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第七節

第42 合同授業

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 ――――令嬢学園



「おい、ユウカまた今日も元気ないぞ」

「何処か上の空だよね。あの日の事も結局聞けてないしさ。 ねぇ星」

「う、うん。 どうしたんだろう」

 四人はユウカを心配していたが、どうも聞きづらい雰囲気だった。


「ユウカ誘って移動するぞ」

 学がユウカの元へと行く

「あっ、そっか次令嬢生徒と合同体育だったよね」

 黎も思い出したようね学の後を追いかけた。

「ほんと、センコーも余計なことしてくれるよな。 何が令嬢と成華の交流を図る為だよ、 暫くやるんだろ、これ」

「まぁ、仕方ないよ」
 
 苦笑いしながら星と桂川も、ユウカも元へと向かった。



「おい、何白けてるんだ。行くぞ」

 学がユウカの後頭部を叩く


「あでっ、」

 唐突な事に腹を立てるユウカ。


「な、何だ。学ぶか。 行くってどこに?」

「お前な、次合同体育だろうが。 遅れるとまた変な事言われちまうぞ」

「あっ、そうか。悪い」


「ったく、お前何1人で老けてんだよ」

 桂川も心配していた。

「まぁ。とりあえず次は遊びみたいな授業なんだし気分転換にもなるよ」

「ほら、いくよ、アンタら」

 黎が明るくみんなの先導を引いた。


 星と黎が、前を歩く中、学と桂川はユウカに聞いた。

「なぁ、お前本当に一人で抱えてることとかないの?
 何でも言ってくれよ、相談にのるからよ」

「ありがとう。 桂川。 だけど本当になんでもないんだ」

 絶対に言おうとしないユウカにもどかしい気持ちでいっぱいだった。 一体2人に向けた笑顔の裏に、どれだけの物がのしかかってユウカを苦しめているのか。 二人には全く分からなかった。


「で、お前彼女とはうまくいっているのか」

「はぁ?」

 いきなり学が切り込んだ。

「おま、急に何言って……」

 4人で聞きたくても言えなかったことを、いきなりこの場で学が話し出した事に驚きで仕方がなかった。 勿論今の言葉は前の2人にも聞こえていた。

「俺は見たぞ。 お前が美人さんと金髪と仲良さそういしているところを」


「え? 誰の事言ってんだよ」

 もう、話に出てしまったのなら仕方がない。 この機を逃さないと、黎が、桂川が問いただす。


「いや、俺らも見たからな。 令嬢の生徒なんだろ? モデルでもやってんのかあの子?」

「あれ、私達があった舞さんだよね? ユウカ達っていつからできてたの?」


「ちょっと、皆、ユウカ君困ってるところなのに」

 次から次えと質問してくる記者のように、質問攻めにあう。


「ちょっと、待て、どういう事だよ。 別に俺ら付き合ってないから」


「はいはい。出ました。お得意のひた隠し。 もういいから、正直に言いなよ。 ネタ挙がってんだからさ」

 黎はこのまま押し込む。 

「お前らが、勝手に勘違いしてるだけだろ」

「だけど、俺ら見ちゃったんだよね~キスしてるところ」

「あれは熱い口づけだった」

 桂川と学は妄想を掻き立ててその時見た状況を語る。

「だから、誰と勘違いしてんだよ。 俺はあいつとは口づけともしてねぇよ」

 そんなシーンをなぜか想像してしまったユウカは照れが収まらない。

「なら、あの人はお前の何なんだ?」

「ただの友達だよ」


「友達とはキスしなよな」

 桂川も攻めの手を緩めない。


「だからしてねぇよ」
 どうしてか想像してしまうユウカ。

「ほら、顔赤くして。 ユウカさんは照れ屋さんなのかな」

「おい、黎、いい加減怒るぞ」

「じゃあ、ユウカと桜華さんはどうしてあんなに仲がいいの?」


「そ、それは……」


「やっぱり言えないんだ。 そう言う事なんだよね? もうバレているから付き合ってるって言いなよ。 どうして隠すの?」

 黎の人事は効いた。

「違う。 本当に付き合ってないんだってば」

「もう、しつこいなぁ。 私達、ユウカが舞さんの家に入って行ってるところも見てるんだからね。 ねぇ星」

 みんなもうんうん。と自信満々に首を振った。 星も少し申し訳なさそうに、小さくなずいた。
 どうして、四人に見られているのか、ユウカにはそれが驚きだった。 あれだけ警戒して見回っていたと言うのに、一体おつ、見らえてしまったのか。 
 そして、そんな事よりも星に見られているという事が何よりもショックが大きかった。

「強引なのか知らないけど、仲良く二人で走って部屋上がって、お仲がよろしい事で」

 桂川が揶揄ってくる。

「やばい。時間がないぞ」

「うそ? やば」

 四人は一斉に走り出した。 

「ちょい待て、本当に違うからな」

 ユウカも四人の後を追った。



 合同体育が始まった。令嬢と、成華の生徒が一緒に体育をすると言うものだが、これは2限続けて行われた。
 学校側としては勉強ばかりの受験生に少しでも息抜きにと考え取りいれていた。勿論、令嬢と成華が仲が悪いと言う改善も兼ねてである。



「よし、じゃあ皆は2人一組になってくれ。 今日は誰でもいいぞ。 その人がお前らのペアーだ」


 ユウカは授業に集中できないでいた。 そして、ペアーはどんどんと決まっていく。

「じゃあ俺星ちゃんと組もう」

「なら学は私と組もうよ」

 星は桂川と、黎は学と近くにいた為組むことにした。

「ようし全員組み終わったか? おいお前まだか」

 ユウカは一人ポツンと残っていた。 

「え? ペアー?」

 辺りは皆組み終わっていた。 桂川と黎はユウカににやりと笑って指さした。その先を見ると舞がいた。

 ユウカは2人をじっとりとした目で見返した。

「お前もペアーいないのか?」

「うっさいわね。 私は別に参加したくないだけ」

「そうか一緒だな」


 ユウカはそっと舞の横に並んだ。

「あんた、大丈夫なの。 昨日から寝てないじゃない。 エリィーちゃんの事は気の毒だけど」

「解ってるよ。 そんな事。 いつかはいなくなってしまうんだってことぐらい。 だけど、どうしてもどこかにいる様な気がして」

「そうよね、探さないと気がすまないわよね」

「とりあえず、また帰ったら一緒に探しましょ。 でもまずは、子の目の前の事を片付けないとね」


 舞は、吉岡たちの会話が聞こえてきた。 胸糞悪い否定と罵声をこそこそと話していた。

「お前、すごいやる気だな。 いつもそんなだったか?」

「私はやる時はいつでも本気よ。 私をバカにした事を後悔させてあげるわ」


 種目は二人三脚からの袋とびリレーだ。 

「おい、マジかよ」

 舞は黙って紐を結ぶ。 

「真剣よ。 負けるつもりはもうとうないわ」


 最初は練習だった。 各自で練習の時間が20分設けられた。

「じゃあ、行くわよ!」

「おい、待て舞!」

 舞の勢いは早くユウカは無理矢理足を引っ張られる形でスタートした。 くくられた足はそれに引き寄せられ2人はこけた。

 吉岡が笑う。

「ははは、だっせぇ。 もうこけてるぞ、あそこのペアー」

「いたったたた、」

「大丈夫か」

「大丈夫じゃないわよ、ちゃんと合わせなさいよ」

「お前が勝手にいくからだろ」

「何言ってんのよ。 あんたが動かないからでしょうが!」

「もう一回行くわよ」

 二人はもう一度スタートを始める。

「ギャァーー」

今度は舞が大きくこけた。

「お前何やってんだよ……」

「アンタね……」

 舞は涙目で怒っていた。

「アンタ馬鹿なの!! 何で右足から出すのよ。 左足が先でしょ! 普通」

「どっちでもいいだろう。 それにお前が合わせないから、こけたんだろが」

「大体ね、何でアンタなんかと組まなきゃいけない訳。 ちょっとはこっちの身も考えなさいよね」

「俺だって、好きでお前と組んでる訳じゃねぇよ」

 周りは最初、ガチに喧嘩していると、引いていたいが、だんだん夫婦漫才のように見えてきてくすくすと笑う生徒が出てきた。

「おい! こらそこ、! 喧嘩してるんじゃねぇ!」

 あまりにもヒートアップして来た事に、先生も注意に入る。

 周りに気づいたのはそれからの事だった。 二人は急に恥ずかしくなった。


「と、とりあえず、もう一回やるわよ。 今度は左足からね」

「お、おう、左だな。 わ、わかった。 合わせてみるよ」

 桂川や黎たちもそれを見ていた。ほっとしたように感じる者もいれば、切なく感じた者もいた。

「何だよ、めっちゃ仲いいじゃんか。 お似合いって感じだな」

 桂川は笑っていた。

「そ、そうだね。 良かったね。 お似合いそう……」

 

「ちょっと学、あっちはすごい楽しそうなんですけど、いいな。 なんかベストカップルだね」

 黎もユウカの元気そうな姿を見れたの良かったが、少し別の人も気にかけていた。

「おいこっちも早く練習するぞ。 まぁ、あの夫婦ペアーには負ける気はせんがな」

「確かに」

 学と黎は本腰を入れた。


「じゃあ、行くわよ」

「おう、いつでもいいぞ」

 しっかりと手を肩に回し、お互い密着する。 これぞ絆を深めるには取っておきのスポーツ。 先生とOBの先生は大いに喜んで見守っていた。


 ユウカは、舞の腰に回した手に力を入れた。その瞬間舞が引き寄せられる。

「きゃ」

 舞の女の子らしい声。

「ちょっと、あんた、変な事考えてないでしょね。 そんなに、密着しなくてもいいでしょうが」

「う、うるせい。 仕方ないだろ、近づけておかないと、バランスとかタイミング取りにくいんだよ」


「な、なによそれ。いいからもう少し離れなさいよ」

「ちょ、ちょっとくらい我慢しろよ。 俺だってちょっと恥ずかしいんだから」

 周りの生徒は今度は赤くなる2人を見てネタにし出した。

「おい、あそこのチーム今度は赤くなって全く動かなくなったぞ」

「え? なに、ちょっとあのグループ可愛いんだけど」

「桜華さんだよね? なんか結構普通の人だよね。 しゃっべてみようかな今度」

 そんな会話が各グループ間でささやかれていた。


見かねた吉岡が声をかける。

「おい、お前らそんなとこでイチャついてんじゃねぇよ」


 二人が反応する。

「う、うっさいわね。 誰がいちゃついてるのよ。 あんたいい加減にしないと絞めるわよ」


「おい、俺らはそんなんじゃねぇ。 ふざけんな」

 皆の練習の手が止まる。 いつしか、授業は彼らが注目の的となっていた。


「いいから早くしないと練習時間無くなるぞ~」

 先生の忠告で皆はまた練習へともどった。


「いや、しかし先生今の若い奴はどこでもいちゃつくんですね」

「ふん、 バカ、あれはそんなんじゃないだろ。 まぁお似合いだがな」


 ユウカと舞はお互い顔を合わせる。
「よし、行くわよ」

「オッケーだ」

 舞が声掛けをする。

「せーの」

「うわっ」
「きゃぁぁ」

 二人は進むことなく転ぶ。


「ダメだなあいつらわ」

「だが化けるかもしれんぞ、あの二人の相性はばっちりだろ」
 先生とOBの先生は2人を観察していた。




「ちょっと、何してんのよ、せーので『左足』って言ったでしょ! ばか!アンタ本当にバカよね! この鈍間」


「だれが鈍間だよ! おれはちゃんと左からしてただろうが。 大体なお前の出るのが遅いんだよ」


「違うわ、さっきのはあんたが速すぎるのよ! ちゃんと合図聴きなさいよね」

「何を!」

「何よ!」


 先生も流石に止めに行くか、とため息をつく。 OBの先生はそんな青春している生徒を楽しそうに観察していた。

「大体な、お前の掛け声が悪いからタイミングがとりにくいんだよ!」

「はぁ? こんなにリズムの取りやすい掛け声はなかなかないと思いますけど!」

「どこがだよ、取りにくいっての」

「とりやすいわよ!」

「とりにくい!」

「とりやすい!」

「おい、夫婦。 いちゃつくのはいいが、帰ってからにしろ。 周りの生徒が見てるぞ」

 二人は2人の世界から現実に戻る。気づけは間に先生がいて、辺りはほとんどが自分たちを見ていた。


 2人はしばらくのぼせ上っていた。


「ようし、じゃあ始めるぞ」

 先生の合図で二人三脚は本番を迎えた。 男女ペアは舞たちを入れて4組と無かった。しかもそれが令嬢と成華の学生となると、舞とユウカだけだ。だけど先生はそれが、いつか両学園生をまとめる架け橋になるんじゃないかと二人に期待を覚えていた。

「用意、スタート!」

 ピストルの音が鳴る

 結果は4組目で最下位。 その中に吉岡たちもいて、それに負けた事に舞は悔しがっていた。

「ようし、 じゃあ次の種目までいったん休憩入れるぞ」


 舞は一人で校庭を離れて水を飲みに行った。 暫くしてユウカが一人でやってくる。

「舞、ありがとな」

「何よ急に。 気持ち悪い」


「お前、元気づけよとしてくれてたんぞ。 あの間だけでも、気分転換の場所を作ろうと」

 舞は、水を飲むために髪を掛ける。

「別に。 ただ私は勝負するなら負けたくなかっただけ。 ただそれだけだから」

「お前ってホントわかりやすいな」

「な、何がよぉ!」

 ユウカの笑顔が戻る。
 
「ありがとう、 お前のおかげで元気出たわ」

「そ、そう。 ベ、別にあんたの為にやった訳じゃなんだからね。 か、勘違いしないでよね」

 必死で嬉しさを隠す舞。 でも、舞は元気になったユウカを見れれとても嬉しかった。


「にしても、このままじゃ悔しいよな。 特に吉岡、アイツだけには負けたくねぇ」

「わかるわ。 私も腹が立って仕方がないもの」


「潰すか」

「潰しましょ」


 舞はスマホが光ってるのを見た。

「お前、授業にスマホもってきてんのか?」


「そうよ。 悪い?」


 悪いよ、 てか良く持ってこれたなと思うユウカだった。 舞は、体育館の横にこっそりと小さい荷物を置いていた。 体育がしょうもなかったらこの荷物と一緒に抜け出すつもりだった。


「ユウカ。 これヤバくない」

 舞はスマホの画面をユウカに見せてきた。 そこにはフランからのメッセージの一文が表示されていた。


「舞、どうしよう。 変な人が家にいる」


 家という事はユウカの家だ。
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