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【66】もうフラグはどこにもないので、自分で立てていこうと思う。①
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「遅かったですね」
王都を出たところで、迎えの馬車からユーリスが下りてきた。
その姿を視界に捉えて、俺は思わず苦笑した。
「お前が早いんだ」
ここは、王都の西に広がる、ユーリスの領地アルバースの入口だ。
本当は、アルバース伯爵邸までは、自力で向かうつもりだった。
「無事な到着なによりです」
そう言って微笑んでから、ユーリスが俺に馬車を示した。
――ユーリスが宰相を退いたのは、俺が即位しないと明言するよりも前のことだった。俺と一緒にやめたのでは角が立つと、本人も理解していたのだと思う。相変わらず俺の一歩前を進むのだからいやになってしまう。
それだけではなく――ユーリスは、なんと俺よりも一歩早く、スローライフに突入していた。あっさり宰相を止めた現在、ユーリスは、医療塔を移設して、アルバース伯爵領地に大規模な薬草園を作っているらしいのである。俺はこれから、そこにしばらくお世話になると決めていた。名目は、薬草関連の資料の執筆のためである。今では誰も、俺が病弱だなどとは思っていない。
ユーリスが辞任した時に、ライネルを俺は返した。
だからライネルとも久しぶりに、伯爵邸で再会することになった。
荷物を置いてから、俺はお茶を持ってきたライネルとユーリスを見て、腕を組んだ。
元気そうだ。何とはなしにそう考えてから、ラクラスを見る。
「悪いが、少しユーリスと二人にしてくれ」
俺が言うと、わずかに目を細めて、ラクラスが頷いた。
ライネルと共にラクラスが出ていくのを、不思議そうにユーリスが眺めていた。
扉が閉まる音がしたあと、ユーリスが俺を見た。
「なにか密談ですか?」
「まぁそうなるな。実は、俺は――」
告白しなければと、俺は強く拳を握った。
改めて言うとなると緊張する。思わず言葉を飲み込んでしまった。
驚いたように俺を見ているユーリスと、目が合う。
「――ユーリス、俺は、お前とずっと一緒に……」
言え……! 頑張るんだ、俺!
「薬草作りがしたかったんだ!」
俺は強く宣言した。そして、短期間の滞在ではなく、永住したいのだと力説した。
最初は息を飲んで黙っていたユーリスであるが、次第に引きつったような笑みを浮かべるようになる、最終的には腕を組んだ。
「あの、殿下」
「俺はもう殿下ではない」
「フェル様」
「なんだ?」
「――期待した自分を恥じてますし、愛の告白かと思ったら違って拍子抜けしてますが、薬草関連に関してはそう仰る気がして、既に整えてあります」
「期待?」
「こっちの話です」
「そうか。さすがだな」
「ええ。この準備のために一足早く王宮を出たようなものですから」
それから、俺達は、移設して新しくなった医療塔について話し合った。
今後、俺達は、まずはアルバース伯爵領地から初めて、最終的には国中に薬草学を広める予定なのである。夢というより、計画を二人で話し合った。現実的な話である。
こうして俺のスローライフは、幕を開けた。
王都を出たところで、迎えの馬車からユーリスが下りてきた。
その姿を視界に捉えて、俺は思わず苦笑した。
「お前が早いんだ」
ここは、王都の西に広がる、ユーリスの領地アルバースの入口だ。
本当は、アルバース伯爵邸までは、自力で向かうつもりだった。
「無事な到着なによりです」
そう言って微笑んでから、ユーリスが俺に馬車を示した。
――ユーリスが宰相を退いたのは、俺が即位しないと明言するよりも前のことだった。俺と一緒にやめたのでは角が立つと、本人も理解していたのだと思う。相変わらず俺の一歩前を進むのだからいやになってしまう。
それだけではなく――ユーリスは、なんと俺よりも一歩早く、スローライフに突入していた。あっさり宰相を止めた現在、ユーリスは、医療塔を移設して、アルバース伯爵領地に大規模な薬草園を作っているらしいのである。俺はこれから、そこにしばらくお世話になると決めていた。名目は、薬草関連の資料の執筆のためである。今では誰も、俺が病弱だなどとは思っていない。
ユーリスが辞任した時に、ライネルを俺は返した。
だからライネルとも久しぶりに、伯爵邸で再会することになった。
荷物を置いてから、俺はお茶を持ってきたライネルとユーリスを見て、腕を組んだ。
元気そうだ。何とはなしにそう考えてから、ラクラスを見る。
「悪いが、少しユーリスと二人にしてくれ」
俺が言うと、わずかに目を細めて、ラクラスが頷いた。
ライネルと共にラクラスが出ていくのを、不思議そうにユーリスが眺めていた。
扉が閉まる音がしたあと、ユーリスが俺を見た。
「なにか密談ですか?」
「まぁそうなるな。実は、俺は――」
告白しなければと、俺は強く拳を握った。
改めて言うとなると緊張する。思わず言葉を飲み込んでしまった。
驚いたように俺を見ているユーリスと、目が合う。
「――ユーリス、俺は、お前とずっと一緒に……」
言え……! 頑張るんだ、俺!
「薬草作りがしたかったんだ!」
俺は強く宣言した。そして、短期間の滞在ではなく、永住したいのだと力説した。
最初は息を飲んで黙っていたユーリスであるが、次第に引きつったような笑みを浮かべるようになる、最終的には腕を組んだ。
「あの、殿下」
「俺はもう殿下ではない」
「フェル様」
「なんだ?」
「――期待した自分を恥じてますし、愛の告白かと思ったら違って拍子抜けしてますが、薬草関連に関してはそう仰る気がして、既に整えてあります」
「期待?」
「こっちの話です」
「そうか。さすがだな」
「ええ。この準備のために一足早く王宮を出たようなものですから」
それから、俺達は、移設して新しくなった医療塔について話し合った。
今後、俺達は、まずはアルバース伯爵領地から初めて、最終的には国中に薬草学を広める予定なのである。夢というより、計画を二人で話し合った。現実的な話である。
こうして俺のスローライフは、幕を開けた。
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