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成長と別れ。
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一年が経ち、僕はクラス委員長になりました。お兄ちゃんの真似をしてみたくなったのです。
頭が良くてピアノや音楽もできるお兄ちゃん。さすがにピアノを習うのは厳しく、代わりに勉強を頑張っていたら推薦されました。
ちなみに勉強を教えてくれたのもお兄ちゃんです。
ランドセルを脱いで通学カバンを持つようになると、「先輩」呼びの練習をさせて貰いました。どうやら中学やお兄ちゃんの通う高校では歳上の人を「先輩」と呼ぶそうです。
「五月先輩!」
「合格」
成功すると頭を撫でて貰えます。もう砂遊びをすることはなくなりましたが、放課後に公園で待ち合わせしてお喋りするのが楽しみでした。
服装は黒い学ランではなく、水色ブレザーに青のネクタイ。地元だと三本指に入る偏差値の高い高校の制服です。
「下の名前に先輩じゃダメなんですか?」
「うーん。暗黙のルール……みたいな?」
「な、なるほど?」
「俺には言ってみてもいいよ」
お兄ちゃん改め、五月先輩はふっと笑います。
ますます大人な雰囲気が出てくる彼の笑い方は、僕の心臓を破裂させるのかと心配になるほどです。
「あ、綾芽……先輩?」
前に教えて貰った名前に「先輩」を付けてよぶと、目を丸めた後に今度は自分の頭をわしゃわしゃ掻きました。
「……やっぱり名前で呼ばない方がいいよ」
「わかりました。ごめんなさい」
「そういうことじゃ……、お兄ちゃん呼びならいいよ」
「おに……よ、呼びません!」
「えー?」
呼びたい気持ちはあります。けど、まだ僕は子供なんだと認識させられるので、目の前では呼びませんでした。
また一年経つと、今度は僕が「先輩」と呼ばれるようになりました。
「柏木先輩って、好きな人いるんすか?」
「好きな……人ですか?」
「もうとぼけちゃってー。ま、先輩に恋はまだ早いですもんね」
同じ陸上部の後輩にからかわれましたが、恋する気持ちはよくわかりません。どれが恋なのかも。
(お兄ちゃんなら知ってるのかな)
しかし、色んなとこを教えてくれたお兄ちゃんは地元にいません。
海外の方にスカウトされ、世界各国でピアノの演奏、ソロ公演をしているのです。
公園で雑誌を読んでいても、もうその姿を見ることはありません。
受験生になると、次第に公園から足が遠のいていきました。
頭が良くてピアノや音楽もできるお兄ちゃん。さすがにピアノを習うのは厳しく、代わりに勉強を頑張っていたら推薦されました。
ちなみに勉強を教えてくれたのもお兄ちゃんです。
ランドセルを脱いで通学カバンを持つようになると、「先輩」呼びの練習をさせて貰いました。どうやら中学やお兄ちゃんの通う高校では歳上の人を「先輩」と呼ぶそうです。
「五月先輩!」
「合格」
成功すると頭を撫でて貰えます。もう砂遊びをすることはなくなりましたが、放課後に公園で待ち合わせしてお喋りするのが楽しみでした。
服装は黒い学ランではなく、水色ブレザーに青のネクタイ。地元だと三本指に入る偏差値の高い高校の制服です。
「下の名前に先輩じゃダメなんですか?」
「うーん。暗黙のルール……みたいな?」
「な、なるほど?」
「俺には言ってみてもいいよ」
お兄ちゃん改め、五月先輩はふっと笑います。
ますます大人な雰囲気が出てくる彼の笑い方は、僕の心臓を破裂させるのかと心配になるほどです。
「あ、綾芽……先輩?」
前に教えて貰った名前に「先輩」を付けてよぶと、目を丸めた後に今度は自分の頭をわしゃわしゃ掻きました。
「……やっぱり名前で呼ばない方がいいよ」
「わかりました。ごめんなさい」
「そういうことじゃ……、お兄ちゃん呼びならいいよ」
「おに……よ、呼びません!」
「えー?」
呼びたい気持ちはあります。けど、まだ僕は子供なんだと認識させられるので、目の前では呼びませんでした。
また一年経つと、今度は僕が「先輩」と呼ばれるようになりました。
「柏木先輩って、好きな人いるんすか?」
「好きな……人ですか?」
「もうとぼけちゃってー。ま、先輩に恋はまだ早いですもんね」
同じ陸上部の後輩にからかわれましたが、恋する気持ちはよくわかりません。どれが恋なのかも。
(お兄ちゃんなら知ってるのかな)
しかし、色んなとこを教えてくれたお兄ちゃんは地元にいません。
海外の方にスカウトされ、世界各国でピアノの演奏、ソロ公演をしているのです。
公園で雑誌を読んでいても、もうその姿を見ることはありません。
受験生になると、次第に公園から足が遠のいていきました。
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