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【62】俺のスローライフ計画は、再スタートをきった。①
しおりを挟むその後、しばらくの間は、王宮も騒がしかったが、現在は落ち着いている。
ユーリスが奔走してくれたからだ。
現在俺は、国王代理として過ごしている。
突然のことだったから、今のところ非難はどこからも挙がっていない。
前国王陛下の葬儀は一度中止になって、再度行われた。
兄上の葬儀は、大罪人ということで行われなかった。
俺はどちらも始祖王だったと知っているのだが、王妃様や母上の悲しみようと言ったらなくて、どのように慰めて良いのかわからなかった。俺は、王妃様が抱きしめている、弟のトールを見た。国王陛下と王妃様の間の第二子で、血縁的にウィズ兄上と実の兄弟である。俺の異母弟の一人だ。現在十一歳である。
俺は、犯罪者の家族となったから、本来であれば投獄される王妃様と、王妃様の実子であるトール殿下の身を早々に保証しておいた。彼女達には罪もないし、母上からの嘆願もあった。こんなことにならなければ、と思いつつ――家族の幸せを壊したのは俺なのかもしれないと、少し考えた。
しかし俺は、悔やんでいない――わけでもない。
もう少し前に巻き戻って、ドロップアウトするという選択肢もあったのだ……――が、羽ペンを書類に走らせながら、ユーリスを一瞥して、思考を打ち消す。ユーリスは書類を真剣に見ているだけだ。俺が一人でスローライフを模索していた頃も、彼はずっと始祖王の排除のために忙しく動いてきたのだと改めて思った。
生きている。それが何よりも嬉しい。
「どうかなさいました?」
顔を上げたユーリスに、俺は慌てて話題を探した。
「いや――……そういえば、ハロルドから帝国との不戦協定の親書が届いたんだったか?」
「ええ。皇帝陛下がその件で一度お会いしたいとのことで、いま日程をこちらでも調整していますよ」
俺は静かに頷いた。
ハロルドも、ちょくちょく俺を気にかけてくれているようで、現在大混乱中の王国であるが、侵略したりはせず、逆に数々の支援をしてくれている。俺は、彼に告白されたことをたまに思い出すのだが、いつも頭から打ち消している。
「そういえば――」
「なんだ?」
「――皇帝陛下に聞きました。俺のことを助けてくれたんですね」
直接言われたのは初めてで、俺は顔を背けた。
ライネルからとっくに聞いていたと思うのだが、それはまあいい。
気恥ずかしさが浮かんできて、俺は窓の外を見た。
「今まで周囲を誤解させていた、召喚する力などがほとんどない、魔力もほぼない、そういう殿下のイメージが――……本物になってしまったということですよね」
「俺は俺だ。特に問題はないぞ」
「――ラクラスの召喚主でなくなってしまったのに? 本当に問題がないんですか?」
「自発的に喚べなくなっただけだ。あいつは、ずっと俺のそばにいてくれる」
俺がそう言うと、ユーリスが小さく頷いた。
そうは言ったものの、最近ラクラスは、姿を見せない。
聖剣と呪いの槍を、研究すると言ってハロルドが帝国に持っていったのだが、それが気になると言って、ついていったのだ。帝国でなら、召喚主が不在の召喚獣でも十分に活動が可能だから、いつか保護してくれると言っていたハロルドに俺は本当に感謝している。
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