幸せな日々は脆く、

猫宮乾

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【十】一生涯の約束

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 その日から、僕は毎晩、ジュードと体を重ねるようになった。公的に――閨の講義の指南役へと、ジュードの事を僕が指名した事になり、誰も反対はしない。良い顔をしない臣下はいるが、ロスがそういう貴族の事は、黙らせてくれた。

「兄上は何も気にしなくて良い。いざとなれば、俺やルイがいるからな」

 ロスはそう言ってくれる。十五歳にして、ロスは結婚していて子供もいる。ルイディアドという男の子だ。僕は幼い甥を見る度に、この子が、ルイが玉座につくのも悪くないと思うし、元々帝王学を学んでいたロスが国王になるのも相応しいと感じている。

 だから気兼ねなく――というのも変かもしれないが、ジュードに身を委ねる日々が増えていく。ジュードは、そんな僕を見ると、度々苦笑している。

「ジュード、大好き」

 事後、僕は寝転がり、横からジュードに抱きついた。大きな寝台の上で、僕の体に腕を回し、ジュードが優しく笑った。

「俺も好きだ。俺の方が好きだ」
「僕の方が好きだよ」
「お前の望みなら、なんだって叶えてやりたいぐらい、俺はお前を愛している」
「――僕の望み?」

 それは、二つある。一つは、ジュードとずっと、一生そばにいたいという望みだ。そしてもう一つは――エンゼルフォードの街へ、師匠のもとへ、帰りたいという願いだ。

「……」
「顔が曇ったな。どうした? 何か困らせるような事を言ったか?」
「ねぇ……ジュード」
「なんだ?」
「ジュードは、僕が国王じゃなくなっても、僕を護ってくれる?」
「何を当然の事を。俺は最初から、お前がお前だから護ってるんだよ。気づけ。分かれ」

 苦笑したジュードは、それから目を伏せ、額を僕の頬に当てた。

「生涯俺は、レムのそばにいる」
「うん、うん。信じる。信じてる」
「俺はミセウスとは違う――が、お前の望みは、分かっているつもりだ。帰りたいんだろう? エンゼルフォードに。ミセウスのそばに」
「っ、ど、どうして分かったの?」

 僕が驚くと、ジュードが顔を上げて、それから僕を抱き起こした。そのまま両腕を僕の背中に回し、肩に顎を乗せる。ジュードの髪が、僕の頬に触れた。

「ミセウスに嫉妬しそうになる」
「え?」
「ただ、分かってる。俺も、レムが俺を好きだと確信しているし、信じているからな」
「うん、大好きだよ――ただ、師匠とジュードと、また、あの街で過ごしたいな、って……時々思うんだ」

 実際には、頻繁に考えている。それは特に、師匠からの手紙を受け取った時が顕著だ。そう考えていると、ジュードが僕の額にキスをした。そして僕の両肩を押すようにして、優しく僕にのしかかる。

「もっとレムが欲しい」
「……僕も」

 僕は、最近ではジュードに触れられるだけで、体が熱を孕む事を理解している。彼は、先ほどの行為で、まだほぐれていた僕の内部へと、性急に陰茎を進めてきた。いつもより少しだけ荒々しく乱暴に動かれて、僕は喉を震わせる。じわりじわりと体が炙られるように昂められていき、僕の全身は、すぐにカッと熱くなった。

 そんな僕の髪を掴むようにし、もう一方の手で僕の顎を持ち上げて、ジュードが深々とキスをする。舌使いを教えられた僕は、今では彼に口腔を蹂躙される度に、少しずつ息継ぎも上手く出来るようになった。

 ジュードは、夜毎僕の体を開いていく。暴かれる度に、僕は新しい感覚を知っていく。

「あ……ン……っ、ぁ……」

 僕が声を漏らすと、ジュードが荒々しく吐息した。そして一度、僕の中へと放った気配がした。たらりと白液が、僕の太ももまで流れて伝ってくる。それからジュードは僕の体を持ち上げると、後ろから抱き抱えるようにして貫いた。

「ああ!」

 いつもより奥深くまで貫かれて、僕は身悶える。涙が頬に筋を作っていく。それを撫でるようにジュードが指で拭った。そのまま僕の頬を、彼が撫でる。貫かれた状態で動きを止められると、僕の全身はびっしりと汗をかいた。ゾクゾクする。体が熱い。

「や、あ、動いて」
「……っ、ああ。お前がここにいるって分かって、それが理解できて、俺のものだと確信できるから、こうやって抱きしめていられるのは良いな」
「あ、あ、ジュード、あ、ダメ、あ、なんかくる」

 白い快楽が、僕に、漣のように襲いかかってきた。動かれていないのに、感じる場所を強く押し上げられていると、頭が真っ白に染まるのだ。足の指先を丸めて、僕はその感覚に耐えようとした。しかし――それが出来ない。

「いや、あ、あ、あああああ!」

 その時、僕は中だけで果てていた。先ほどまでに散々放っていたからなのか、前からは何も出てこない。なのに、全身を、絶頂に達した時と同じ快楽が絡め取っている。しかもそれは、すぐにはひかず、ずっとイきっぱなしのような感覚を僕にもたらした。

「ああああ、あ、うあ、ああ、やぁ!」

 あまりにも壮絶な快楽に飲まれ、僕は泣き叫んだ。すると追い打ちをかけるように、ジュードが腰を動かし始めた。

「待って、まだ、無理、ああああああ!」

 そのまま何度もまた、感じる場所を突き上げられ、すぐに頭が真っ白に染まった。ビリビリと快楽が広がっていき、もう何も考えられなくなる。

「俺だけを、見てくれ。約束してくれるか?」
「約束する、あ、あ、っ、ダメ、おかしくなる!」
「一生涯か?」
「うん、うん」

 ボロボロと泣きながら、何度も僕は頷いた。そんな僕の両胸の突起を指で弄びながら、ジュードが僕の耳元に唇を寄せる。その吐息にすら感じて、僕は快楽のあまり絶叫した。

「いやああああ、あ、あ、またイく、あ、あ、ああああ!」
「何度でも果てろ。誰でもなく、俺のもので」

 ジュードはそう言うと、再び僕の中へと放った。その刺激があまりにも強すぎて、気づくと僕は、意識を手放していた。

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