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22話 パールさんの魔法授業 ③

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 俺は今、魔法を使おうとしている。パールさんの魔法授業で魔法の事を少しずつ学んでいて、いよいよ実践的な事をする事になった。

回復魔法は誰かを癒したい、という思いが大切だとパールさんは言っていた、精神論ってやつだな。慈愛の心ってやつなのかもしれない。・・・なんだか俺らしくないな。俺はそんな殊勝な事は考えていない。

「それでは、ヨシダさんに聖印、ホーリーシンボルを渡しましたので、これから神聖魔法の回復魔法を使ってみましょう、準備はよろしいですか? 」

「はい、パールさん、宜しくお願いします」

「回復魔法には主に初歩的なハーフヒールからヒール、ハイヒール、エクストラヒールと回復量が増えていきます、当然、それに比例してマナの器の消費マナも大きくなります、ヨシダさんのマナの器を考えますと、ここはやはり、ハーフヒールを使っていきましょう」

「はい」

緊張してきた、けど、やってみる。

「ヨシダさん、まずはマナを練り上げて下さい」

「はい」

俺は自分の体の中に宿るマナを右手の手の平に集めるよう、イメージしてみる。

「うん、いい感じですね」

少しずつ、俺の右手にマナが集まりだして、手の平が温かくなるのが解る。

「その調子です、ヨシダさん」

もう大分右手にマナが集まってきたところで、変化が起きた。うっすらとだが、俺の右手の手の平から、なにか光りだしたのだ。自分でもびっくりだ。

「やはり、間違いありません、ヨシダさんは神聖魔法に親和性があるみたいですね」

パールさんの説明にカチュアちゃんも驚きを隠せない様子で呟く。

「ヨシダさん、すごい、もう魔力《マナ》をここまで操れる様になったの、私もうかうかしてられない」

俺の右手にマナが集まり、光輝いて温かく感じられる様になった。そこで、パールさんから更に指示を受ける。

「ヨシダさん、今から私の言う言葉を復唱して下さい、回復魔法を使う時の詠唱です、よろしいですか、」

「はい」

「ヨシダさん、まずは自分を癒したいと強く念じながら唱えるようにして下さい」

自分を癒したい、か、よーし、やってみる。

自分を癒す、自分を癒したい、自分を治したい、・・・癒したい。

「私の後に続いて下さい、・・・癒しの光よ・・・」

「癒しの光よ」

「彼《か》の者を癒したまえ」

「彼の者を癒したまえ」

「ハーフヒール」

「《ハーフヒール》」

「今です、ヨシダさん、自分の体に右手を触れて下さい」

「は、はい」

俺は自分の体に右手をかざし、癒したいと念じる。

俺の右手が光輝いて、なぜだか温かい温《ぬく》もりを感じた、自分の体が軽くなった気がして、体調はすこぶる良好だ。身体全身が温かくなり、ぽかぽかとしてきた。気持ちいい感じだ。

「・・・どうやら成功の様ですね、ヨシダさん、今貴方は回復魔法のハーフヒールを使ったのですよ」

「そ、そうですか、やりました、よかった、ちゃんと魔法が発動して、・・・だけど・・・」

何故だろうか、身体は元気になった感じなのだが、気分が優れない、ちょっとした脱力感を感じる。

「パールさん、身体は元気になったのですが、なんだか気分が優れません」

「魔力《マナ》を使ったのです、ヨシダさんのマナの器は人よりも少ないので、魔力枯渇状態に陥っている可能性があります、ヨシダさん、今日はもうこれ以上魔法は使わないで下さい、いいですね」

「は、はい・・・」

これが魔力枯渇状態か、確かにこれはキツイ、体はなんともないのに、変な脱力感がある。マナを使うとこうなるのか。これは確かに一日一回を限度にしないとやっていけない。

「マナは一日休めば回復致します、それ以外にも食事を取る事によって回復することもあります、ヨシダさん、とにかく今日は魔法を使わないで下さいね」

「は、はい」

それにしても、遂にやったぞ、俺にも魔法が使えたじゃないか。なんだか嬉しい。勿論、スキル「回復魔法」のお陰だというのはわかっているのだが、それでも魔法を使えたというのが嬉しいのだ。なんだか顔がにやけてしまう。疲がとれていて、心地良い。脱力感はあるのだが。

「ヨシダさん、魔法は使い続ける事によって上達していきます、その聖印は暫くの間ヨシダさんに預けるので、機会があればいつでも魔法が使える様に、日々鍛錬あるのみですよ、魔法の練習をするようにして下さい、いいですね」

「は、はい、ありがとうございます、パールさん」

そこで、カチュアちゃんが目を細めながら本音を漏らした。

「いいな~、ヨシダさん、魔法が使えて、私も早く魔法が使える様になりたいな~」

パールさんはカチュアちゃんに優しく言葉を掛ける。

「カチュアさん、焦らなくてもいいのですよ、ゆっくり時間を掛けて、少しずつでいいですから日々を鍛錬に費やせていけば、いつかはマナを感じられる様になりますから、焦らずやっていきましょう」

「は~い、・・・だけど、才能が無いとそれも難しいのよね、あ~あ、私は何時になったら上達するのかしら」

ふーむ、こればかりは俺でもうまく説明できないな、大体、俺はスキルのお陰でうまくいったと思っているから、自分の力ではないと思っている。

「カチュアちゃんも頑張ればきっとうまくいくよ、諦めないで」

「ヨシダさんはいいわよ、魔法が使えたんだから、私なんてマナを練るところからもう才能が無いって思っているから・・・」

パールさんがカチュアちゃんの目線に顔を合わせて慰めの言葉を掛ける。

「大丈夫よカチュアさん、魔法使いはそんなに簡単になれるものじゃありませんからね、日々の精進が必要になってくるのですよ、」

「だけど、ヨシダさんはもう魔法を使える様になったじゃない、私よりも後に教えてもらったのに」

「うーん、こればかりは才能としか言えないですね、ヨシダさんは元々魔法の才があったと思います、ただ、魔力《マナ》の器《うつわ》が小さいので、あまり連発はできないと思いますけどね」

「そうだよ、カチュアちゃん、俺、今、脱力感を感じているから、一日一回しか魔法を使えないから、正直どうなんだろうって思うよ」

「それでもよ、ヨシダさんは魔法を使った、すごい事だと思うわよ、私も早く魔法が使える様になりたい」

何はともあれ、これで俺も魔法が使える様になった訳だ。後は魔法の練習をしていけば、その内マナの器も大きくなるのかもしれない。いざとなったらスキルを何か習得してもいいな。まあ、スキルポイントがあればの話だが。

「いいな~、二人共、魔法が使えて、私なんかなあ~」

「あら、そんな事ありませんよ、私だって一日4回しか魔法が使えませんから」

「え? そうなの、パールさん日に4回の魔法が使えるの、それはそれですごいと思うんだけど」

「それが、そうでもないのよ、私は魔法使いの中級職でクラスはメイジなのだけど、他のメイジの方は一日5回は魔法が使えると聞き及んでいますから、それに・・・」

「それに? 」

「お恥ずかしい事なのですが、私は単体攻撃魔法しか使えないんです、どうしても範囲魔法が使えないのですよ、魔法使いとしてはまだまだなのです」

「へえ~、そうだったの、意外ね」

ふうむ、そうだったのか、しかし、単体攻撃魔法だってこの前のウォーターニードルは強力な攻撃魔法だったと思うんだがな。魔法って人それぞれなのかもしれないな。

何にしても、俺も魔法が使える様になって、よかった。これからは練習あるのみだな。一日一回の魔法か、使いどころを間違えないようにしなくては。










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