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第六話
しおりを挟むその後、連絡を受けて到着した、フォーク犯罪捜査班の面々も到着し、東は連行された。この日は槇原は、七海についていることを許されたので、七海が落ち着くまでそばにいた。七海は気丈に振る舞っていたが、終始震えていたのは間違いない。けれどその場で、証言はしてくれた。まず強姦未遂の現行犯で、東は逮捕され、その後は自宅の捜査が行われ、連続強姦殺人犯として、正式に逮捕された。
こうして捜査本部が一つ解散となったその日、槇原はその足で、景紀大の七海の研究室へと向かった。犯行があった隣室は今でも立ち入り禁止だが、研究室側で、七海はいつもの通りに研究に励んでいる。
「七海」
ドアから入って槇原が声をかけると、ゲーミングチェアに座っていた七海が、椅子の向きを回転させて、槇原へと振り返った。
「槇原」
「捜査本部は無事に解散した」
「そう」
「――もう、大丈夫か?」
「うん。私はもう平気だよ」
「お前は平気じゃなくても平気だと言いそうで怖い」
微苦笑した槇原は、勝手にソファへと座る。立ち上がった七海が、コーヒーを二つ用意して、自分と槇原の前にそれぞれ置く。裏付け捜査の多忙もあったのだが、槇原がここへと顔を出すのは久しぶりだった。
ただ、変化として、槇原がアプリでメッセージを送ると、七海がすぐに既読をつけてくれるようになった。それは槇原が、『恋人の連絡には、既読くらいつけてくれ』と七海にぼやいたせいだろう。そう、今では気持ちを確認し合い、自分達の関係は少し変わったと、槇原はそう考えている。ただ、事件が事件であったから、槇原は七海を気遣って、暫くの間、体を重ねたいとは言わないでいた。
本当は今も、甘い香りが漂う七海を、押し倒してしまいたい。舐めていっぱい愛したい。けれど、七海を怖がらせたくはなかった。無理強いすることではないし、今後は研究の代償や捜査への協力なんていう名目がなくても、いつだってそばにいる権利があるのだから。
「ねぇ、槇原」
「ん?」
「……今日、君の家に行きたい」
「被験者になれという意味か? 別に俺は、もうお前に体を提供してもらう気は無いから、いつだって時間が空いていればそのくらいは――」
「違うよ、今手がけてる研究は、必要ないって前にも話したと思うけど?」
「ああ、そうだったな――……! ああ、そうか、そうだもんな」
「なに納得してるの?」
「俺達はもう恋人同士なんだから、家の往来は自然だな」
「っ、ま、まぁ、一般的にそうなんじゃないかい?」
それまで無表情を貫いていた七海が、不意に頬に朱を差した。
「ただ、家に来たら、俺はお前を抱かない自信は無いからな。もう、怖くはないのか?」
「槇原なら怖くないよ」
「そうか」
「こ……恋人だしね……」
七海が非常に小声でそう述べた。それが嬉しくて、槇原は心が満ちた気持ちになった。
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