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【42】始祖王について色々と学んで聖なる剣を手に入れる。②

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 続いて、壁の横の扉から、さらに地下へと進む階段を下りた。
 こちらには明かりがなかったから、ランプに火をつけて進んだ。
 少しジメジメしていて、コケの匂いがした。
 地下水脈に近いのかも知れない。

 階段を下りきり、今度は横に長い通路を進んだ。
 途中で、立ち入り禁止の札を見た。ガイル達が立てたと言っていたもので、理由は、その正面の壁に、王家の紋章である双頭の鷲が描かかれていたからである。あれがある場所には、王族が伴わなければ、立ち入ってはならないとされているのだ。ここに俺が呼ばれた理由でもある。そして俺がしっかりといるため、別段その札を気にとめる者はいないままで、先に進んだ。紋章が描かれた壁に突き当たった時、右に伸びる通路があった。今度はそちらに進む。その後、大きな部屋にたどり着いた。壁全体に黒曜石が散りばめられた、漆黒の部屋だった。だが内部には、巨大な木の根が入り込んでいて、それが部屋を支えているようにすら見えた。古い遺跡には、よくこういう事がある――そう思ったのは、最初だけだった。

 その木の根が、ドクンドクンと脈打っているのを見てとり、俺は即座に、それが召喚獣であると気づいたのである。どういうことだと悩みながら周囲を見渡して、そして目を疑った。

「ユーピルテ!?」

 壁に、木の根に拘束されている、人型の召喚獣の姿があったのだ。
 兄が先日行方不明になったと語っていた、兄の召還獣である。

「っ、は」

 苦しそうに呼吸しているのは、木の根本に絡まっているからだ。
 俺はラクラスへと視線を向けた。すると面倒くさそうな顔をしながら、ラクラスは右手を持ち上げて、軽く手首をひねった。結果、轟音がして、各地で木の根が爆発して飛び散った。そのおかげで解放されたユーピルテは、床に落下し、ぐったりと倒れ込んだ。

 俺は慌てて駆け寄った。ユーリスも同じである。

「大丈夫か?」
「は、い……ありがとうございます……僕、もうダメかと……」
「ここで何を? というか、どうして捕まっていたんだ? 今の木は?」

 思わず矢継ぎ早に聞いた俺の隣で、ユーリスはユーピルテを抱き起こして、水を飲ませている。こういう気遣いを考えると、ユーリスは根が優しいようにも思えてくるから不思議だ。なぜその優しさを、コイツは俺には発揮できないのだろうか。

「僕、僕……【心臓の転換】で、ウィズ様が死んでしまうのが嫌で――不死の始祖王を唯一殺せるという【新月黒曜の聖剣】を手に入れようとしてここへ来たんです」

 その言葉に、俺は思わずラクラスを見た。ラクラスもまた気だるげな瞳で俺を見返してきた。ラクラスの背にある、神聖な空気をまとっている剣を見る。

「だけど、剣はどこにもなくて、誰かが先に持っていったみたいで――そうしたら始祖王の召喚獣に見つかって、拘束されていたんです。剣の在り処を言えと言われて。今、ラクラス様が倒してくださった木の根がそれです。助けてくれてありがとうございます」

 俺は助かったのだから良かったなと思いながら、その声を聞いていた。
 そして直後、耳を疑った。

「魔族の王であるラクラス様が、敵対する人間の国を統べる我が主の命を間接的にとはいえ、お助け下さるなんて。全召喚獣の代わりに御礼を」

 ――ラクラスが、魔族の王?
 どういうことだ? 俺は思わずラクラスを見た。しかしラクラスは何も言わない。
 すると、俺の困惑を見越したように――近衛のライネルが口を開いた。

「召喚獣と魔族は、本質的には同一なんです」
「え?」
「理性の有無で分けられます。召喚獣は理性があり、魔族にはそれがない。そこで、力ある召喚獣が、王として理性なき魔族を統率しているんです」
「……それがラクラスなのか?」
「ええ。よって、ラクラス様が召喚円にて呼び出されて現世に顕在していれば、魔族は活性化します。同時に、召喚獣もまた、活性化します」


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