上 下
1 / 68

【1】もしも生まれ変わったら異世界へと思っていたら、転生先も俺でした。

しおりを挟む


「さすがは第二王子殿下だ。そのお力、もっと民草のためにお使いになってはいかがですか?」


 来た。知っている。これは、"フラグ"の一つだ。俺は前世で思いっきりYESと答えて大変な目にあった。俺に話を持ってきたのは、十年後には宰相になるアルバース子爵家のユーリスだ。現在彼は23歳。俺は13歳。そして現在17歳の俺の異母兄と手を組んで、俺を社会的にも生命的にも抹殺するのはこやつだ。俺は、"覚えている"のだ。





 元々俺の国、ワールドエンドは、建国した始祖王が異世界ニホンからの転生者だったという伝承が残っている。生まれ変わり伝承が根付いているのだ。ゲンダイという世界だそうで、カガクというものがこの国で言うところの魔術のように溢れているらしい。

 俺は死ぬ間際に願った。それはもう強く願ったものだ。
 生まれ変わったらゲンダイニホンに行きたいと。異世界で幸せに暮らしたいと。
 それがかれこれ、33年+13年ほど前のことだ。
 辺境の掘建小屋に軟禁され、食事は日に一度、水のように薄いスープと固くて噛めないパン一切れ。前世で俺は25歳で軟禁され、33歳で処刑された。

 俺、結構頑張ったと思ってたんだけどな。
 まぁいい、もう昔の話は忘れよう。いいや、忘れてはいけないのだけれども。

「俺の召喚獣の召喚魔法円の在り処?  ラクラスを従えたけりゃ勝手に探せ。あいつが貴様らに制御できるとは思わないがな」

 その言葉を最後に俺は処刑され……目が覚めると眩い光に包まれていた。
 おぎゃあおぎゃあと自分が泣いていることを、冷静な理性が理解していた。
 俺を抱きかかえているのは、黒い髪に緑色の瞳をした美女だった。
 その姿は、絵画の中だけで知っている早くに亡くなった母にそっくりだったから、初めは天国あるいは地獄へ来たのかと思った。しかし続いて涙を流して笑いながらこちらを覗き込んできた青年を見て身が竦んだ。異母兄にそっくりだったからだ。違うのは、彼は青い目をしていて、兄は紫色の瞳だったということだけだ。しかしこの色彩にも見覚えがあった。父上にそっくりだ。父上も若くして流行病で亡くなった。やはりここはあの世なのか?  そう考えていたら、感極まったというような声が響いてきた。

「私とミラルダの子だ。名は、フェルとしよう。第二王子の生誕を祝う宴を!」

 ……ん?
 そこで俺は、思考が停止した。
 フェルというのは、紛れもなく俺の名だ。そして俺も第二王子だった。
 ミラルダは母の名だ。その上父にそっくりの人が今も父親らしい。
 いやちょっと待て、これって、これって、そのまんま俺じゃないのか?

 ――いいや、まさかな、気のせいだ。


 最初こそ、そう言い聞かせたものの、現実は残酷だった。


 わずか0歳にして、俺は文字も会話も理解できた。当然だ、死ぬ前から変わっていないんだからな!  俺の側からはまだ喃語がせいぜいといったところだったが。

 そう、そうなのだ。


 もしも生まれ変わったら異世界へと思っていたら、転生先も俺でした。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で…… だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?! ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に? 攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

冤罪で投獄された異世界で、脱獄からスローライフを手に入れろ!

風早 るう
BL
ある日突然異世界へ転移した25歳の青年学人(マナト)は、無実の罪で投獄されてしまう。 物騒な囚人達に囲まれた監獄生活は、平和な日本でサラリーマンをしていたマナトにとって当然過酷だった。 異世界転移したとはいえ、何の魔力もなく、標準的な日本人男性の体格しかないマナトは、囚人達から揶揄われ、性的な嫌がらせまで受ける始末。 失意のどん底に落ちた時、新しい囚人がやって来る。 その飛び抜けて綺麗な顔をした青年、グレイを見た他の囚人達は色めき立ち、彼をモノにしようとちょっかいをかけにいくが、彼はとんでもなく強かった。 とある罪で投獄されたが、仲間思いで弱い者を守ろうとするグレイに助けられ、マナトは急速に彼に惹かれていく。 しかし監獄の外では魔王が復活してしまい、マナトに隠された神秘の力が必要に…。 脱獄から魔王討伐し、異世界でスローライフを目指すお話です。 *異世界もの初挑戦で、かなりのご都合展開です。 *性描写はライトです。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

処理中です...