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【47】死。①
しおりを挟む国内での大流行が免れたその日――午後二時を少し回ったところのことだった。
「大変です、国王陛下が!」
侍従の声に、俺は立ち上がった。冷静でいようと努めたが、体が震え、明らかに慌ててしまった。流行病ならば、俺はもう、特効薬を持っている。それを念頭に置きながら、慎重に始祖王の件を確認しなければと思った。
ライネルとラクラスと共に、父上の部屋に行くと、ユーリスの姿があった。
兄はうつらないように隔離されているそうで、王妃様や母上は既に面会して、いま隣室で医術師から説明を受けているそうだった。
寝台に横たわっている父の顔は紫色だった。
病の症状と類似している。意識がない様子で、汗をかいていて、息が荒い。
その苦しげな様子に、思わず拳を握った。
「早く薬の投与を」
するとユーリスが腕を組んだ。
「勿論行いましたよ」
俺は驚いた。てっきりユーリスは、始祖王を見殺しにすると思っていたからである。
遺跡の視察の際に、ニュアンスとして、始祖王にあまり良い印象を持っていない気がしたからだ。だが考えてみれば、父上は国王だ。国王を見殺しにする宰相はいないだろう。
だが――……俺は、父を改めてみた。
「では、どうして父上は、まだこのような具合なんだ?」
あの薬は即効性だ。服用したら、それだけで肌の色はもどる。
このような重篤な状態は、すぐに脱するのだ。
「薬をお渡しする際に、診察させていただいたのですが」
「ああ」
「――結論から言って、国王陛下は、ご病気ではありません」
「だったらなんだというのだ!?」
「呪いですよ」
「呪い?」
普段だったら冗談を言っている場合ではないと俺は激怒しだろう。
少なくとも前世ならば。
だが今は、『不死の始祖王を殺した者は呪われる』という言葉を思い出していた。
始祖王が父ではないかと思っていたのだが、呪われたのだとすれば、殺した者が父上ということなのか? 父上は始祖王に呪われたのか? だが俺は父上を覚えているのだから、聞いた呪いの内容とは異なる。なにか別のものか?
「誰が呪ったんだ?」
俺の言葉に、ユーリスが動きを止めた。
そして俯き、少ししてから唾を飲み込んだのがわかった。
「フェル殿下」
「なんだ?」
「そうではなくて、フェル殿下です」
「なにがだ?」
「――国王陛下に呪縛をかけたのは、フェル殿下です」
「え?」
最初、俺は何を言われているのか、よくわからなかった。
ただ、ユーリスが呼んだのが俺の名前であることはよく分かった。
――そこで俺は、思い出した。
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