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第4章:恋愛『相性診断をやってみた編』

212 相性診断の結果

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 今回測定した二十二通りの相性診断の結果はこうなった。


 デールとドール:96点
 マサキとビエルネス:92点
 ルナとビエルネス:89点
 ダールとデール:89点
 ダールとドール:89点
 ネージュとクレール:88点
 ネージュとルナ:87点
 クレールとデール:86点
 クレールとドール:86点
 クレールとダール:84点
 ネージュとデール:83点
 ネージュとドール:83点
 クレールとルナ:83点
 ネージュとダール:82点
 ネージュとビエルネス:82点
 ダールとルナ:82点
 ルナとデール:81点
 ルナとドール:81点
 デールとビエルネス:81点
 ドールとビエルネス:81点
 クレールとビエルネス:80点
 ダールとビエルネス:80点


 今回測定した全員が見事に相性抜群の80点台を超えたのである。

「90点を超えたのはデールとドール、それと兄さんとビエルネスの姉さんだけッスね」

「でもみなさん80点台を超えましたよ! すごいですよ」

「すごいぞー!」

「すごーい!」
「すごーい!」

 相性診断の結果に大満足の兎人とじんちゃんたち。

「ンッンッ!」

 なんだか分からずにもふもふの体毛を抜かれていたルナも、兎人とじんちゃんたちに合わせて大きな声を漏らしていた。
 体毛を抜かれたと言っても実際は、わしゃわしゃと撫でた際に、手に付いた体毛を使っただけで無理矢理引っ張ったりはしていない。そもそもこのメンバーの中でそんなことをするのは誰一人としていない。

「私はマスターと幸せになれることが確定したので満足ですよ~ハァハァ……ルーネス本当にありがとう。本当にありがとう~!」

 ビエルネスは、この相性診断の機械を考案、制作したタイジュグループの代表、そしてビエルネスの長女であるフェ・ルーネスに遠く離れた兎人族の里ガルドマンジェから感謝の念を送っていた。

「あっ、あっ! そ、そうだった。きょ、今日、私、お仕事があるんでしたー! か、帰りらないとー!」

 感謝の念を送っていたと思ったら、突然挙動不審に焦り出すビエルネス。そんな挙動不審のビエルネスにマサキは違和感を感じたが何も言わなかった。代わりにネージュが純粋に口を開く。

「お仕事あったんですね。てっきり休みだと思ってましたよ」

「そ、そうなんですよ~。さ、最近は……そ、そう! マルテスのお手伝いもしなければいけなくて……」

「そうなんですね。マルテスさんは厳しいお姉さんでしたよね? ビエルネスちゃんお仕事頑張ってください!」

 ネージュは豊満な胸の前で小さくガッツポーズを取り、仕事へと向かおうとするビエルネスにエールを送った。

「は、はい。が、頑張ります。きょ、今日は楽しかったです。私とマスターがラブラブだということも証明できましたし」

「ラブラブはしてないぞ」

「もっと激しいのをお求めで? ハァハァ……」

 息を荒げるビエルネスにマサキは両手を挙げて降参のポーズを取った。

「お前の発想と転換にはお手上げだ。ほら、早く仕事に行け! 一番怖いお姉さんに怒られるぞ」

「そ、そうでした! で、ではまた今度会いましょー! さ、さようならー」

 ビエルネスは慌てながら、相性診断ができるタマゴ型のデバイスを回収して、天井にある妖精族専用の小さな扉へと向かい飛んでいった。そして、扉を開けて家を出て行ったのだった。

「バイバーイ」
「バイバーイ」
「バイバーイだぞー」
「ンッンッ」

 デールとドールそしてクレールは、ビエルネスの小さな背中に向かって手を振った。
 ルナは漆黒の瞳にビエルネスの姿を映して、小さく鳴いて見送ったのだった。

 家を飛び出したビエルネスは、すぐ近くの木陰に身を潜めた。そして、相性診断ができるタマゴ型のデバイスの画面を薄水色の瞳に映した。

「マスターのデータは……っと……」

 ビエルネスは、マサキたちに嘘をついていたことと、黙っていたことがある。
 まず、『嘘をついていたこと』は、仕事だということだ。今日のビエルネスは休暇を貰っている。仕事などない。ではなぜ仕事だと嘘をついたのか。それは『黙っていたこと』と繋がる。
 それは、相性診断ができるタマゴ型のデバイスに登録した人物の情報は、自動的に登録されるということ。
 つまり、繰り返し髪の毛や皮膚を専用のポケットに入れなくていいのである。そして情報の入力も不要なのだ。
 タマゴ型のデバイスに付与されている魔法の効果によって、登録されている人物の情報はリアルタイムで更新される。なので最新の情報も入力不要だ。
 ただしこれは悪用できないように制限されており、あくまで相性診断でのみ使用できるデータなのである。

「あった。これが私が愛するマスターのデータ」

 ビエルネスは再びマサキとの相性を測った。先ほどの結果が信じられないわけではない。もう一度診断結果の数値を見たくなったのである。

「ハァハァ……『92』ハァハァ……」

 ビエルネスの体温は上昇。心臓も張り裂けそうなほど鼓動を鳴らす。

「やっぱりマスターは、私の運命のマスターでした。でもせっかくだから、マスターと兎人とじん様たちの相性も診断してみましょう」

 ビエルネスは自分を含めた計七通りのマサキの相性診断を始めた。
 その診断結果は――


 マサキとネージュ:100点
 マサキとルナ:99点
 マサキとクレール:94点
 マサキとダール:92点
 マサキとビエルネス:92点
 マサキとデール:91点
 マサキとドール:91点

 マサキと測定した全員が、運命的な出会いや奇跡的な出会いに該当する90点以上を超えたのである。

「こ、これは一体……マスターは……一体何者なんですか……」

 こうも奇跡が連発に起きてしまうと動揺してしまうもの。奇跡とは何なのかすらも疑ってしまいたくなるものだ。
 そして一番ビエルネスが信じられないと驚愕しているのは、ネージュとの診断結果。マサキとネージュの『100』という診断結果の数値だ。

「こんなの奇跡の中の奇跡……もう奇跡という言葉では表せないほどの、ありえない奇跡ですよ」

 マサキしか知らないことだが、実際にマサキとネージュは奇跡的な出会いをしている。
 異世界転移して初めて出会ったのがネージュ。あの時間、あの場所、全ての巡り合わせから、異世界転移という奇跡を経て、マサキとネージュは出会ったのだ。
 だからこの数値は間違いではない。そして異世界人のマサキにとってこの世界の人物と出会うこと自体、奇跡に等しい出会いなのである。だからマサキと診断した相手は全員『90点』以上の数値が出るのだ。

 このマサキの診断結果を踏まえて、ビエルネスは思考を始める。
 マサキという人間族は何者なのか、何者にも惹かれることがなかった自分が、なぜこんなにも惹かれるのか。ありとあらゆる可能性を考慮して、セトヤ・マサキという人物が何者なのかを思考する。

(今となっては気にしてませんが、マスターの名前も人間族の名前とは少し違う感じがします。それにあの服装……ジャージでしたっけ? あれはタイジュグループでは取り扱っていない服ですし……それにネージュ様と離れられない異常なまでの精神の弱さ。そしてルナ様が異様なまでにマスターに懐いているのも気になります。それに、それに、それに…………あー、マスターは本当に謎が多いです。ミステリアスでかっこよすぎる。ハァハァ……)

 脳内でも息を荒げてしまう。そんな彼女は荒げた息を止めて、平常心を保った。
 そして木陰からマサキたちが住んでいる大樹の木を薄水色の瞳に映した。

(これは直接聞くしかありませんね)

 ビエルネスは考える。マサキと二人きりになれる時間を。

(ネージュ様とルナ様のお二人と離れる時間。その時間を狙うしか……でも、そんな時間があるんでしょうか?)

 ビエルネスはマサキとネージュとルナの一日の行動スケジュールを思考する。
 ネージュとルナがいない時間こそマサキが一人になる時間。クレールやダールを省いて考えているのは、ネージュとルナと離れているということは自動的にクレールとダールとも離れているということに繋がるからだ。
 考えるべきは家の中でも半径二メートル以内に必ずいるネージュと、側を離れようとしないルナだけでいいのである。

「ある! マスターが一人になる時間が!」

 ビエルネスは思考の中、マサキが一人になるであろう時間を見つけた。

「その時間まで待ちますよ。マスター。二人っきりでゆっくりお話ししましょう」

 奇しくもマサキが一人になる時間はこの後にある。その時間になるまで不適な笑みを浮かべるビエルネスは、マサキたちが住む大樹の木の近くに身を潜めて待機するのであった。
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