21 / 68
【21】ハロルド(次期隣国皇帝)との雑談と、人間関係の再確認をしようではないか!③
しおりを挟む自室へと戻り薬草茶を飲み、ユーリスが退出した直後、俺は寝台に体を投げ出した。
部屋の外にはライネルが待機してくれているのが分かる。
――それにしても最近、俺を取り巻く人間関係の変化は著しい。
毛布を握りしめてゴロゴロしながら、俺はそんなことを考えた。
前世では、この辺りから、本格的に、王位継承戦争の布石は始まっていたのだと思う。
少し思考を整理しようではないか。
特に、前世で俺の処刑に関わった人々のことと、王家のことだ。
まずは俺の家族――王家の人間だ。
なんと言っても、まずは俺が絶対的に死を阻止する父王陛下の事を思い出す。
癒し系最高峰(物理的な怪我のみに有効)の召喚獣を持つ父は、穏やかな治世を敷く。父は俺が幽閉される前に没しているから、直接的に俺の処刑に関わる事はあり得ない。父に対して俺が出来ることは、その命を救うことだけだ。
次に、なんと言っても忘れてはならないのは、正妃様だ。
現在の正妃様は、大変優しく慈悲深い。
けれど王位継承戦争の時は、俺が知る限りヒステリックにひたすら兄の擁護をしていた。
愛する父王の死と、可愛い息子(俺の異母兄)の立ち位置に精神を病んでしまったのだと思う。だから俺が知る正妃様と、現在の正妃様は、対角に位置するほど違う。
正妃様とアルバース子爵家との関係は、古かったと記憶している。数代前に分家したのだ。ユーリスが宰相になる時の後ろ盾でもあった。俺としては、今のままの優しい正妃様のままでいて欲しい。そのためにも、出来る限りのケアをしたい。
そして何より母上だ。
まだ、生きてくれている。それだけでも俺は幸せだ。母は優しい。俺はマザコンというわけではないが、出来ることならば、その優しさに報いたい。兄上と俺が仲違いしない限り、母は今後も幸せに生きてくれるのではないかと思っている。それを願っている。
――今後もしも俺が処刑されるような事態が訪れたら、母は泣いてくれるだろうか。きっと悲しんでくれる気がした。絶対にそんな思いはさせたくはない。
さて……他に気になるのは、父の側妃の中でも男性筆頭のナイラだ。
ナイラ様は、俺が処刑されることが決まった時、正妃様についた。この二人が声高々に俺の処刑を唱えていたことは覚えている。今世ではまだ一度も会っていないが、出来ることならば会わずに過ごしたい。それとも先に会って、仲良くしておくべきなのだろうか。女性と見まごうほど美しい青年で、最も新しい側妃だ。歳は兄よりも少しだけ上だったと記憶している。本当に父の博愛主義(?)はすごい。元々は宮廷に来た吟遊詩人だった。
それから王族で俺の処刑に賛同したのは、第三王子である俺の弟だ。処刑の話が出るまで、俺はほとんど話したことがなかった。正直兄上と俺のせいで空気だった。悪いが、それが周囲の評価だった。別に俺は好きでも嫌いでもなかった。言っては悪いが、興味がなかったのである。今世でも茶会で顔を合わせて時折話す程度だ。だが……悪い奴だとは思えないんだよな。
今後再び未来が変わり、俺が処刑されるとすれば、関わってくる王族は彼らだろう。
次に、最重要危険人物だ。
紛れもなくその筆頭――それは、ユーリス・アルバースだ。
今世に限っては、ハロルドのことも気になるが。
少なくとも彼らの動向をそろそろチェックしておくべきだ。
――今のところ、近衛のライネルと冒険者のガイルと医術塔のナーガスは信頼しても良いよな?
そうだ、今後の未来の出来事を再整理しよう。
そう思い俺は、寝台から起きあがった。近くの机へと向かう。
そして羊皮紙の束の前で、羽ペンをインクにつけた。
覚えている限りの、今後の出来事を記しておこうではないか!
5
お気に入りに追加
1,829
あなたにおすすめの小説
BLゲームのメンヘラオメガ令息に転生したら腹黒ドS王子に激重感情を向けられています
松原硝子
BL
小学校の給食調理員として働くアラサーの独身男、吉田有司。考案したメニューはどんな子どもの好き嫌いもなくしてしまうと評判の敏腕調理員だった。そんな彼の趣味は18禁BLのゲーム実況をすること。だがある日ユーツーブのチャンネルが垢バンされてしまい、泥酔した挙げ句に歩道橋から落下してしまう。
目が覚めた有司は死ぬ前に最後にクリアしたオメガバースの18禁BLゲーム『アルティメットラバー』の世界だという事に気がつく。
しかも、有司はゲームきっての悪役、攻略対象では一番人気の美形アルファ、ジェラルド王子の婚約者であるメンヘラオメガのユージン・ジェニングスに転生していた。
気に入らないことがあると自殺未遂を繰り返す彼は、ジェラルドにも嫌われている上に、ゲームのラストで主人公に壮絶な嫌がらせをしていたことがばれ、婚約破棄された上に島流しにされてしまうのだ。
だが転生時の年齢は14歳。断罪されるのは23歳のはず。せっかく大富豪の次男に転生したのに、断罪されるなんて絶対に嫌だ! 今度こそ好きに生ききりたい!
用意周到に婚約破棄の準備を進めるユージン。ジェラルド王子も婚約破棄に乗り気で、二人は着々と来るべき日に向けて準備を進めているはずだった。
だが、ジェラルド王子は突然、婚約破棄はしないでこのまま結婚すると言い出す。
王弟の息子であるウォルターや義弟のエドワードを巻き込んで、ユージンの人生を賭けた運命のとの戦いが始まる――!?
腹黒、執着強め美形王子(銀髪25歳)×前世は敏腕給食調理員だった恋愛至上主義のメンヘラ悪役令息(金髪23歳)のBL(の予定)です。
悪役令息レイナルド・リモナの華麗なる退場
遠間千早
BL
※8/26 第三部完結しました。
12歳で受けた選定の儀で俺が思い出したのは、この世界が前世で流行った乙女ゲームの世界だということだった。深夜アニメ化までされた人気作品だったはずだけど、よりによって俺はそのゲームの中でも悪役の公爵令息レイナルド・リモナに生まれ変わってしまったのだ。
さらに最悪なことに、俺はそのゲームの中身を全く知らない。乙女ゲームやったことなかったし、これから俺の周りで一体何が起こるのか全然わからないんですけど……。
内容は知らなくとも、一時期SNSでトレンド入りして流れてきた不穏なワードは多少なりとも覚えている。
「ダメナルド安定の裏切り」
「約束された末路」
って……怖!
俺何やらかすの!?
せっかく素敵なファンタジーの世界なのに急に将来が怖い!
俺は世界の平和と己の平穏のために、公爵家の次男としてのほのぼの生活を手にするべく堅実に生きようと固く決心した……はずだったのに気が付いたら同級生の天才魔法使いの秘密をうっかり知ってしまうし、悪魔召喚を企てる怪しい陰謀にすっかり巻き込まれてるんですけど?!
無事約束された末路まで一直線の予感!?
いやいや俺は退場させてもらいますから。何がなんでもシナリオから途中退場して世界も平和で俺も平和なハッピーエンドをこの手で掴むんだ……!
悪役になりたくない公爵令息がジタバタする物語。(徐々にBLです。ご注意ください)
第11回BL小説大賞をいただきました。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
高嶺の花と思われがちですが、ただの外面です。
猫宮乾
BL
周囲に高嶺の花だと思われている僕(グレイ)であるが、それは無論外面で、中身は高尚でもなんでもない。しかも貴族だが貧乏だ。夢は玉の輿にのること。そんなある日、国王陛下が宣言した。第二王子がいっこうに結婚する気がないので、その心を射止めた者の願いを、できる範囲のことならなんでも一つ叶える、と。よぉーし! 第二王子殿下を射止めるぞー!
「霊感がある」
やなぎ怜
ホラー
「わたし霊感があるんだ」――中学時代についたささいな嘘がきっかけとなり、元同級生からオカルトな相談を受けたフリーターの主人公。霊感なんてないし、オカルトなんて信じてない。それでもどこかで見たお祓いの真似ごとをしたところ、元同級生の悩みを解決してしまう。以来、ぽつぽつとその手の相談ごとを持ち込まれるようになり、いつの間にやら霊能力者として知られるように。謝礼金に目がくらみ、霊能力者の真似ごとをし続けていた主人公だったが、ある依頼でひと目見て「ヤバイ」と感じる事態に直面し――。
※性的表現あり。習作。荒唐無稽なエロ小説です。潮吹き、小スカ/失禁、淫語あり(その他の要素はタグをご覧ください)。なぜか丸く収まってハピエン(主人公視点)に着地します。
※他投稿サイトにも掲載。
離縁しようぜ旦那様
たなぱ
BL
『お前を愛することは無い』
羞恥を忍んで迎えた初夜に、旦那様となる相手が放った言葉に現実を放棄した
どこのざまぁ小説の導入台詞だよ?旦那様…おれじゃなかったら泣いてるよきっと?
これは、始まる冷遇新婚生活にため息しか出ないさっさと離縁したいおれと、何故か離縁したくない旦那様の不毛な戦いである
幼稚園の便器やってます。おしっこ飲みます。うんちも食べます。ゲロの処理もさせられます。
明日兎
恋愛
鏡の前で適当な舞を全裸で踊ってふざけていたら、高次元的な存在の気に触れてしまったらしく、罰として100年間幼稚園の便器をさせられることになる話。
幼女のおしっこ飲まされます。
幼女のうんち食べさせられます。
体調不良になった幼女のゲロを食べさせられます。
そんな日常です。
ちなみに100年間、不思議な力で主人公は歳も取らないし死ねないので安心です!やったね!!
天使のローブ
茉莉花 香乃
BL
アルシャント国には幼少期に読み聴かせる誰もが知っている物語がある。
それは勇者の物語。
昔々、闇黒がこの国を支配していた。太陽の光は届かず大地は荒れ果て、人々は飢えと寒さに耐えていた。その時五人の勇者が立ち上がった。
闇黒に立ち向かい封印に成功した勇者たちはこの国を治めた。闇黒から解き放たれた人々は歓喜した。
その話は悠遠の昔のこと…しかし、今も続く勇者の物語。
ファンタジーです
他サイトにも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる