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第3章:成長『食品展示会編』
95 生命の水
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空の色と同化している小鳥の囀りが聞こえる朝。
「ただいまッスー!」
太陽のように明るく元気な声が無尽販売所イースターパーティーの店内、そしてマサキたちがいる部屋の中へと響き渡った。
その声の主はオレンジ色のボブヘアーで小さなウサ耳がちょこんと立っている兎人族の美少女ダールだ。
大きめのパーカーを羽織りショートパンツを履いている。むちむちの太ももが魅力的である。
ダールは一人で帰ってきた。
時間から考慮すると共に出かけた双子の姉妹デールとドールは家に帰らず学舎へと行ったのだろう。
兎園から学舎へと直接向かった方が効率が良いし、家へ帰る理由などほぼ無いに等しいからだ。
「さ、酒臭! な、なんなんッスか!」
直ぐに酔っ払いから溢れ出ている酒の強烈なニオイがダールの鼻腔を刺激した。
ダールは鼻をつまみながら酒のニオイがする方を黄色の瞳で見た。
「ちょ、ちょっとここで寝てもらったら困るッスよ。起きてくださいッス!」
酔っ払いを起こそうと肩を激しく揺さぶるダール。
マサキたちができなかったことをいとも容易くやってのけたのである。
すると酔っ払いは直ぐに目を覚ました。そして肩を揺さぶる美少女に向かって口を開く。
「……み、み……み……みず……水を……」
それはあまりにも弱々しい一言だった。見れば真っ赤だった顔色も今は青紫色になっている。
兎人族の酔っ払いおじいちゃんは二日酔いになってしまったのである。
「み、水ッスね! わかったッス!」
ダールは慌てながら部屋へと繋がる通路へと入った。そしてマサキたちがいる部屋へと入る。
「兄さん! 姉さん! 大変ッスよ! 酒臭いおじいちゃんが倒れてるッスよ! ってぐっすり寝てるじゃないッスか!」
マサキたちは、店内で眠る酔っ払いを気にすることなくいつも通りにぐっすり眠っていたのだった。
そしていつも通りマサキとネージュは寝相の悪さから磁石のように引き寄せ合い、お互いを抱き枕にして寝ている。
クレールは上下逆さまになって布団の中に潜っている。
そしてイングリッシュロップイヤーのルナはマサキの枕の上で箱座りしながら寝ているのであった。
そんな普段と何ら変わらない光景に、慌てているダールの声が目覚ましとなってマサキたちを起こしたのである。
「ダールか。帰ってきたのか……おはよう……」
マサキは目蓋を擦りながら起きた。あくびまでしてとても眠そうだ。
マサキに続いてネージュも目を覚ました。
「ダールお帰りなさい。それと、おはようございます」
ネージュはマサキと同じく目蓋を擦りながら眠そうにしている。
逆さまで布団の中に潜りながら寝ているクレールはまだ夢の中だ。
そんなマサキたちは、ぐっすりと眠っていたように見えるがそれはここ一時間程度のことだった。酔っ払いが店内で寝ているということを気にしてしまい寝付きはかなり悪かったのである。
朝まで寝付けずに体力を消耗していたからこそ深い眠りに誘われて一時間前にぐっすりと眠りにつけたのである。
そして酔っ払いに対して直ぐに対応できるように布団の中にいるマサキたちは寝間着を着ていない。いつもの服装で布団の中に潜っていたのである。
さらに電気もつけっぱなしだ。寝ようにも寝れない環境だったのである。
「おはようございますッス! って呑気にしてる場合じゃないッスよ! お店の中に酔っ払いがいるッスよ! そ、そうだ! 水!」
ダールは慌てながらキッチンへと向かった。二日酔い状態の酔っ払いに水を飲ませるためだ。
「い、急がないと……」
ダールは手に取ったコップに新鮮な湧き水を入れて走り出した。
二日酔いであることは間違いないが高齢の兎人族が顔色を悪くして横になっているのを見たのだ。一刻を争う状態だと思ってしまうだろう。
だからこそダールは急いで水を持って行ったのである。
急ぐダールを見たマサキとネージュは状況を確認するために覗き穴から店内を覗く。
マサキの黒瞳とネージュの青く澄んだ瞳にはダールが酔っ払いのおじいちゃんに水を渡す姿が映った。
「水を持ってきたッス! 飲むッスよ!」
「おおぅ……ごくっごくごくっ」
酔っ払いのおじいちゃんはダールから受け取った水を勢いよく飲み干した。
「くあぁああ! 生き返ったわい! これぞ生命の水じゃ」
体が求めていた水分が体内に入り循環し酔っ払いのおじいちゃんは生き返る。そして勢いよく飲み干した水は少しばかり口から滴ったが乱暴に拭き取り服の袖を濡らした。
生き返ったおじいちゃんを見て慌てながら水を渡したダールが安堵する。
「元気になって良かったッスよ」
「美味しい水をありがとう。ごちそうさん。おかげでまだまだ長生きできそうじゃ! ハッハッハッハ!」
陽気に笑う兎人族のおじいちゃん。
壁の向こうでは生き返ったおじいちゃんを見てマサキとネージュも安堵していた。
「二日酔いで苦しんでたのか……」
「私たち気付きませんでしたね。ダールが帰ってきて本当に良かったですよ」
「だよな。急性アルコール中毒の症状じゃなくて本当に良かったわ……救急車とか呼び方わからないし本当に助かったよ」
「キュウキュウシャ?」
「あっ、こっちだとそういうことは聖騎士団の役目か。大変だな……」
マサキは聖騎士団白兎の団長の真っ白な兎人族の顔を思い浮かべていた。女性として優雅で美しく、聖騎士団として誇り高くかっこいいアンブル・ブランシュの顔を。
「ってそんなことよりも心配だから俺たちも行くか」
「そうですね。見た感じ酔いが覚めた感じもしますし換気のためにも行きましょう」
マサキとネージュはノールックで手を繋いだ。そして打ち合わせもなしに同時に一歩踏み出し二人三脚のように同じリズムで歩き出す。
そのまま通路に入りカーテンから顔だけをひょっこりと出した。
「ダールダール」
マサキはダールを呼ぶ。その声に気付いたダールは通路を隠しているカーテンの方へと顔を向けた。
「そのおじいちゃん大丈夫か?」
「大丈夫みたいッスよ。水飲んで元気になったみたいッス!」
鼻をつまみながら話すダールは鼻声で答えた。
「良かった。そんじゃネージュやるぞ」
「はい!」
マサキとネージュはカーテンから店内へと飛び出した。そして息の合った動きで扉と小窓を素早く開ける。酒のニオイが充満した店内を換気するためだ。
そんなコンビネーション抜群の二人を見た兎人族のおじいちゃんは「おおおぉ~」と感心していた。
スタッ
なぜかマサキとネージュは決めポーズを取った。互いの体重で引っ張り合う組体操のようなポーズだ。
その後、店内に残っている酒のニオイに鼻腔が刺激されてしまい、開いている方の手で鼻を摘んだ。手を繋いでいることから二人は両手が塞がってしまう。
「開けたばかりだもんなまだニオイは消えないよな……」
「そうですね。このまま部屋に戻りましょう。無意識に変なポーズをとってしまい恥ずかしいです……」
マサキとネージュはすたすたと歩き部屋へと戻ろうとした。
その時、おじいちゃんは何かを思い出したかのように声を出した。
「おー!! そうじゃったそうじゃった!」
その声にビクッと反応したマサキとネージュは通路を隠すカーテンに隠れた。そして小刻みに震えながら声を上げたおじいちゃんを見る。
「ガガガッガガガガガッガガガガガッガガガガガッガガ……」
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……」
小刻みに震える二人の振動がカーテンにも伝わり激しく揺れている。
そんな二人を見て兎人族のおじいちゃんは再び口を開いた。
「ここに来た理由を思い出したわい!」
難易度が高い謎解きを正解したかのようにスッキリとした表情で兎人族のおじいちゃんは言った。
無人販売所イースターパーティーに来る理由など限られている。商品を購入するために来たのか、無人販売所という未知の販売店が気になり見物しに来たのかのどちらかだろう。
例外として店の調査やマサキたちに用事があり訪れる可能性もある。
しかし兎人族のおじいちゃんの姿を見ればわかるが、調査員でもなければマサキたちが知る人物でもない。なので後者の例外には該当しない可能性が高い。
兎人族のおじいちゃんはスッキリした表情のまま言葉を続けた。
「えー、セトヤ……えーっと……セトヤ……んー、セトヤマサキ……そうじゃ。セトヤ・マサキという人間族の青年とフロコンちゃんの孫のネージュちゃんに用があったんじゃった!」
それは例外に該当する言葉だった。
「ただいまッスー!」
太陽のように明るく元気な声が無尽販売所イースターパーティーの店内、そしてマサキたちがいる部屋の中へと響き渡った。
その声の主はオレンジ色のボブヘアーで小さなウサ耳がちょこんと立っている兎人族の美少女ダールだ。
大きめのパーカーを羽織りショートパンツを履いている。むちむちの太ももが魅力的である。
ダールは一人で帰ってきた。
時間から考慮すると共に出かけた双子の姉妹デールとドールは家に帰らず学舎へと行ったのだろう。
兎園から学舎へと直接向かった方が効率が良いし、家へ帰る理由などほぼ無いに等しいからだ。
「さ、酒臭! な、なんなんッスか!」
直ぐに酔っ払いから溢れ出ている酒の強烈なニオイがダールの鼻腔を刺激した。
ダールは鼻をつまみながら酒のニオイがする方を黄色の瞳で見た。
「ちょ、ちょっとここで寝てもらったら困るッスよ。起きてくださいッス!」
酔っ払いを起こそうと肩を激しく揺さぶるダール。
マサキたちができなかったことをいとも容易くやってのけたのである。
すると酔っ払いは直ぐに目を覚ました。そして肩を揺さぶる美少女に向かって口を開く。
「……み、み……み……みず……水を……」
それはあまりにも弱々しい一言だった。見れば真っ赤だった顔色も今は青紫色になっている。
兎人族の酔っ払いおじいちゃんは二日酔いになってしまったのである。
「み、水ッスね! わかったッス!」
ダールは慌てながら部屋へと繋がる通路へと入った。そしてマサキたちがいる部屋へと入る。
「兄さん! 姉さん! 大変ッスよ! 酒臭いおじいちゃんが倒れてるッスよ! ってぐっすり寝てるじゃないッスか!」
マサキたちは、店内で眠る酔っ払いを気にすることなくいつも通りにぐっすり眠っていたのだった。
そしていつも通りマサキとネージュは寝相の悪さから磁石のように引き寄せ合い、お互いを抱き枕にして寝ている。
クレールは上下逆さまになって布団の中に潜っている。
そしてイングリッシュロップイヤーのルナはマサキの枕の上で箱座りしながら寝ているのであった。
そんな普段と何ら変わらない光景に、慌てているダールの声が目覚ましとなってマサキたちを起こしたのである。
「ダールか。帰ってきたのか……おはよう……」
マサキは目蓋を擦りながら起きた。あくびまでしてとても眠そうだ。
マサキに続いてネージュも目を覚ました。
「ダールお帰りなさい。それと、おはようございます」
ネージュはマサキと同じく目蓋を擦りながら眠そうにしている。
逆さまで布団の中に潜りながら寝ているクレールはまだ夢の中だ。
そんなマサキたちは、ぐっすりと眠っていたように見えるがそれはここ一時間程度のことだった。酔っ払いが店内で寝ているということを気にしてしまい寝付きはかなり悪かったのである。
朝まで寝付けずに体力を消耗していたからこそ深い眠りに誘われて一時間前にぐっすりと眠りにつけたのである。
そして酔っ払いに対して直ぐに対応できるように布団の中にいるマサキたちは寝間着を着ていない。いつもの服装で布団の中に潜っていたのである。
さらに電気もつけっぱなしだ。寝ようにも寝れない環境だったのである。
「おはようございますッス! って呑気にしてる場合じゃないッスよ! お店の中に酔っ払いがいるッスよ! そ、そうだ! 水!」
ダールは慌てながらキッチンへと向かった。二日酔い状態の酔っ払いに水を飲ませるためだ。
「い、急がないと……」
ダールは手に取ったコップに新鮮な湧き水を入れて走り出した。
二日酔いであることは間違いないが高齢の兎人族が顔色を悪くして横になっているのを見たのだ。一刻を争う状態だと思ってしまうだろう。
だからこそダールは急いで水を持って行ったのである。
急ぐダールを見たマサキとネージュは状況を確認するために覗き穴から店内を覗く。
マサキの黒瞳とネージュの青く澄んだ瞳にはダールが酔っ払いのおじいちゃんに水を渡す姿が映った。
「水を持ってきたッス! 飲むッスよ!」
「おおぅ……ごくっごくごくっ」
酔っ払いのおじいちゃんはダールから受け取った水を勢いよく飲み干した。
「くあぁああ! 生き返ったわい! これぞ生命の水じゃ」
体が求めていた水分が体内に入り循環し酔っ払いのおじいちゃんは生き返る。そして勢いよく飲み干した水は少しばかり口から滴ったが乱暴に拭き取り服の袖を濡らした。
生き返ったおじいちゃんを見て慌てながら水を渡したダールが安堵する。
「元気になって良かったッスよ」
「美味しい水をありがとう。ごちそうさん。おかげでまだまだ長生きできそうじゃ! ハッハッハッハ!」
陽気に笑う兎人族のおじいちゃん。
壁の向こうでは生き返ったおじいちゃんを見てマサキとネージュも安堵していた。
「二日酔いで苦しんでたのか……」
「私たち気付きませんでしたね。ダールが帰ってきて本当に良かったですよ」
「だよな。急性アルコール中毒の症状じゃなくて本当に良かったわ……救急車とか呼び方わからないし本当に助かったよ」
「キュウキュウシャ?」
「あっ、こっちだとそういうことは聖騎士団の役目か。大変だな……」
マサキは聖騎士団白兎の団長の真っ白な兎人族の顔を思い浮かべていた。女性として優雅で美しく、聖騎士団として誇り高くかっこいいアンブル・ブランシュの顔を。
「ってそんなことよりも心配だから俺たちも行くか」
「そうですね。見た感じ酔いが覚めた感じもしますし換気のためにも行きましょう」
マサキとネージュはノールックで手を繋いだ。そして打ち合わせもなしに同時に一歩踏み出し二人三脚のように同じリズムで歩き出す。
そのまま通路に入りカーテンから顔だけをひょっこりと出した。
「ダールダール」
マサキはダールを呼ぶ。その声に気付いたダールは通路を隠しているカーテンの方へと顔を向けた。
「そのおじいちゃん大丈夫か?」
「大丈夫みたいッスよ。水飲んで元気になったみたいッス!」
鼻をつまみながら話すダールは鼻声で答えた。
「良かった。そんじゃネージュやるぞ」
「はい!」
マサキとネージュはカーテンから店内へと飛び出した。そして息の合った動きで扉と小窓を素早く開ける。酒のニオイが充満した店内を換気するためだ。
そんなコンビネーション抜群の二人を見た兎人族のおじいちゃんは「おおおぉ~」と感心していた。
スタッ
なぜかマサキとネージュは決めポーズを取った。互いの体重で引っ張り合う組体操のようなポーズだ。
その後、店内に残っている酒のニオイに鼻腔が刺激されてしまい、開いている方の手で鼻を摘んだ。手を繋いでいることから二人は両手が塞がってしまう。
「開けたばかりだもんなまだニオイは消えないよな……」
「そうですね。このまま部屋に戻りましょう。無意識に変なポーズをとってしまい恥ずかしいです……」
マサキとネージュはすたすたと歩き部屋へと戻ろうとした。
その時、おじいちゃんは何かを思い出したかのように声を出した。
「おー!! そうじゃったそうじゃった!」
その声にビクッと反応したマサキとネージュは通路を隠すカーテンに隠れた。そして小刻みに震えながら声を上げたおじいちゃんを見る。
「ガガガッガガガガガッガガガガガッガガガガガッガガ……」
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……」
小刻みに震える二人の振動がカーテンにも伝わり激しく揺れている。
そんな二人を見て兎人族のおじいちゃんは再び口を開いた。
「ここに来た理由を思い出したわい!」
難易度が高い謎解きを正解したかのようにスッキリとした表情で兎人族のおじいちゃんは言った。
無人販売所イースターパーティーに来る理由など限られている。商品を購入するために来たのか、無人販売所という未知の販売店が気になり見物しに来たのかのどちらかだろう。
例外として店の調査やマサキたちに用事があり訪れる可能性もある。
しかし兎人族のおじいちゃんの姿を見ればわかるが、調査員でもなければマサキたちが知る人物でもない。なので後者の例外には該当しない可能性が高い。
兎人族のおじいちゃんはスッキリした表情のまま言葉を続けた。
「えー、セトヤ……えーっと……セトヤ……んー、セトヤマサキ……そうじゃ。セトヤ・マサキという人間族の青年とフロコンちゃんの孫のネージュちゃんに用があったんじゃった!」
それは例外に該当する言葉だった。
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