8 / 8
―― 本編 ――
【五】翌朝(★)
しおりを挟む翌朝――リオンが目を覚ましたのは、扉の開閉音が聞こえた時だった。
横たわったままでゆるゆると視線を向けると、白衣姿のガイが入ってきたところだった。ぼんやりしたまま眺めていると、ガイがベッドに上がってくる。
「起きたか」
その言葉に、リオンはハッとした。
そして自分の痴態を思い出し呆然とした時、正面でニヤッと笑ったガイが、不意に親指でリオンの唇をなぞった。その瞬間、背筋を快楽が這い上がる。もう今では理解できる。これは、粒輝力を注がれた感覚だ。
「い、一回と言っただろう……?」
リオンは怯えるように、力なく呟いた。
恐怖が強い。なにせ唇に触れられただけで、散々果てたというのに、また己の陰茎は反応を示したからだ。すると全裸のリオンの体の反応に、即座にガイが気がついた。そして右手で、ゆっくりとリオンの陰茎をなで上げる。無論その手からも、粒輝力が流れ込んでくる。すぐにリオンの陰茎は、完全に勃起した。
こうなってしまえば、もうダメだった。既にリオンは、自分の体が何を欲しているのか理解している。少し粒輝力を注がれると、自分の内側が満ちたと感じるまで、それを注がれなければ、体が持たない。ずっと熱いままになる。その事実に気づいて、リオンは震えながら目を潤ませた。呼吸すれば、その吐息にすら感じ入ってしまう。
「リオン、どうする? 俺は相手をしてやれるが、本当に昨夜の一回でいいのか?」
「っ」
「随分と反応しているようだが? たった一晩で回復するとは、若いってすごいな――リオン。言え」
「……」
欲しくて欲しくてたまらない。それが現実だ。だが言えない。それはプライドからではなく、羞恥からだった。リオンが沈黙していると、スッと目を眇め、ガイが冷ややかな顔をした。
「やめるか? 俺はそれでも構わないぞ」
その言葉が本音だというのは、ガイのこれまでに見た事が無いような冷徹な眼差しから明らかだった。リオンは羞恥をかなぐり捨てる。今、ガイに手を離されたら、この体がどうにもならないことを、よく理解していたからだ。
「し……してくれ……」
「じゃ、自分で俺に乗れ」
「!」
ガイはそう言うと、寝台の上に座した。おずおずと気怠い体を起こしたリオンは、困惑しながらガイを見る。そこには、既に張り詰めた剛直があった。
「……っ」
リオンは、意を決して、ガイの両肩にそれぞれの手をのせた。
早く行為を終えてしまおうと考えた結果だ。
そしてここから離脱しなければ、自分の体はおかしくなってしまうという危機感があった。ゆっくりと菊門を、ガイの尖端にあてがう。そして腰を下ろそうとすると、ガイが支えた。
「慣らさなくていいのか? 昨日の今日だから、解れているとは思うが」
リオンは無視した。そのような気遣いをするのならば、もっと優しく粒輝力を注いでくれればよかったと言いたくてたまらなかったが、その声も飲みこむ。
「んぅ」
「良い眺めだな。男前が俺の上でこうしてるってのは」
「ひゃっぁ!」
その時、ぐっとガイが両手で、リオンの腰を下におろした。心の準備が出来ていなかったリオンが露骨に声を上げる。すると吐息に楽しそうな笑みを載せたガイは、己の陰茎から粒輝力を大量に注ぎ込んだ。
「んン――!!」
ビクンとリオンの体が跳ねる。果てたため、力が抜けた結果、弛緩したからだが重力に従って下におち、結果ガイのもので深々と貫かれる形となった。力が抜けたリオンは、思わずギュッとガイの服の胸元を掴む。そして額を押しつけた。その全身が、小刻みに震えている。何度も息を吸っているのは、快楽が強すぎて、酸素が上手く吸えないからだ。
「やぁァ……あぁ……ァあ……あっ、ンあ……深い、深いっ、ン――!!」
根元まで受け入れる形になり、最奥をずっと押し上げられている状態なものだから、リオンは泣きながら喘ぐこととなった。ガイは突き立てた陰茎から容赦なく粒輝力を放っている。だから繋がっているだけで、幾度もリオンは果てている。必死に首を振り、リオンがすすり泣く。
「待って、待って、もうイけない、あ、辛い……辛い、無理だ……」
「まだ粒輝力、足りてないだろ? 今回は、本当にまだ足りてないはずだ」
「で、でも、でも……こ、これ以上されたら、無理だ。あ、あ、頭真っ白で、ダメ、ダメだ、あああああ! やだぁ、嫌だ、もう嫌だ、怖い、助けてくれ、もうこんな、うああ」
「そんなに気持ちが良いのか?」
ガイがニヤニヤと笑っている。顔を上げたリオンは、それを見てコクコクと頷いた。頬を涙で濡らす姿が、これもまた色っぽい。目には欲望の色を浮かべているというのに、口だけは止めろと繰り返しているように、ガイには見えた。だから容赦なく、粒輝力を大量に注ぐ。
「いやぁぁあ、気持ちよすぎて、もうダメだ、あ、あ、おかしくなっちゃ――ンあ!!」
「なれよ。それに、もっと本当は、粒輝力が欲しいんだろ? 染め上げられたいんだろ?」
「いや、いや、それは嫌だ。ダメだ。これ以上は止めてくれ。そうされたら、また気持ちよくなっちゃう。またイっちゃう。俺、もうそんな――うあああ!!」
「そんなに嫌なら、自分で動いて抜いていいぞ。見ててやるから」
「っ」
その言葉に、一縷の望みをかけて、リオンは腰を浮かせることにした。ガイの型に再び手を突き、必死で腰を持ち上げ、ガイの陰茎を抜こうとする。だが、途中まで行くと、力が抜けてしまう。それは無論、ガイが粒輝力を放っているせいだ。
「うあぁ……」
すると力が抜けて、一気に腰が落ちる。
「あああ、深いっ、だめ、っ、ぇ」
結腸を責め立てられる形になり、ボロボロと無くしか出来なくなる。それでも、二度・三度とリオンは頑張った。しかし無情にもガイが粒輝力をたたき込むせいで、五度目に挑戦した時、また力が抜けて深々と貫かれた瞬間、プツンと理性が途切れた。震えながら、真っ白な思考で、震える手を伸ばしてガイの胸元の服を掴む。そしてガイの着痩せする厚い胸板に上半身を預け、ガクガクと震えた。ガイがそれを見て、口角を持ち上げて、また粒輝力を解放する。
「ああああああああああああ」
その強烈な快楽で、強制的にリオンは意識をたぐり寄せられた。戻ってきた思考で状況を確認して泣き叫ぶ。先程までとは異なり、激しくしたからガイが突き上げてくる。仰け反ってなんとかリオンは無意識に離れようとした。だがその腰をガイがしっかりと掴んでいるので、上手く動けない。
「お前、腰は細いんだな。綺麗に筋肉がついた体をしてるが」
ガイがそんな感想を述べる。その直後だった。
「あ」
またリオンは中だけで果てた。
「あぁああ、もう、いやだああ」
号泣しながらリオンが果てる。強すぎる快楽に呼吸が苦しくなる。するとリオンの中が蠢き、ガイの陰茎を締め付けるようにしながら収縮した。
「っ」
堪えきれずに、ガイが激しく動く。それが奇しくも、リオンの絶頂に追い打ちをかける形になった。
「止めて、待って、今動かれたら――アああああああああ!!」
絶叫して、リオンが気絶した。
そのすぐ後、ガイが射精した。ガイが荒く吐息をする。そして少し驚いたような顔をしながら、額の汗を手の甲で拭った。
「持ってかれるとは思わなかった」
ガイはそう呟いてから、リオンの体を寝かせた。
己が陰茎を引き抜いた時、大量の精液が零れたのを見た。ばつが悪い心地になって、髪を右手で掻く。それから涙のあとが残る頬をシーツに預けているリオンを見る。
「寝てると、ちょっと幼く見えるな」
そんな感想を述べてから、白衣のポケットから、ガイは腕輪を取り出す。
勿論、折角捕まえる好機を得た、敵組織の幹部を、みすみす逃すつもりなどない。
意識のないリオンの左手首に、ガイは腕輪を嵌めた。それは、粒輝力を封じる効果と、位置の特定、また指定した範囲から出ようとした場合に、電流が走り気絶させる効果がある。今回は、ガイが管理用の腕輪を左手首に嵌めているので、ガイから一定距離離れると、気絶する事になる。
「目が覚めたら、色々聞かせてもらわないとな」
腕を組み、ガイはそう独りごちる。ただ困るのは、体を重ねて情がわいたからなのか、元々リオンが端正な顔立ちをしているからなのか、妙に艶っぽく見える事である。いつも敵対的で冷徹な印象を与えていた、実力派の男前が。自分の腕の中では、か弱い草食獣のように逃げようとし、さらには泣く様は、なんともたまらない。快楽に怯える姿、反して快楽を求める体、理性が本能に追いついていない様子を見ているのがとても楽しい。
「俺も大概鬼畜だな」
そんな事を呟いてから、ガイはリオンの横に寝転がり、抱き寄せて、腕枕をしながら眠りについた。少し休もうと決めたのである。
16
お気に入りに追加
114
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
くたびれた陽溜まり
猫宮乾
BL
僕は二番村の平民の母と、貴族の父の間に生まれた子供だ。伯爵家に引き取られて、十四歳の新月を待っていると、異母兄のジェイスが「出ていけ」ときつくあたってくるようになった。どうしてなんだろう? 最初はよくしてくれたのに。やっぱり、同じ歳の異母兄弟は複雑なのかな? 思春期かな? ※と、いう、異世界ファンタジー風のSF(宇宙)要素有な残酷描写のある短編です。企画していた(〆2021/11末)光or闇BL企画参加作品です。シリアス不憫な皮をかぶりつつのハピエンです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
平穏な日常の崩壊。
猫宮乾
BL
中学三年生の冬。母の再婚と義父の勧めにより、私立澪標学園を受験する事になった俺。この頃は、そこが俗に言う『王道学園』だとは知らなかった。そんな俺が、鬼の風紀委員長と呼ばれるようになるまでと、その後の軌跡。※王道学園が舞台の、非王道作品です。俺様(風)生徒会長×(本人平凡だと思ってるけど非凡)風紀委員長。▼他サイトで完結済み、転載です。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
ジャムよりも甘く
猫宮乾
BL
父親の犯した罪により村八分――総嫌われ状態で孤独だったマイス(俺)の元に、ある日新任の聖職者が挨拶に来る。するとケーキだと指摘され、自分がフォークでなかったことにマイスは安堵する。だが、その牧師が、フォークであり、そのまま食べられた結果、好きになってしまい――?※ケーキバースです。Kindleで配信していたケーキバース短編集からの再録となります。
ダメ執事の沈黙
猫宮乾
BL
執事アンソロからの再録です。異世界もの、ハッピーエンド。主人(人外)×執事(人間)です。妹と貧しい生活をしていた少年が、年を取らない不思議な男にいざなわれて、執事となります。
セーフワードは、愛してる。
猫宮乾
BL
ある港町で闇医者をしている俺(常盤)の元に、その日見覚えのない客が訪れる。Sub不安症の薬を要求してきた相手に所属を聞くと、大学時代に何組だったかを答えられて、思わず辟易する。※ところから始まる、Dom/Subユニバースの短編で、刑事×闇医者のお話です。昨年発行されたDom/Subユニバースアンソロジーへの寄稿作品です。一部加筆修正や名称の変更を行っております。お楽しみ頂けますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる