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番外編

【エイプリルフール編(七)】元気になる魔法をかけられて。(三)(水樹視点)(R18)

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「なあ、愛翔。父さんとパパ、仲直りできると思うか?」
「急にどうしたんだよ。……さっき、内緒話してたことと関係あるのか?」
「急に勘が良くなるお前嫌い」
「普通に心配してたよな!?」
「おにーちゃんたち、だいじょうぶだよ! あゆみね、ほんとはしってるの。パパをえがおにするげんきのまほうは、とーさましかつかえないって」


「か、かな……ひゃっ!?」
子供達を見送って鍵をかけた瞬間、水樹は彼方を抱えて歩き出した。顔を上げるのも怖くて見れなかったが、迷うことなく夫夫の寝室へ入る。
「……んっんん!!」
扉を閉めるよりも先に唇を奪われた。息継ぎもできないようなキス。熱い舌を絡み取られ、勢いよく舌を吸われ、脳が溶けそうなくらいバグってくる。
(彼方が怒ってる。俺が怒らせた。いっぱい謝らなきゃ。寝室の扉閉めなきゃ。乱暴にされてるのに気持ち良い……っ)
半日してもらえなかったキスが与えられ、嬉しさと戸惑いが一気に押し寄せる。加えて申し訳なさもあるのだから、唇が離れた時には涙が止まらなくなってしまった。
(俺、すごく変態で悪い人だ。彼方が嫌な想いしたのに)
あの後、忙しない感情と状況に揉まれていた水樹は、尻ポッケからスマホを落とした。マネージャーの羽生が懸命に探してくれたので良かったが、手元に戻ってきた頃にはすでに夕方の五時を過ぎていた。着信が何十件かあり、SNS宛には『今どこ』が何個も送られてきていた。
ベッドに倒され、頭上に手を纏められるとまたキスをされる。
(彼方、彼方、彼方──!!)
声にならない声を上げ、互いの舌先を結ぶ銀色の糸が落ちた時、酸素を肺いっぱいに吸い込んだ。
(早く、早く謝らなきゃ。怖くても怒らせても絶対、絶対に……)
「……きっと、あいつが仕掛けた嘘だと思った」
濡れた前髪が下がり、彼方の顔が隠される。
「水樹は嘘でもそんな嘘つけないから、『NTRられちゃった』なんて九割以上信じなかった。でも、でも……」
その震えは怒りではなかったと思う。
「残りの一割未満がなんかもう……わけわかんないくらい暴走した。水樹は僕のだって。僕の運命の番で旦那で、僕らの子供達を一緒に愛して、一緒に生きる存在だって。子供みたいにあんな嘘に引っかかって……」
服に水の玉が転がって落ちる。ぽろぼろと。
「水樹、不安にさせてごめん。でも、今日はいっぱい愛してるって言ってほしい」
胸の上で震える手。鼻を啜り、しゃっくりを上げて泣く番。解放された手で彼方の頭を撫で、もう片方の手を背中に置く。
「愛してるよ」
「もっと」
「今も昔も愛してる」
「もっと……ちょうだい」
「ずっと、ずうっと。これから先も愛してる。生まれ変わっても番になるのは彼方がいい。バース性がどうだったとしても、彼方と付き合いたいし結婚したい。そんな愛してる人と結ばれ、生まれてきてくれた愛翔や陽翔、歩美にもまた会いたい」
涙混じりに告白すると、彼方がキスをしてくれる。両頬を手で包み、優しく唇を重ねた。水樹の一番大好きなキスだ。
「息吸っていいよ」
「はあ、はあっ……! ひゃだ、彼方といっぱいキスし、たい……っ。朝、全然っ、出来なかったから……!」
彼方の匂いは好きだ。心がぽかぽかするし、脱ぎ捨てた衣類ですら良い香りがする。
けれど今は離れる唇が惜しく、彼方の服を掴む。気持ち良さの余韻で全然力入らなかったけれど、一瞬足りとも離れたくなかった。
彼方は目を丸めるとすぐに柔らかく笑い、水樹の頭を撫でる。撫で方も丁寧で慈しみがあり、こそばゆい気持ちになる。
「歩美がね、『キスすると赤ちゃん出来ちゃう』と勘違いしたみたいなんだ」
「あ、歩美が……?」
衝撃の事実を聞かされ目を瞬かせる水樹に、彼方が事の顛末を話す。
「そう……なんだ。じゃ、キスしなかったのって……」
彼方は申し訳なさそうに苦く笑う。
「歩美の前じゃ、教育上ダメかと思ってね」
どうして、疑問の言葉が先に頭が浮んだが、昨夜のことを思い出した。
『水樹……』
『どうしたの、水樹』
彼方も話したいことがあったのに、自分が遮ってしまった。しかも、聞かずに夜が明けた。
「み、水樹? どうして泣いて……」
「ごめ、ん……なさいっ。俺、自分のことばっかりで……っ! 俺の方が子供ぽい」
本当に、本当にそうだ。
「ヒートじゃない時も彼方に甘え……ひっ、ばかりで、結婚してからもずっと、ずうっとだ……! 彼方は優しくて、格好良くて、いつも家族のために考え……てくれてる。だからこそ、とうとう飽きられちゃったのか、……とつい不安に……ひっひっぐ、なって」
涙が止まらない。情けない。大人気ない。必死に自分の目を拭くが、留めなく出てしまう。
──シュルル。
カラーが外れ、しっとり汗ばんだ白い首が顕となる。彼方の行動が読めずに涙目をぱちぱちさせていると、視界が弾けた。
「んっ、ああ……!!」
彼方の指腹が隠れていた項に触れる。今もくっきりと残る噛み跡を沿うように撫で始めた。
「かな……ひゃっ、そこ……」
産毛をさわさわするみたいに撫でたり、歯型でへこんだところを爪で掠められたり。
まるで、『運命の番に噛まれた』ことを丁寧に教え込まれているようだった。心臓がバクバクし、快楽から逃れようとして身をよじる。
「わあ、性感帯みたいだ」
いつの間にか右耳に彼方の唇があり、色っぽく囁かれる。瞬間、ビリビリと甘い痺れが身体中を駆け巡った。
腰がベッドの上で浮き、熱い息を整えられない。
「もうイッちゃったの? 嬉しい」
そのまま体の向きを反転させられ、ふーっと噛み跡に息を吹きかけられる。……まさか。
「いただきます」
「待っ、へ……っ、ああう、あっ……!!」
唇同士で挟む齧り方。痛みはないが心臓の音がどんどん大きくなる。
(甘くて、もどかしい刺激が……いっぱい、ぐるぐるすりゅ……)
またすぐに射精してしまわないよう腹に力を入れるも、手が服の下に侵入してきた。熱い手が胸元を撫で回し、意思を持った人差し指がぷくりと膨らんだ乳首を捏ねる。
足がガクガクし、ぷしゃりとまた精を吐き出した。
(これはお仕置き……? 彼方からのえっちな罰?)
ふわふわした思考でまどろんでいたら、噛み跡を舐められて意識が戻ってきた。
思いっきりじゅっと吸われ、ピンク色の胸飾りを摘まれるとまたイッてしまう。久々の行為だったが、ヒートでもないのに軽々と気持ち良くなってしまう自分が怖くなってきた。
「かなひゃ、お願い……彼方っ。もうやめ……」
「水樹、僕の大好き伝わってる?」
高い熱で溶けて消えそうな想い。それを必死に伝えようとする愛する人は今、どんな顔をしているのだろう。
水樹は涎で濡れた枕から頭を浮かせ、大好きな人に振り返る。
太陽の髪色、赤オレンジの瞳は潤み、唇は真っ赤だ。
「み、水……樹?」
ぐるりと回り、水樹は彼方を大切に抱き締める。両腕をしっかり固め、逃がさないようにぎゅっと。
「俺、彼方を悲しませたから、お仕置きされてると思ってた」
正直に言うと彼方が黙る。息をはっとされたような気がした。水樹は怖さを隠して続ける。
「彼方がバックでしたいなら……シていいよ。でも俺は、彼方の顔を見てシたい。嬉しくて気持ち良さそうな顔も、俺のせいで悲しませちゃった顔も見せてほしい」
自分がこんなこと言う資格はないのかもしれない。ただ、彼方が後ろからぶつけてくれるものを受け取れば良かったのかもしれない。
「目を見て気持ちをぶつけて? 全部受け止めるから」
柔らかな頭を撫で、唇に同じ部位を重ねる。
「何度も心配させてごめん。スマホを落としたのもあって返事が遅れてごめんね。俺の心と体は彼方にしか興味ないよ」
奪われるようなキスをされ、唇を割って入ってきた舌に歯列をなぞられる。
「浮気匂わせなんて嘘でも二度としないで」
「うん」
「僕は水樹しか愛せないから。毎日恋してるんだからっ」
「う、んっ」
「笑顔を取り繕えたとしても、やっぱ醜いくらい嫉妬深いから。ほん……と、良かった」
言葉の震えに反応して、水樹も心を揺さぶられる。
「彼方、大好き」
「僕も好き。絶対離さない」


「ふっ、んん……う」
キスをしながら尻の窄みを解され、人差し指と中指を使って拡げられる。
「わかる? お尻のお口が開いたり閉じたり、一生懸命パクパクしてるの」
水樹は顔を真っ赤にして何度も頷く。空気が触れる度に妙な心地が襲い掛かり、膝小僧を擦り合わせる。
自分がどんなに食いしん坊なのか教えられた後、中指で限界まで膨らんだものをよしよしされてしまう。
「ふにふにがこりこりしてきたね」
「彼方ぁ、それ……あっ、ああ!」
「あっ、締まった。可愛い」
可愛いと絶対結び付かない反応だと思うが、彼方が顔を見て嬉しそうに褒めてくれると。
「……ふうっ……!」
ビクビクと下半身が痙攣し、何度目かの快楽を味わう。
(イク感覚がどんどん短くなってきてる……。まだ彼方の……。彼方と……)
息を整え終わる前に、分厚くも熱い舌が右耳の奥に侵入してきた。
「ナ、ナカもいっ、しょ……はぁ……!」
トントン、と舌と中指を連動させられる。どっちも性感帯であることを脳と身体に刻み込まれ、口の端から涎が溢れた。
快楽の波が続いてるのもあり、舌が抜かれたことに気付く余裕もない。
「気持ち良くなってるのもすっごく可愛い。愛おしいよ」
濡れた耳の中を彼方の甘い声が響く。
視界がパチバチ弾け、爪先を丸めてまた達してしまった。
「よく頑張ったね」
右耳や頬、額に鼻。キスを雨を降らされるが一つ不満があった。
「くちび、るっも。ちゅーして……。俺の旦那さ、んのちゅーがほし……んっ」
一瞬。掠めた顔がとびきりの堪らない顔をしていた。待ちわびたキスに身体の底から歓喜が湧き起こり、なんでお預けされたのとか考えられない。
「んひぅ、あっ、ちく……ぁ。うん……ぁあ」 
硬くなった乳首を片方ずつ、きゅっきゅっと摘まれる。キスはそのままディープなものへなっていき、ナカの指までくちゅくちゅ動かされたら、気持ち良すぎてわけわからなくなった。
(俺の身体、恋人時代よりえっちになっちゃった。三十過ぎたら体力が、ってよく聞くのにまだまだ全然足りない……)
「気持ち良くなかった?」
「違う! 俺の身体、えっち過ぎて変……? ずっと気持ち良くて……。彼方、引いて……なっああ、あっ!」
ピンと張った乳首を弾かれ、声が抑えられない。
「引くわけないよ。心の底から愛してるんだから。むしろ、大好きな人を気持ち良くさせることが出来て幸せだよ」
唇へキスをすると、銀色の糸を垂らしながら左胸をじゅうっと吸われる。肌には薄赤いキスマークが表れ、真下にある心臓がキュンキュンときめく。
(ああ。やっぱり俺も彼方にずっと恋してる……)
戸籍が同じになっても、あの頃と変わらず彼方に恋心を抱いてる。それって、幸せなことだ。
「かっ、なた……。お願い、もう……。うっあ」
「そうだね。僕のでもっと気持ち良くなって」
慣れた手つきでプチプチとボタンを外していき、ベルトも外す。全体的に筋肉が薄い身体の水樹とは違い、鍛えた跡が見える綺麗な身体。されるままで確認出来なかった象徴は自分に反応してくれていた。その全てに水樹は魅力を感じ、見蕩れてしまう。
「水樹?」
笑みを浮かべて待つ彼方も素敵だった。
いそいそと彼方の上に跨ぎ、ゆっくりと腰を下ろして聳りを下の口で食む。
「あっ、あぁ……!」
しっかりと解されたおかげか、身体中をとろとろにさせられたおかげか。指より深く雄々しいモノに腰が砕ける。
「……はっ、あ。いいよ、しがみついて。てか、抱き締めて」
背筋を行き来する快楽にも耐え切れず、水樹は彼方に抱き着く。
「俺、一番……彼方とのセックス好き……」
「一番って、他に経験あるの?」
彼方もそういうつもりはなかったのだろうが、言葉選びがの悪さに視界がぼやける。
「ごめんごめん。揶揄うことじゃなかったね。僕も水樹とするセックスが好きだよ」
水樹は彼方のがっしりした肩に鼻を擦り寄せる。汗ばんだ肌と彼方の匂い……心が満たされていく。
「ど、どうしたの?」
戸惑いの声を上げられ、ふるふると首を振る。
「セックスの時は心も体も一つになれるような気がして……一番好きだし安心する」
もちろん、キスは一日の元気の源になっている。今朝されなかっただけで不安になるほどだ。順位なんて決めない方がいいのかもしれない。
「彼方が俺を抱いているんだって、すぐ傍の、ここにいるんだって思える」
窄みの出口を締め、全身で彼方の存在を感じる。
底抜けに明るいと思えば、誰よりも苦労して悩んでいた彼方。
人の温かさを忘れかけていた水樹を照らした太陽。
運命を共に歩むと誓ってくれた番。
影が真横を通ったので顔を上げると、彼方が頭を抱えてため息をついている。
「……ふう。水樹にはやっぱ敵わないや」
首を傾げたら、両腕を前へ纏められた。
「ふうっ、ふあ、ひっ、いあ……!?」
前立腺を突き上げられる。水音やベッドの軋みがいやらしく耳を支配するけれど、喘ぐことしか出来ない。
「最高に格好良いって、こ……とっ!」
「かっ、こよくな……! 乱れて……る、あっ!!」
「僕だけに見せて」
視界が上下しても彼方は格好良い。イケメンで、少し視線が熱っぽい。
(俺で感じてくれてる……っ!!)
「いっしょ、イキた……」
「うん、いいよ」
ぎゅっと抱き締められてから数分後、ゴム越しに愛が溢れたのを感じ取った。
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