避難していた国民をさらに避難させた判断が、国民を巻き添えにせずに済んだ。これだけは不幸中の幸いだったのかもしれない。
「キミが万全の状態だったら、僕のただのパンチに耐えれたかもしれないねっ」
ロイは瓦礫に埋もれているスクイラルに言った。その後、踵を返す。
「あの中にいたかもしれないよね~。探さなきゃもったいない。うん。追いかけようっと!」
避難民を追いかけるつもりだ。
その避難民の中にロイが探し求めている悪魔が生み出したスキルの所持者がいるかもしれないと踏んだのだ。
「スキルを手に入れる未来は確実だし、焦ることなんて一つもない。だけど……早く欲しい!」
ロイはこの状況がとても楽しいのか鼻歌を奏でながら歩き出した。
その鼻歌は聖騎士団玄鹿の本部の崩壊していく音にかき消されるが、それを気にすることなくゆっくりと歩き続けた。
ジングウジ・ロイVSスクイラル。ロイの瞬殺によってこの戦いの幕が閉じた。
――かと思いきや、瓦礫が激しく、そして荒々しく吹き飛んだ。
「ん?」
瓦礫が吹き飛んだことが気になり振り向くロイ。
ロイの黒瞳に映った光景は、瓦礫の中心で立っている一人の人物――鼠人族の姿だった。
「あはっ! 生きてる! あの状態で!? 想像以上に丈夫だね!」
ロイは嬉しそうに鼠人族の男に――瀕死のスクイラルに声をかけた。
しかしスクイラルからは返事はなく、敵意だけが向けられていた。
「まだやる気なの? いや、違うか……」
ロイは気付く。スクイラルの意識がないことに。
スクイラルは意識を失った状態で瓦礫を吹き飛ばしてから立ち上がり、敵であるロイに敵意を向けたのだ。
仲間を守るため、避難民を逃すため。その想いが意識を失っているスクイラルを動かしたのだ。
「……残念。もう少しだけ戦ってもよかったのにな」
そう静かに呟いたロイは、再び避難民を追いかけるため踵を返そうとする。
しかしその足は止まった。
「ロイッ!!!!!」
背後から聞こえた声と感じた気配によって足を止めるしかなかったのだ。
そのままロイは声と気配がした方へと振り向く。しかしそこには誰もいない。
不思議に思ったロイは辺りを見渡そうとするが、その体は刹那の一瞬ほど言うことを聞かなかった。
(重力系の……)
その刹那の一瞬の隙に――
「喰らえやッ!!!!!!」
強烈な一撃がロイを襲った。
ロイは吹き飛んだが、吹き飛びながらもすぐに体勢を整えて着地する。
そして自分を吹き飛ばした人物を視界に捉える。
「へぇ~。キミも生きてるだなんてね」
ロイの瞳には立派なツノが生えた男が――鹿人族の男の姿が映っていた。
「セルフ・フォーン」
「ジングウジ・ロイッ、いや、キングッ!! テメェーの野望をぶっ壊させてもらうぞッ!」
聖騎士団玄鹿団長セルフ・フォーンの登場だ。
到着してからの目的は悪魔が生み出したスキルの所持者を探すこと。
そしてもう一つ、ロイの仲間であるアマゾンと合流することだ。
戦闘しているであろうアマゾンを探すのは容易い。血の臭いや殺気、気配などを辿ればいいだけ。そこにアマゾンはいるのだ。
血の臭いや殺気、気配などを辿った結果、アマゾンが死闘を繰り広げたであろう現場に到着する。
そこで小さな傭兵団団長スクイラルと副団長のモモン、団員のリリィ、そして聖騎士団玄鹿副団長のセルフ・メジカと出会うこととなる。
そして意識を失っているアマゾンの姿も。
この状況にはロイ自身も少し驚いていた。
「おや? 予想外の状況で少し驚いてるよ。やっぱり細かく未来を視るべきだったかな?」
「ロイ殿!? どうしてここへ?」
スクイラルは驚きながらもロイに問いかけてきた。
ロイはその問いかけに答えることなく飄々としながら独り言を呟く。
「大事なところだけを重点的に視るってのもダメだね。でも全部知っちゃうとさ面白味が欠けちゃうんだよな。まあいいか。実際、今こうして驚いてるのもなんだか楽しいからね。あははは」
「な、なにを言ってるのでござるか? それにその気配は……」
スクイラルの言葉を無視し続けるロイは、倒れているアマゾンの元へと歩み寄る。
そして仰向けで倒れているアマゾンの横でしゃがみ、飄々とした表情でアマゾンの傷口を見ながら口を開く。
「あらら。派手にやられちゃったね。残念っ……」
それだけ。ただそれだけを言って立ち上がった。ロイにとってアマゾンは盤上の駒としか思っていないからだ。
立ち上がったロイはそのままスクイラルたちの方へと笑顔を向ける。
その笑顔を見たスクイラルたちは、時間が止まったのかと錯覚するほどの恐怖心に襲われる。
「全員今すぐ逃げるでござる!」
ロイが敵であると確信したからこそ真っ先に出た言葉だ。
その言葉を聞いた瞬間、モモンとメジカの二人は動き出した。
メジカは全速力で駆けて、モモンはリリィを掴んで飛んだ。
「団長ぉおおおお!!!」
空から聞こえるリリィの遠ざかる声。
その声を聞いたスクイラルは心の中でモモンに感謝をする。
(ありがとう。リリィを連れてくれて)
メジカ、モモン、リリィの三人は聖騎士団玄鹿の本部に一度集まった。避難民をさらなる脅威から避難させるためだ。
どこに避難するのか。それは決まっている。鹿人族の国がダメなら友好国である兎人族の国だ。
スクイラルの逃げろという言葉は、この場からではなくこの国からという意味を含んでいたのである。
それを瞬時に読み取ったからこそ、メジカたちは行動に移せたのだ。
スクイラルは腰にかけてある鞘から短剣を抜いた。国民を兎人族の国に避難するための時間稼ぎをするつもりだ。
国王に剣を向ける傭兵団の団長。
誰がこの場面を想像したことがあるだろうか。誰一人として想像しなかった場面が今この場で起きているのだ。
「覚悟の表情ってやつかな? あはっ。面白いね」
「ロイ殿……いや、ジングウジ・ロイ。御主が――」
この時、スクイラルの脳裏である言葉が浮かび上がった。
アマゾンとの戦いの最中に何度か聞いた言葉。名称とでも呼ぶあの言葉を。
「――御主が、キングでござるか?」
「正解っ!」
ロイは己がキングであることを見事に的中されて喜んでいる。満面の笑みだ。
両腕を大きく広げて、その喜びを全身で表現していた。
ロイは笑顔のまま短剣を構えるスクイラルに向かって口を開く。
「僕はね。白き英雄と黒き者、それと幻獣の三人が厄介だと思ってるんだけどさ。実はね、あと数人同じくらい厄介だと思ってる人がいるんだよ」
ロイは折った指を立てながら、厄介だと考えている人物が何人いるのかを数え始めた。
立った指は片手だけ。途中でやめたのか全員を思い浮かべられたのかは不明だが、そのままロイは喋り続けた。
「その一人がスクイラル、キミなんだよ。正確に言えばキミの加護なんだけどね」
「なんでこんなことをするのでござるか? 大きな傭兵団の他にも朱猿と青犬も御主の味方だと聞いたでござるよ。何が目的でござるか?」
「う~ん。話してもいいけどさ。その前に一つだけ質問していい?」
ロイはスクイラルから質問をしていいかの回答を待たずに質問を始める。
それだけマイペースな性格だということだ。
「キミの加護は僕を何秒で倒せるって言ってるの?」
スクイラルの加護は相手を倒すまでの時間がカウントダウンで知らせてくれる『秒読みの加護』というものだ。
ロイは自分がどのくらいの時間で倒されるのかを知りたがっているのである。
「…………い、言わないで、ござる」
言わないのではない。言えないのだ。
もしも口に出してしまえば、覚悟が揺らいでしまいこの場から逃げ出したくなってしまうかもしれないと思ったからだ。
それだけの時間がロイを倒すためにかかってしまうのである。
その時間は桁が把握できないほど。たった一つわかることは寿命が尽きるまで戦っても倒せないということ。
下手すれば来世分と再来世分の寿命を費やしたとしても倒せないかもしれないということ。
それほどの時間をスクイラルの『秒読みの加護』が定めているのだ。
「そうか。残念。楽しみだったんだけどなぁ~。それじゃ僕も目的を話さないからね。いいよね?」
スクイラルは頷く代わりに一歩踏み出した。
目的を話さなくてもいいというのを行動で示したのだ。それが二人の戦闘開始の合図となった。
スクイラルはコマのように回転をかけながらロイに向かっていく。その勢いを利用して短剣をロイの首元に振りかざす。
「――回転馬車ォオ!!」
躊躇うことのない一閃。スクイラルの大技だ。
ここで躊躇いや迷いが生じてしまえば、それは死へと直結する。
そうなった場合、時間稼ぎすらできなくなり、誰も守れなくなってしまう。だからこその本気の一撃――本気の一閃だ。
しかしスクイラルの本気の一閃は、ロイが放出する禍々しいオーラ――呪いによって防がれてしまう。
「――なッ!?」
「攻撃自体は悪くないけど……やっぱりキミよりも加護の方に期待してたからさ。ちょっと残念な気持ちだよ」
ロイは期待外れと言った表情を浮かべながらスクイラルを吹き飛ばした。
吹き飛ばしたと言ってもロイ自身が吹き飛ばしたのではなく、スクイラルの大技を防いだ禍々しい呪いがスクイラルを吹き飛ばしたのだ。
「準備運動はもう済んでるからさ。それに高揚感も鎮めたくないんだ。だからすぐに――」
話の最中でロイはその場から姿を消した。
「――楽にしてあげる」
姿が消えたと思ったらスクイラルの目の前に現れる。瞬間移動をしたのだ。
そのままロイはスクイラルの腹部目掛けて拳を殴打する。
スクイラルは瞬間移動してきたロイに反応することができず、そのまま拳の殴打を受けることとなるが、拳の殴打を受けたとは思えないほど吹き飛ぶこととなる。
「――ガハッ!!!!!!」
まるでトラックに衝突したかのような勢いで吹き飛び続けるスクイラル。そのまま聖騎士団玄鹿の本部の外壁に激突。
激突した衝撃は凄まじく、外壁は粉々に砕ける。そのまま聖騎士団玄鹿の本部は崩壊した。
外壁に激突した瞬間のスクイラルは、内臓が口から飛び出るのではないかと思うほど大量に血を吐いていた。その後、瓦礫に埋もれたのだ。
すでにアマゾンとの死闘で貧血状態のスクイラルだ。もしここでスクイラルが死んだのなら、死因は圧死ではなく失血死だろう。
どちらにせよ助かる見込みはないということ。
聖騎士団玄鹿の本部に避難していた国民をさらに避難させた判断が、国民を巻き添えにせずに済んだ。これだけは不幸中の幸いだったのかもしれない。
「キミが万全の状態だったら、僕のただのパンチに耐えれたかもしれないねっ」
ロイは瓦礫に埋もれているスクイラルに言った。その後、踵を返す。
「あの中にいたかもしれないよね~。探さなきゃもったいない。うん。追いかけようっと!」
避難民を追いかけるつもりだ。
その避難民の中にロイが探し求めている悪魔が生み出したスキルの所持者がいるかもしれないと踏んだのだ。
「スキルを手に入れる未来は確実だし、焦ることなんて一つもない。だけど……早く欲しい!」
ロイはこの状況がとても楽しいのか鼻歌を奏でながら歩き出した。
その鼻歌は聖騎士団玄鹿の本部の崩壊していく音にかき消されるが、それを気にすることなくゆっくりと歩き続けた。
ジングウジ・ロイVSスクイラル。ロイの瞬殺によってこの戦いの幕が閉じた。
――かと思いきや、瓦礫が激しく、そして荒々しく吹き飛んだ。
「ん?」
瓦礫が吹き飛んだことが気になり振り向くロイ。
ロイの黒瞳に映った光景は、瓦礫の中心で立っている一人の人物――鼠人族の姿だった。
「あはっ! 生きてる! あの状態で!? 想像以上に丈夫だね!」
ロイは嬉しそうに鼠人族の男に――瀕死のスクイラルに声をかけた。
しかしスクイラルからは返事はなく、敵意だけが向けられていた。
「まだやる気なの? いや、違うか……」
ロイは気付く。スクイラルの意識がないことに。
スクイラルは意識を失った状態で瓦礫を吹き飛ばしてから立ち上がり、敵であるロイに敵意を向けたのだ。
仲間を守るため、避難民を逃すため。その想いが意識を失っているスクイラルを動かしたのだ。
「……残念。もう少しだけ戦ってもよかったのにな」
そう静かに呟いたロイは、再び避難民を追いかけるため踵を返そうとする。
しかしその足は止まった。
「ロイッ!!!!!」
背後から聞こえた声と感じた気配によって足を止めるしかなかったのだ。
そのままロイは声と気配がした方へと振り向く。しかしそこには誰もいない。
不思議に思ったロイは辺りを見渡そうとするが、その体は刹那の一瞬ほど言うことを聞かなかった。
(重力系の……)
その刹那の一瞬の隙に――
「喰らえやッ!!!!!!」
強烈な一撃がロイを襲った。
ロイは吹き飛んだが、吹き飛びながらもすぐに体勢を整えて着地する。
そして自分を吹き飛ばした人物を視界に捉える。
「へぇ~。キミも生きてるだなんてね」
ロイの瞳には立派なツノが生えた男が――鹿人族の男の姿が映っていた。
「セルフ・フォーン」
「ジングウジ・ロイッ、いや、キングッ!! テメェーの野望をぶっ壊させてもらうぞッ!」
聖騎士団玄鹿団長セルフ・フォーンの登場だ。
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