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―― 本編 ――

7:DEADEND(★)

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 目が覚めた時、俺は唖然としていた。
 確か、YESを選択した。
 その直後、階段を下りようとしていた俺の口に誰かが布を当てたのだ。

 若葉のような香りがした。
 そのまま気を失ってしまい、そうして俺はたった今目を覚ましたわけである。

 首には黒い首輪がはまっていて、両手首にも両足首にも鉄の輪がはまっていた。
 そんな状態で、俺はベッドに拘束されていた。

「――起きたのか?」

 動けないので、視線だけで声をした方向を見ると、そこにはルスが立っていた。

「これは、一体……」
「もう俺は限界なんだ」
「……と、言いますと?」
「俺にはすり寄ってくるばかりで作り笑いしか向けてくれないお前が、今は優しく笑ってる。俺のことは、単純に策略のための存在と割り切っているんだろうなと思うとな。ヒイロには違うのか。ヒイロが現れてから、お前は変わったな」
「なッ」

 そんなことを言われても、俺は困る。
 だって、今の俺は、現実世界の俺のままなのだから。

「俺だけのモノになってくれ」
「……え」
「ずっとここで一緒に」

 一体どういう意味なのだろうかと思いながら、首をひねる。
 すると全裸の俺に、ルスがのしかかってきた。
 そして小瓶をあけて、今までには見たことがない緑色の液体を手に取った。

 ソレを指にまぶし、唐突に俺の中へと押し込んだ。

「んぃ」

 痛い。痛みを感じたのは初めてかもしれない。けれどソレは一瞬で、俺の中へとすんなりと指が入ってきた。

「う、ふァ……ッ、あ」

 一気に三本つっこまれ、なのにそれだけじゃ足りないくらい、一気に体が熱くなった。
 内部が、熱い。
 なにこれ、おかしい。

「ああああっ」

 全身の力が抜け、汗ばんでくる。
 途端に内部を弄って欲しくて仕方が無くなった。

「やだ、やだ、ああっ、殿下」
「挿れてほしいか?」
「お願、あ、ア――!!」

 しかし指を引き抜くと、何処か苦しそうな笑みを浮かべてルスが目を伏せた。

「毎日ソレを塗ってやる」
「ひゃ、あ?」
「媚薬だ」

 意味が分からず困惑したが、それ以上に体が熱くて刺激を求めていて、何も考えられなくなった。しかし手首も足も拘束されているためどうにもならない。

 その上、ルスは帰ってしまった。
 そこからが地獄だった。
 ルスは帰ってくるたびに、俺の中に媚薬を塗り込めるのだ。

 その指の感触だけで果てそうになった時には、前に拘束具を填められた。

 もう俺の頭の中には、中をぐちゃぐちゃにかき回して欲しいという欲望しかなくなっていった。日に一度だけ来るルスのことを待ちわびていた。

「ルス、殿下、あ、ああ」

 だらだらと涎を零しながら、俺は犬のように舌を出して、大きく吐息した。
 学校はどうなったんだろう。

「そろそろ挿れても良いか」

 そういわれたのは、五日くらい日がたってからのことだったと思う。

「かえ、して……」
「無理だ。お前は行方不明になったことになっている」

 その言葉に、俺は息をのんだ。
 まさかこれが、――『Aは行方不明になった』じゃないだろうな!?

 しかしそんな考えは、押し入ってきたルスの男茎の圧迫感によって消え去った。
 俺の陰茎を締め上げていた輪がはずされる。
 その感触だけで俺は果てた。

 気持ちいい。
 俺は多分ずっとずっと、コレを待ち望んでいた。
 もう俺の体は完全に、ルスに絆されていた。

「やぁあっ、気持ち、良い……っ」
「いつもストイックな顔をしているお前を、こんな風に淫らにさせるのは背徳的で良いな」

 無理矢理押し入れられているというのに、気持ちよくて仕方がない。
 血とルスの精液が、ドロドロと俺の中から出てくるのが分かる。

 それでも俺の中の快楽への欲望は止まる事を知らない。
 何度も何度も俺は果ててもうでないと思うのに、それでもまだ体が熱くて、首を何度も振った。
 もうルスが何度果てたのかも分からなかった。

「やぁあ、殿下、あ、ああっ、もっと突いて!!」
「ああ」

 そういうと激しくルスが腰を動かしながら……俺の首に両手をあてがった。

「うっ」
「こうすると締まるな」
「っく、あ、は」

 息苦しさと快楽で訳が分からなくなっていく。圧倒的に酸素が足りない。

「リオ」
「ふ、ぁ」
「俺はお前が他の誰かのモノになるだなんて考えるだけで気が狂いそうになるんだ。だったらいっそ――」
「っ」

 ルスの手の力が強まり、俺は呼吸が出来なくなる。

 そのまま俺は、首を絞められ、多分死んだ。

 最後に見たのは、ルスの涙混じりの笑顔だった。

 何故なのか俺は、ルスにそんな顔をさせたのが自分だと思うと苦しくなった。

 殺してしまうほどの愛とでも言うのか……なんていうか、コレまで誰かにこんな風に愛されたことなんて無かったから――だから、なんだか死ぬ事とは違った意味で苦しくなったのだ。そのままやっぱり俺は死んだのだった。


『一つ前のセーブポイントまで戻りますか?』

 YES/NO

 俺は少し考えた。
 俺があの世界に戻れば、きっとルスはまた苦しい選択をするのだろう。
 本当はゲームの通り、攻略対象の一人として、幸せにヒイロと暮らす未来だってあるはずなのに。

 けれどこんなに何度も体を重ね――勿論それは、体が絆されただけなのかもしれなかったのだけれど、だとしても。

 同性だというのに、ゲームの仕様なのか、俺は抵抗が間違いなくなくなっていた。

 その上、ゲームだからなのか、痛みも基本的には感じないし、お腹が痛くなってトイレに駆け込むこともないのだから、あるいは快楽に囚われているのかもしれない。

 ただそれでも、どこかでルスと一緒に暮らしたいと思う自分がいたのだ。

 だから当然選択肢は……――YESだった。

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