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【21】ハロルド(次期隣国皇帝)との雑談と、人間関係の再確認をしようではないか!③

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 自室へと戻り薬草茶を飲み、ユーリスが退出した直後、俺は寝台に体を投げ出した。
 部屋の外にはライネルが待機してくれているのが分かる。

 ――それにしても最近、俺を取り巻く人間関係の変化は著しい。

 毛布を握りしめてゴロゴロしながら、俺はそんなことを考えた。

 前世では、この辺りから、本格的に、王位継承戦争の布石は始まっていたのだと思う。
 少し思考を整理しようではないか。
 特に、前世で俺の処刑に関わった人々のことと、王家のことだ。


 まずは俺の家族――王家の人間だ。
 なんと言っても、まずは俺が絶対的に死を阻止する父王陛下の事を思い出す。
 癒し系最高峰(物理的な怪我のみに有効)の召喚獣を持つ父は、穏やかな治世を敷く。父は俺が幽閉される前に没しているから、直接的に俺の処刑に関わる事はあり得ない。父に対して俺が出来ることは、その命を救うことだけだ。

 次に、なんと言っても忘れてはならないのは、正妃様だ。
 現在の正妃様は、大変優しく慈悲深い。
 けれど王位継承戦争の時は、俺が知る限りヒステリックにひたすら兄の擁護をしていた。
愛する父王の死と、可愛い息子(俺の異母兄)の立ち位置に精神を病んでしまったのだと思う。だから俺が知る正妃様と、現在の正妃様は、対角に位置するほど違う。

 正妃様とアルバース子爵家との関係は、古かったと記憶している。数代前に分家したのだ。ユーリスが宰相になる時の後ろ盾でもあった。俺としては、今のままの優しい正妃様のままでいて欲しい。そのためにも、出来る限りのケアをしたい。

 そして何より母上だ。
 まだ、生きてくれている。それだけでも俺は幸せだ。母は優しい。俺はマザコンというわけではないが、出来ることならば、その優しさに報いたい。兄上と俺が仲違いしない限り、母は今後も幸せに生きてくれるのではないかと思っている。それを願っている。

 ――今後もしも俺が処刑されるような事態が訪れたら、母は泣いてくれるだろうか。きっと悲しんでくれる気がした。絶対にそんな思いはさせたくはない。

 さて……他に気になるのは、父の側妃の中でも男性筆頭のナイラだ。
 ナイラ様は、俺が処刑されることが決まった時、正妃様についた。この二人が声高々に俺の処刑を唱えていたことは覚えている。今世ではまだ一度も会っていないが、出来ることならば会わずに過ごしたい。それとも先に会って、仲良くしておくべきなのだろうか。女性と見まごうほど美しい青年で、最も新しい側妃だ。歳は兄よりも少しだけ上だったと記憶している。本当に父の博愛主義(?)はすごい。元々は宮廷に来た吟遊詩人だった。

 それから王族で俺の処刑に賛同したのは、第三王子である俺の弟だ。処刑の話が出るまで、俺はほとんど話したことがなかった。正直兄上と俺のせいで空気だった。悪いが、それが周囲の評価だった。別に俺は好きでも嫌いでもなかった。言っては悪いが、興味がなかったのである。今世でも茶会で顔を合わせて時折話す程度だ。だが……悪い奴だとは思えないんだよな。

 今後再び未来が変わり、俺が処刑されるとすれば、関わってくる王族は彼らだろう。
 次に、最重要危険人物だ。

 紛れもなくその筆頭――それは、ユーリス・アルバースだ。
 今世に限っては、ハロルドのことも気になるが。
 少なくとも彼らの動向をそろそろチェックしておくべきだ。

 ――今のところ、近衛のライネルと冒険者のガイルと医術塔のナーガスは信頼しても良いよな?

 そうだ、今後の未来の出来事を再整理しよう。

 そう思い俺は、寝台から起きあがった。近くの机へと向かう。
 そして羊皮紙の束の前で、羽ペンをインクにつけた。


 覚えている限りの、今後の出来事を記しておこうではないか!

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