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【25】兄に後宮を持つように進言したら、冷戦になる未来。②
しおりを挟む「誰か良い結婚相手はいるか?」
「まぁ俺としては、今後の国交を考えて、隣国の高位貴族か皇族が望ましいと思いますが」
「それは無理だ」
俺は首を振った。隣の帝国は、人間同士の戦争まで込みで、どう考えてもこの国よりも忙しいから、却下である。確かにハロルドの縁で、婚姻相手を見つけることは可能だろうが、望んで忙しいところに行く気などない。
「ご希望とかはあります?」
「薬草学に秀でている、自然と触れ合う環境の、適度な爵位の貴族が良い。俺の体調面のこともあるからな」
「フェル殿下、それは俺へのプロポーズですか?」
続いた声に、俺はむせた。お茶が変なところに入った。
た、確かにユーリスの家は、この条件にぴったりだった……!
「馬鹿な事を言うな。それだけはありえない!」
「失礼しました」
「もう良い、さがれ!」
「では、また明日」
吹き出すように笑って、ユーリスは帰っていった。俺は思わずため息をついた。
さて、翌日。
そろそろ言わないと、本当に父上に怒られると思い、俺は兄上を呼び出した。
「兄上、お話があります」
「ああ、医療塔の件か?」
「え?」
「ユーリスが熱心に、お前のためには医療塔が必要だと言っていたから、俺も取り壊し反対に賛成したんだ」
「……俺のため?」
「ああ。良い配下を持ったな、俺達は。ユーリスが宰相になってくれたら、この国は安泰だ。ユーリスは、お前が毎年流行る冬の病の特効薬になり得る薬草を見つけたと言っていたぞ」
「え」
兄上がそう言って、俺に見せたカゴには、父上を救う薬を作るための薬草の類縁種が入っていた。確かに今年、俺はこの株の栽培に成功したのだ。来年には、必要な薬草に近づけることができるはずで、そのためには医療塔の取り壊しや移転は困るのである。魔力を含んだ土が必要だからだ。だが――偶然だろうか? この薬草をピンポイントでユーリスが挙げたのだとすると、少し気になった。
だが、今の用件は、これではない。俺は、改めて兄を見た。
「兄上、そうではなく、もっと別のお話です」
「なんだ? フェルの頼みならなんでも聞こう!」
あ、言質が来た、と、思ってしまった。
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