魔王の求める白い冬

猫宮乾

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*** 過去:Ⅰ ***

【028】過去――魔王二日目③

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 城に戻ってすぐ、僕はロビンに頼み込んで、厨房まで連れて行ってもらった。
 食材類は出迎えてくれた大勢の使用人の魔族達の誰かが持ってくれている。僕はまだ、彼らの名前を聞いてはいない。

 僕は一つずつ買ったつもりだったのだが、どうやら在庫を全てロビンが買い上げてきたらしく――もしくは店の魔族がただで下さったようで、思いの外に大量の品物と一緒に、僕は厨房に入った。するとシェフらしき老人が一人と、やはりシェフらしき青年が一人、少年が一人いた。一見してそう分かったのは、地球と全く変わらない白い服を纏っていたからだ。

「魔王様におかれましては、このような場所に足をお運びになって下さるだなんて、光栄至極にございます」

 嗄れた声を震わせて、深々と頭を下げて老人が言った。

「昨日は魔王様の高貴なお口に合わない稚拙な料理を出してしまい……ど、どんな処罰でも受ける覚悟でございます」

 老人がそう言うと、隣にいた青年が、老人の前に走り出た。

「ウィクスシェフ長! あれは俺の責任です! シェフ長渾身の豚の丸焼きが一番魔王様のお口に合っていたんですから!」
「これリクス! 魔王様の前で、なんと畏れ多い!」

 慌てた声でシェフ長さんが恐る恐ると言った調子で顔を上げ、リクスという名前らしき青年を見ながら悔しそうな顔をした。
「だって、だって、そうでしょう!? ウィクスシェフ長の料理は、《ソドム》一です!」

 それから振り返った青年が僕に向かって歩み寄ってきた。
 すると、スッとロビンが僕の前へと出る。

「どけ!」
「無礼者が」
「シェフ長を処刑なんてさせないからな!」
「現時点では、不敬罪で貴方が最も処刑されるべき魔族です」

 そんな二人のやりとりを、怯えたように少年が見つめている。
 シェフ長は困ったように片手で目を覆っていた。


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