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【39】前世での師匠は、今世でも師匠かもしれなくて遺跡の発見者だった。②

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「大陸最古のものだと思うんだ。ロマンがあるだろ?」
「そうだな――最古、か。何か根拠はあるのか?」
「一応な。この国の三代目国王陛下、隣の帝国歴だと初代皇帝陛下の治世の頃から、始祖王神話は、少し手が加わっているんだ。今、大陸中に広まっているのはそちらなんだ。それで俺と仲間内のパーティは、変更前の神話が刻まれている遺跡に何度か踏み込んだことがあるんだ。そこの壁に書かれていた神話は、風化して読めない部分が多かったんだが、今回の遺跡では、それが全文読める。理由は、当時の魔術がまだ残存しているからで、その魔術というのは、始祖王の三番目の召喚獣――つまり今、フェル殿下が従えてるラクラスの時空魔術の効果なんだ。他の遺跡にそれがないのは、既にラクラスが始祖王のもとを離れたから――ようするに、始祖王が亡くなったからだと見ている。今回見つかった墓は、まだ始祖王が生きているうちに建造されたもので、亡くなる前にラクラスに記録させたんじゃないかなぁ、とな」
「どんな神話が書かれていたんだ?」

 俺が尋ねると、ガイルが筋骨隆々とした腕を組んだ。

「始祖王は、人の心や記憶が読めたらしい。だから、自分に害なすものは、害される前に分かるそうだ。よって、この墓石を傷つけることはできないし、傷つけたら呪いが降りかかる――ま、あれだな。墓荒らしへの警告だ。要約するとこうなるんだが、これを長ったらしく華美な比喩で飾り立てて古代語の暗号で彫ってあった」
「そんなどこの墓地にもありそうな警告が、なぜ各国で手を加えられて削除されていたんだ?」
「さぁな――それより殿下。そろそろ血が騒いでるんじゃねぇのか?」
「ああ。手合わせを頼む」

 たまにしか会わないガイルの前では、俺は無気力な姿などかなぐり捨てている。
 本当の俺をそのままに出して、持参した剣を構えた。
 正面では、ガイルも剣を抜く。背負っていた大剣だ。

 はじめは緊迫した空気が流れた。
 どのように動こうか、だが迷ってばかりいれば、すぐに負ける。
 思案しながら、俺は大地を蹴った。
 俺の剣が風を切る。続いて響いてきたのは、ガイルが受け止めた音だった。

 ――やはり強い。

 何度か刃を交え、俺はそう思った。ガイルは今世でも、紛れもなく俺の剣の師匠と言える。本当に再会できて良かった。そんな思考に一瞬絡め取られたのが悪かったのか、俺の剣はそこではじかれた。高い音がして、剣が宙に飛んでから、地面に突き刺さった。

 息を呑む。ガイルは俺の隙を見逃さず、俺を押し倒して、俺の真横の地面に剣を突き立てた。心臓が止まるかと思った。見上げれば、真正面にガイルの顔があった。そして――……!?

「っ」

 俺は口付けをされていた。突然の事態に目を見開く。
 何故、俺はガイルにキスをされているのだろうか。
  必死にもがくと息苦しくなった。頬が熱くなってくる。
 唇と唇が触れているだけなのだが、妙に恥ずかしい。
 慌てていたら、ガイルが俺を抱き起こして、両腕を回してきた。
 そして強く抱きしめられた。

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