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第2章:出逢い『腹ぺこな兎人ちゃんが来た編』
60 二度あることは三度ある
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ダールの事情を知った翌日の朝。
マサキとネージュとクレールは無人販売所の開店準備に取り掛かっていた。
開店準備といっても商品棚に残っている商品を綺麗に陳列することや店の掃除など大掛かりなことはない。
開店準備が終わり店を開店させれば今日はゆっくりとしてられない。なぜなら仕入れをして明日、明後日の分の商品を作らなければならないからだ。
つまり今日は無人販売所イースターパーティーの商品の準備をする日なのである。
たくさんの商品が商品棚に残っているが全てが食品。ラスク類はともかくクダモノハサミやニンジングラッセの賞味期限が近い。
ダールが一日中倒れていたせいもあり商品が売れ残り処分してしまうのはほぼ確定。
しかし処分しないのが貧乏根性が染み付いたマサキたちだ。賞味期限が過ぎてしまったものは自分たちで食べてしまえば問題はない。
売れ残ることは悲しいことだがそれを食べれることに関しては喜ばしい。なんとも複雑な感情なのである。
三人は順調に開店準備を終わらせた。そして開店時間になり店の営業を知らせる看板をクローズからオープンに変えなけらばならない。そのためにマサキとネージュは手を繋ぎ店の外に出た。
二人は外出をする際、手を繋がなければ平常心を保てない。それが店の看板を変える作業であっても。
「ええぇぇぇぇぇ!?」
店の外に出た二人は驚愕した。そして大きな声で叫んだ。
マサキとネージュが驚愕した理由は、店の前に三人の兎人族が倒れていたからだ。
倒れているのは大人が一人と子供が二人。全員に小さなウサ耳が付いている。そして髪色はオレンジ。ダボダボなパーカーを着ている。さらにショートパンツを履いていてむちむちな太ももが露わになっている。
そう。店の前で倒れている三人はダール三姉妹だ。
二度あることは三度あるとはまさにこのことである。
「おいデールドールしっかりしろ。お腹が空いたのか?」
「デールちゃんドールちゃん大丈夫ですか?」
マサキとネージュは倒れている双子の姉妹に優しく声をかけ肩を揺さぶる。こんな幼い子供が倒れていては正気ではいられない。心配で頭がパニックになってしまう。
しかしそんな心配は必要なかった。なぜならデールとドールは同時に笑い出したからだ。
「くすくすくす」
「くすくすくす」
笑いを堪えられなかったのだろ。そして堪えられなくなったタイミングも同時。さすが双子だ。
なぜ二人は笑いを堪えていたか。双子の姉妹デールとドールはお腹を空かしていなかったからだ。
つまり本当にお腹を空かして倒れているのは姉のダールだけだったということ。
デールとドールは姉の真似をして倒れていただけである。何とも紛らわしい。そして可愛らしい。
「お兄ちゃん驚いた?」
「お姉ちゃん驚いた?」
無邪気な笑顔で立ち上がり服についた砂や膝についた砂を落としている。
「いやいやビックリするだろ。そういうことはふざけてやっちゃダメだよ」
「そうですよ。マサキさんの言う通りです。心配したんですからね」
ここは大人の対応として優しく注意するマサキとネージュ。注意を受けたデールとドールは反省した様子で「ごめんなさい」と一言謝罪してから頭を深く下げた。
マサキとネージュはその可愛さと反省をする純粋な心を受けてすぐに許して二人の頭を撫でた。
「よしよし。良い子だ。そんで姉ちゃんの方はまだ倒れてるんだが……これはガチだよな」
「そうですね。また食事をとらずに仕事探しをしてたんでしょうね」
「まったく……どんな面接をしたら落とされ……あっ、正直にサボりますって言ってるのか……そりゃ受かるはずもないよ……」
ダールは正直に以前の仕事をクビになった理由を話す。だから仕事が見つからないのだとマサキは思考した。
流石のマサキでも面接の時などは多少の嘘はつく。否、嘘といえば語弊があるかもしれない。多少の話は盛ると言ったほうが良いだろう。
それは善人でも悪人でも誰だってやってしまうことだ。しかしバカ真面目に正直に話してしまうダールは面接の時点で落とされてしまうのだ。
(なんでそんなバカ真面目で正直者が仕事をサボったりするんだ? 妹たちのことを考えればサボるなんてことできないだろうに……実際のところサボった理由とか聞いてなかったな……ってまずはダールを助けないと)
「おいダール。今日は助けないって言ったけど妹たちの可愛さに免じて助けてやるからな」
マサキとネージュは辺りを見渡し他に誰もいないことを確認する。そして誰もいないことが確認できた二人は手を離してダールを店の中そしてその奥の部屋へと運んだ。
その後ろを双子の妹たちが楽しそうについてくる。無人販売所イースターパーティーの店内を見て遊園地に来たかのように黄色の瞳を輝かせた。そして口を大きく開けながら感動していた。
姉が倒れているのに動じないのは姉が空腹で倒れていること自体日常茶飯事でその後必ず助かるという経験があるからだろうとマサキは推測する。まさに今がその状況である。
「まったく……妹たちに心配かけさせるなって……」
「ぁ……にぃ……さん……ごめんなさいッス……」
マサキとネージュに運ばれるダールは弱々しい声で呟いた。
部屋に入ると仕入れのために出かける準備をしていたクレールが驚いていた。
「またなのかー! また倒れたのかー!」
「二度あることは三度あるってことだ。クレールまたクダモノハサミを持ってきてくれ」
「まかせろー」
クレールはマサキに言われた通りクダモノハサミを持ってくるために店に向かおうとする。その際、マサキたちの後ろを付いてくる双子の妹たちに声をかけた。
「二人もクダモノハサミ一緒に選ぶかー?」
「いいの?」
「いいの?」
クレールの甘いロリボイスの直後に同時に響く双子の姉妹の耳心地の良い声。この三人の会話だけでも飯十杯はいけるとマサキは確信し頷いた。
「いいんだぞー。種類は少ないけどクーと一緒に選びに行こう」
「やったーありがとうお姉ちゃん」
「やったーありがとうお姉ちゃん」
「お、お、お、お姉ちゃん。クーがお姉ちゃん! いい響きだぞ。もっと言ってほしいぞ」
「クーのお姉ちゃん」
「クーのお姉ちゃん」
「な、なんだか照れるぞ。悪い気分じゃないぞ。心がきゅんきゅんするぞ」
クレールはデールとドールにお姉ちゃんと呼ばれて心がきゅんきゅんとして喜んでいた。
そのままクレール率いるちびっこトリオはダールの食べ物を選びに店内へと向かった。
その光景を微笑ましくマサキとネージュは見ている。
「ほほえま~。マジほほえま~」
「ほほえまですね。本当に子供って可愛いですよね。無邪気で元気で。クレールもすっかり子供らしくなりましたしね」
「だな。本当に可愛いよな。ウサ耳もあって可愛さ倍増だよ」
ダールをいつもの場所に座らせちびっこトリオに癒されながら会話を弾ませるマサキとネージュ。
その時、マサキは素朴な疑問を口にする。
「あのさ、素朴な疑問なんだけどさ、人間族と兎人族のハーフってウサ耳とか生える? というかそもそも子作りできるの?」
「もちろん子作りできますよ。それにウサ耳もちゃんと生えてきます。そもそも兎人族は人間族の遺伝子とウサギの遺伝子が混ざり合ってる種族ですからね。人間族との間に生まれた兎人族はちゃんとウサ耳を受け継ぐんですよ」
「マジか。めちゃくちゃいい情報が聞けた。いつか俺に子供ができる時はウサ耳が付いているかもしれない。そしたら男の子でも女の子でも絶対に可愛い。うんうん。そうに違いない。そしたら一緒に無人販売所を経営して幸せに暮らすんだろうな。夢がまた増えた」
ウサギのようにぴょんぴょんと飛び跳ねるマサキ。目の前にダールが横たわっているのにも関わらずはしゃいでいる。
その様子を顔を赤らめながらネージュは見ていた。そして妄想をしていた。
(マサキさんに子作りの願望が! しかも同じ人間族ではなく兎人族と……誰と誰と……一体誰と子作りをしたいというのでしょうか。もももももしかして私……目を合わせて恥ずかしげもなく話してるところを見ると私の可能性も……い、今だって私のことを見ながら楽しそうに何か話してますし……ダ、ダメです。意識しちゃダメです。絶対私の勘違いです。私とマサキさんはもう家族も同然。子作りなんてそんなことするわけないです。これはただのマサキさんの願望であって夢物語です。ただ子供が可愛いから出たなんでもない日常会話の一つですよね。で、でも子供と一緒に無人販売所を経営するって言ってたような……無人販売所ってここのことですよね……えっ、もしかしてやっぱり私と子作りをっ! い、いや待ってください。違いますよね。冷静に考えて……あっ、もしかしてクレールですかね。可愛いですしマサキさんはいつもクレールのことを気にしてる気がします。それにクレールもマサキさんにくっついたりスキンシップをとってますし……で、でもクレールは若すぎます……い、いや兎人族ならそういうことができなくはない年齢ではありますが……流石に若すぎです。早すぎますよ……あっ、でも待ってください。もしかしたらダールかもしれません。だってダールと子作りしたとしても無人販売所の経営を辞めることはないじゃないですか。昨日から様子がおかしいのはやっぱりダールのことが気になって……それに子作りしたいって発言もデールとドールを見て言ってましたし……ダールとの子供を作るんでしたら想像するのも当然ですよね……マサキさん……もう子作りのことまで考えて……な、なんか嫌です……なんですかこの気持ちは……モ、モヤモヤします……)
ただ単に何も考えずに言ったマサキの言葉にネージュの妄想はどんどんと膨らむばかりだった。
そしてどんどんと嫌な気持ちになっていき赤らめていた顔は頬を膨らませ機嫌の悪い顔へと変わっていた。そんなご機嫌斜めな表情でマサキのことをじーっと見つめている。
そんな時、クレールとデールとドールのちびっこ軍団は戻ってきた。
「持ってきたぞー」
「持ってきたぞー」
「持ってきたぞー」
打ち合わせでもしたのだろうか。まるで三つ子のように声が揃う三人。ただでさえ耳心地の良い声だ。この三人の声が揃うと心と体が一気にきゅっとなり癒される。
そして持ってきたクダモノハサミは全部で六個。いつも通りの数だ。それを三人で分け合いながら持っている。本当に微笑ましい光景だ。
そのまま姉を心配する双子の妹たちはクダモノハサミの袋を慣れた手つきで開けて姉の口に入れていく。
「お姉ちゃん。私たちのためにありがとうね」
「我慢しないでたくさん食べてよ」
優しげな言葉をかけながらダールに食べさせている。
その姉妹愛溢れる光景を見ているマサキとネージュとクレールの三人の瞳にはうるっとした涙が現れ始めた。
「……なんか久しぶりに感動する映画を見た気分だ。でもこの感動の気持ちを押し殺してでもダールにはキツく言ってあげないとな。妹たちのためにも今後のためにも。そんで面接の極意ってやつを叩き込んでやる」
マサキはダールの回復を待つのであった。
マサキとネージュとクレールは無人販売所の開店準備に取り掛かっていた。
開店準備といっても商品棚に残っている商品を綺麗に陳列することや店の掃除など大掛かりなことはない。
開店準備が終わり店を開店させれば今日はゆっくりとしてられない。なぜなら仕入れをして明日、明後日の分の商品を作らなければならないからだ。
つまり今日は無人販売所イースターパーティーの商品の準備をする日なのである。
たくさんの商品が商品棚に残っているが全てが食品。ラスク類はともかくクダモノハサミやニンジングラッセの賞味期限が近い。
ダールが一日中倒れていたせいもあり商品が売れ残り処分してしまうのはほぼ確定。
しかし処分しないのが貧乏根性が染み付いたマサキたちだ。賞味期限が過ぎてしまったものは自分たちで食べてしまえば問題はない。
売れ残ることは悲しいことだがそれを食べれることに関しては喜ばしい。なんとも複雑な感情なのである。
三人は順調に開店準備を終わらせた。そして開店時間になり店の営業を知らせる看板をクローズからオープンに変えなけらばならない。そのためにマサキとネージュは手を繋ぎ店の外に出た。
二人は外出をする際、手を繋がなければ平常心を保てない。それが店の看板を変える作業であっても。
「ええぇぇぇぇぇ!?」
店の外に出た二人は驚愕した。そして大きな声で叫んだ。
マサキとネージュが驚愕した理由は、店の前に三人の兎人族が倒れていたからだ。
倒れているのは大人が一人と子供が二人。全員に小さなウサ耳が付いている。そして髪色はオレンジ。ダボダボなパーカーを着ている。さらにショートパンツを履いていてむちむちな太ももが露わになっている。
そう。店の前で倒れている三人はダール三姉妹だ。
二度あることは三度あるとはまさにこのことである。
「おいデールドールしっかりしろ。お腹が空いたのか?」
「デールちゃんドールちゃん大丈夫ですか?」
マサキとネージュは倒れている双子の姉妹に優しく声をかけ肩を揺さぶる。こんな幼い子供が倒れていては正気ではいられない。心配で頭がパニックになってしまう。
しかしそんな心配は必要なかった。なぜならデールとドールは同時に笑い出したからだ。
「くすくすくす」
「くすくすくす」
笑いを堪えられなかったのだろ。そして堪えられなくなったタイミングも同時。さすが双子だ。
なぜ二人は笑いを堪えていたか。双子の姉妹デールとドールはお腹を空かしていなかったからだ。
つまり本当にお腹を空かして倒れているのは姉のダールだけだったということ。
デールとドールは姉の真似をして倒れていただけである。何とも紛らわしい。そして可愛らしい。
「お兄ちゃん驚いた?」
「お姉ちゃん驚いた?」
無邪気な笑顔で立ち上がり服についた砂や膝についた砂を落としている。
「いやいやビックリするだろ。そういうことはふざけてやっちゃダメだよ」
「そうですよ。マサキさんの言う通りです。心配したんですからね」
ここは大人の対応として優しく注意するマサキとネージュ。注意を受けたデールとドールは反省した様子で「ごめんなさい」と一言謝罪してから頭を深く下げた。
マサキとネージュはその可愛さと反省をする純粋な心を受けてすぐに許して二人の頭を撫でた。
「よしよし。良い子だ。そんで姉ちゃんの方はまだ倒れてるんだが……これはガチだよな」
「そうですね。また食事をとらずに仕事探しをしてたんでしょうね」
「まったく……どんな面接をしたら落とされ……あっ、正直にサボりますって言ってるのか……そりゃ受かるはずもないよ……」
ダールは正直に以前の仕事をクビになった理由を話す。だから仕事が見つからないのだとマサキは思考した。
流石のマサキでも面接の時などは多少の嘘はつく。否、嘘といえば語弊があるかもしれない。多少の話は盛ると言ったほうが良いだろう。
それは善人でも悪人でも誰だってやってしまうことだ。しかしバカ真面目に正直に話してしまうダールは面接の時点で落とされてしまうのだ。
(なんでそんなバカ真面目で正直者が仕事をサボったりするんだ? 妹たちのことを考えればサボるなんてことできないだろうに……実際のところサボった理由とか聞いてなかったな……ってまずはダールを助けないと)
「おいダール。今日は助けないって言ったけど妹たちの可愛さに免じて助けてやるからな」
マサキとネージュは辺りを見渡し他に誰もいないことを確認する。そして誰もいないことが確認できた二人は手を離してダールを店の中そしてその奥の部屋へと運んだ。
その後ろを双子の妹たちが楽しそうについてくる。無人販売所イースターパーティーの店内を見て遊園地に来たかのように黄色の瞳を輝かせた。そして口を大きく開けながら感動していた。
姉が倒れているのに動じないのは姉が空腹で倒れていること自体日常茶飯事でその後必ず助かるという経験があるからだろうとマサキは推測する。まさに今がその状況である。
「まったく……妹たちに心配かけさせるなって……」
「ぁ……にぃ……さん……ごめんなさいッス……」
マサキとネージュに運ばれるダールは弱々しい声で呟いた。
部屋に入ると仕入れのために出かける準備をしていたクレールが驚いていた。
「またなのかー! また倒れたのかー!」
「二度あることは三度あるってことだ。クレールまたクダモノハサミを持ってきてくれ」
「まかせろー」
クレールはマサキに言われた通りクダモノハサミを持ってくるために店に向かおうとする。その際、マサキたちの後ろを付いてくる双子の妹たちに声をかけた。
「二人もクダモノハサミ一緒に選ぶかー?」
「いいの?」
「いいの?」
クレールの甘いロリボイスの直後に同時に響く双子の姉妹の耳心地の良い声。この三人の会話だけでも飯十杯はいけるとマサキは確信し頷いた。
「いいんだぞー。種類は少ないけどクーと一緒に選びに行こう」
「やったーありがとうお姉ちゃん」
「やったーありがとうお姉ちゃん」
「お、お、お、お姉ちゃん。クーがお姉ちゃん! いい響きだぞ。もっと言ってほしいぞ」
「クーのお姉ちゃん」
「クーのお姉ちゃん」
「な、なんだか照れるぞ。悪い気分じゃないぞ。心がきゅんきゅんするぞ」
クレールはデールとドールにお姉ちゃんと呼ばれて心がきゅんきゅんとして喜んでいた。
そのままクレール率いるちびっこトリオはダールの食べ物を選びに店内へと向かった。
その光景を微笑ましくマサキとネージュは見ている。
「ほほえま~。マジほほえま~」
「ほほえまですね。本当に子供って可愛いですよね。無邪気で元気で。クレールもすっかり子供らしくなりましたしね」
「だな。本当に可愛いよな。ウサ耳もあって可愛さ倍増だよ」
ダールをいつもの場所に座らせちびっこトリオに癒されながら会話を弾ませるマサキとネージュ。
その時、マサキは素朴な疑問を口にする。
「あのさ、素朴な疑問なんだけどさ、人間族と兎人族のハーフってウサ耳とか生える? というかそもそも子作りできるの?」
「もちろん子作りできますよ。それにウサ耳もちゃんと生えてきます。そもそも兎人族は人間族の遺伝子とウサギの遺伝子が混ざり合ってる種族ですからね。人間族との間に生まれた兎人族はちゃんとウサ耳を受け継ぐんですよ」
「マジか。めちゃくちゃいい情報が聞けた。いつか俺に子供ができる時はウサ耳が付いているかもしれない。そしたら男の子でも女の子でも絶対に可愛い。うんうん。そうに違いない。そしたら一緒に無人販売所を経営して幸せに暮らすんだろうな。夢がまた増えた」
ウサギのようにぴょんぴょんと飛び跳ねるマサキ。目の前にダールが横たわっているのにも関わらずはしゃいでいる。
その様子を顔を赤らめながらネージュは見ていた。そして妄想をしていた。
(マサキさんに子作りの願望が! しかも同じ人間族ではなく兎人族と……誰と誰と……一体誰と子作りをしたいというのでしょうか。もももももしかして私……目を合わせて恥ずかしげもなく話してるところを見ると私の可能性も……い、今だって私のことを見ながら楽しそうに何か話してますし……ダ、ダメです。意識しちゃダメです。絶対私の勘違いです。私とマサキさんはもう家族も同然。子作りなんてそんなことするわけないです。これはただのマサキさんの願望であって夢物語です。ただ子供が可愛いから出たなんでもない日常会話の一つですよね。で、でも子供と一緒に無人販売所を経営するって言ってたような……無人販売所ってここのことですよね……えっ、もしかしてやっぱり私と子作りをっ! い、いや待ってください。違いますよね。冷静に考えて……あっ、もしかしてクレールですかね。可愛いですしマサキさんはいつもクレールのことを気にしてる気がします。それにクレールもマサキさんにくっついたりスキンシップをとってますし……で、でもクレールは若すぎます……い、いや兎人族ならそういうことができなくはない年齢ではありますが……流石に若すぎです。早すぎますよ……あっ、でも待ってください。もしかしたらダールかもしれません。だってダールと子作りしたとしても無人販売所の経営を辞めることはないじゃないですか。昨日から様子がおかしいのはやっぱりダールのことが気になって……それに子作りしたいって発言もデールとドールを見て言ってましたし……ダールとの子供を作るんでしたら想像するのも当然ですよね……マサキさん……もう子作りのことまで考えて……な、なんか嫌です……なんですかこの気持ちは……モ、モヤモヤします……)
ただ単に何も考えずに言ったマサキの言葉にネージュの妄想はどんどんと膨らむばかりだった。
そしてどんどんと嫌な気持ちになっていき赤らめていた顔は頬を膨らませ機嫌の悪い顔へと変わっていた。そんなご機嫌斜めな表情でマサキのことをじーっと見つめている。
そんな時、クレールとデールとドールのちびっこ軍団は戻ってきた。
「持ってきたぞー」
「持ってきたぞー」
「持ってきたぞー」
打ち合わせでもしたのだろうか。まるで三つ子のように声が揃う三人。ただでさえ耳心地の良い声だ。この三人の声が揃うと心と体が一気にきゅっとなり癒される。
そして持ってきたクダモノハサミは全部で六個。いつも通りの数だ。それを三人で分け合いながら持っている。本当に微笑ましい光景だ。
そのまま姉を心配する双子の妹たちはクダモノハサミの袋を慣れた手つきで開けて姉の口に入れていく。
「お姉ちゃん。私たちのためにありがとうね」
「我慢しないでたくさん食べてよ」
優しげな言葉をかけながらダールに食べさせている。
その姉妹愛溢れる光景を見ているマサキとネージュとクレールの三人の瞳にはうるっとした涙が現れ始めた。
「……なんか久しぶりに感動する映画を見た気分だ。でもこの感動の気持ちを押し殺してでもダールにはキツく言ってあげないとな。妹たちのためにも今後のためにも。そんで面接の極意ってやつを叩き込んでやる」
マサキはダールの回復を待つのであった。
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