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番外編

【エイプリルフール編(完)】元気になる魔法をかけられて。(四)(水樹視点)

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「……なんかそれはそれで、ぼく達の存在意義を考えてしまうな」
「そんざ……、いぎ? よくわからないけど、きっと大丈夫だ! だって二人がラブラブで結婚しなかったらおれ達は卵から生まれてない。つまーり、おれたちは二人から愛されてるんだぞ」
「お前、ほん……。ん? 卵?」
「え、だってそうだろ。おれの友達を信用しない気か?」
「まなとおにーちゃんのともだちものしり! ダチョウさんのよりおおきいのかな」
「だああ、問題事を増やすなこの、こっの、兄貴がああ!!」
子供達の親子愛と勘違いが語られているとはつゆ知らず。
「んっ、ふぁ……」
「じゅ……んんっ」
水樹がペットボトルを取ろうとしたら、彼方が口を膨らませたまま吸い付いてきた。彼方は舌を伝わせて水を与えてくれるが、受け取る側からすると甘い味がする。
ポタポタ。水溜まりが出来たシーツの上に水滴が落ちる。
「ぷはっ。ご馳走さまでした」
水分補給という名の接吻。目尻を下げる彼方を前に、水樹は頬を赤く染めて「お、お粗末さまでした」
「もーお、お粗末じゃないよ水樹は」
「だ、だって……俺ばっかり良い思いしてるし」
「……またキスするよ?」
悪戯っぽく笑われ、水樹は目を閉じて唇を差し出す。狼狽える声がしたが、数秒も経たない内にキスを味わった。
「美味し……」
──トクトク、トクトク。
(ほら、結局俺の方が得しちゃう)
瞼を持ち上げると明るい色が目に入る。綺麗なビー玉見たいだ。
倒れるように二人で横になった。
「ビシャビシャだね」
「は、はしたないね……」
「ぜーんぜん。良い匂いするよ?」
くんくんとシーツを嗅ぎ出す彼方を止めようとしたが一歩遅かった。
「僕と水樹の液体が混ざった匂い」
顔の中心に熱が集まった水樹に対し、彼方は「可愛い」
とにこやかな笑みを浮かべる。
「俺のこと可愛いって褒めるの、彼方かあの子達くらいだよ」
「おお。さすが僕らの子。見る目ある」
僕らの子。彼方が発した言葉を胸の中で反芻する。
(僕と彼方の子供。彼方の血だけじゃなくて、僕の……)
「一緒にいてよく思うけどさ、愛翔も陽翔も歩美も、水樹にとっても似てるよね」
「お、俺に……?」
「うん。愛らしさとか純粋で優しいところはもちろん、大切な人のために真剣に悩んで不安がるところとか」
不安がるところと聞き、たしかに自分の悪いところが遺伝したかもしれないと拳を握り締める。その手を、彼方は包んだ。子供体温のように温かい。
「でも、不安がった後にちゃんと行動に移せてる。すっごく勇気のいることだし、なんたって相手のためだよ。格好良くない?」
向けられる瞳に濁りはなく、緩んだ口元から嬉しさがダダ漏れていた。
「今日は特に一回り成長したところを見られたし、どんな子達に成長していくんだろうな」
彼方の言葉や振る舞いは、いつも温かい気持ちにさせてくれる。じわじわ込み上げてくる熱に何度も救われてきた。
「俺やあの子達が勇気を持って行動できるのは、彼方が応援してくれて安心させてくれるからだよ。すごく格好良いことだ。いつもありがとう」
嘘偽りなく、はっきりと言える。
あの子達もいつかきちんと実感し、感謝の言葉を伝えられる日が来るだろう。
彼方は驚いてから少し顔を伏せ、チラリと水樹を窺う。頬がピンク色に染まっていた。
「僕、格好良い?」
「とっても。世界一格好良くて、優しくて、温かいよ」
また本心から伝える。彼方は歯をこぼして笑ってみせたけど、ぽろぽろと涙を流しながら「安心した」と呟いた。
「これからも大好きな水樹と愛おしいあの子達、守るからっ」
「じゃあ、俺は彼方とあの子達を守るね」
彼方の手が目元に触れて、自分が泣いているのがわかった。苦しくない、悲しくない涙。感情は伝わってしまう。
これからも彼方と一緒にあの子達を守っていく。共通の誓いを立てながら、二人はもう嘘をつかなくても良い夜を過ごしたのであった。
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