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―― 短編 ――

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

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「んッ、ぅァ……ぁ、ァ……ぁぁ……」

 ワタルが切ない声を零している。後ろから抱きかかえるようにして、ユーグが下から貫いている。深く深く楔を穿たれた状態で、ギュッと腹部に両腕を回されているから、ワタルは震えることしか出来ない。力強い腕が、ワタルの動きを封じている。

「ぁァ……ぁぁ……は、っぅ……ンん……ァ」

 その状態で、ユーグは動かない。ワタルの体はびっしりと汗をかいている。黒い髪がこめかみにはりついており、瞳には情欲が宿っている。

「や、やぁァ……」

 哀願するように、ワタルが声を上げる。内側からどんどん快楽がせり上がってくる。絶頂の予感に、ワタルは怯えて涙ぐむ。

「あ、あ……ぁ……――、――」

 そしてその時は訪れた。
 動かれたわけでもなく、ただ繋がっていただけだが、ずっと最奥を押し上げる形で貫かれていた結果、緩やかにこみ上げてきた快楽が、ワタルにドライオルガズムの波をもたらした。こうなってしまえばもうダメだと、ワタルはもう教え込まれている。ピクピクと体が震え、足のつま先までをも快楽が支配する。必死で足の指を丸めて快楽に耐えようとするが、上手くいかない。なにせ絶頂に達した今も、感じる最奥を押し上げられたままだからだ。

「ンあ……いやぁ……や、やだぁっ、あ、あ、辛い、待ってくれ、も、もう……うあ」

 ワタルが必死で頭を振る。艶やかな黒髪が揺れる。しかしワタルには見えない背後で、ユーグは意地悪く笑うだけだ。腕に込めた力を抜くことも無い。脈動し、蠢くワタルの中が、ユーグの肉茎に絡みついている。既にトロトロの中は気持ちがいい。

 もう体がぐずぐずになってしまったワタルは、力が抜けた体をユーグの胸板に預け、また襲いかかってくる快楽の予兆に震えた。

「あ、あ」
「辛くは無いだろう? なにせ、ただ繋がっているだけだ」
「う、ぅ……あ、ア……やぁぁ、またイっちゃ、イっちゃう……あぁ」

 再びドライオルガズムがもたらす快楽に飲み込まれ、ワタルの瞳に宿る色が、情欲一色に変わる。息をする度に、己の吐息にすら、ワタルは感じ入るほど、体が敏感な状態になってしまった。初めて経験するスローセックスに、ワタルはポロポロと泣いている。

 ――今夜は、ずっと繋がっていたい。

 ユーグがそう言ったのは、夕方のことだった。普段と同じ交わりだと考えて、嬉しくなってワタルは微笑し告げた。

『俺もずっと、ユーグと繋がっていたいよ』

 その結果が、これである。もう既に、月が昂くのぼっている。

「うあぁ……ァ……ああっ、ひぁ……あ、あ……」

 今もなお、ユーグはワタルの結腸を、巨大な尖端で押し上げたままだ。ワタルはすすり泣く。しかしユーグは何も言わない。ただ、ワタルを貫き、動かないし、動かせないようにワタルの体を封じているだけだ。

 次に絶頂に達した時、ついにワタルは快楽に耐えられなくなり、意識を手放した。
 だが――次に目を覚ました時、いやいやとするように首を振り、すぐに涙を浮かべた。意識を飛ばす前と、まったく同じ様態で貫かれていたからだ。

「嘘、嘘だろ、待ってくれ、やぁああ、もう、もう……あ、あ」
「――ワタル」

 その時やっとユーグが口を開いた。

「俺はな、お前が他の奴と話すのも本当は嫌なんだ。が、それを我慢できないほど子供ではない。けどな? 今日の昼のように、いくら友人とは言え、お前が俺を好きだと知っているとは言え、異世界人の仲間に抱きつかれて笑っている姿を見ると、気分が非常に悪いんだ。お前は、誰の恋人なんだ? 抱きついていいのは、俺だけじゃないのか?」

 その言葉を聞いて、ワタルは初めてユーグが怒っているのだと言うことに気がついた。即ちこのようにして快楽を煽られているのは――お仕置きなのだろう。

「もうしない。もうしないから、ユーグ、あ、あ、許してくれ、許して。も、もう」
「絶対だな? 約束できるか?」
「うん、うん、ン――!! あ、あ、あ、あ。またクる。キちゃう。やぁ――!!」

 再び絶頂が訪れた。ガクンとワタルの体が揺れる。すると初めてユーグが動いた。しかしそれは、絶頂に追い打ちをかける形になる。

「いやぁあああああ!」

 あんまりにも強すぎる快楽に、ワタルの理性が焼き切れる。
 ユーグが片手で、ワタルの陰茎を擦りながら、下から激しく突き上げ始める。

「出すぞ」
「うああああ!」

 ユーグの熱い飛沫が、ワタルの中を染め上げた。その衝撃で、ワタルは射精すると同時に中でも果て、ビクビクと体を震わせてから、今度はガクリと気絶した。そんなワタルの体を浮かせて、それまで座っていたベッドに寝かせてから、ユーグもまた寝転んで、ワタルを腕枕し、抱き寄せる。涙で濡れているワタルの頬を見ながら、ユーグは嘆息した。

「まったく。ワタルは無自覚だから、たちが悪い。どれだけ自分がモテるのか、一切気づいてないんだからな。もっと俺は、人前で愛を囁いて、ワタルが俺のものだと周知させるべきかもしれないな。尤も、俺からワタルを奪おうとするような敵が現れたら、全て蹴散らせるが」

 冷徹な目をして呟いたユーグは、それから改めてワタルの顔を見て、額に口づける。それから優しい目をした。ワタルのことを見ていると胸が温かくなる。大切でたまらない。そんな思いが強くなると、自然とユーグの頬が緩む。

「愛してる」

 そう呟いてから、ユーグもまた、目を伏せたのだった。



 ―― 終 ――


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