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【四十六】黄泉の国Ⅰ
しおりを挟む一行と別れて、俺は目の前に広がる海を見た。その彼方に、小さな島が見える。ビバリアの街で聞いた伝承によると、あの島に黄泉の国があるそうだった。あそこに……ベリアス将軍の魂がいるのだろうか?
久方ぶりに将軍の顔を思い出した時、俺の胸の刻印がズキリと痛んだ。思わず手で押さえると、そこが異様に熱かった。俺は、その熱と痛みを知っていた。ベリアス将軍に抱かれていた日々、毎日感じていたものに酷似していたからだ。
潮風に吹かれながら、俺は直感した。ベリアス将軍の気配が、すぐそばにある。間違いなく、いる。
その夜は、街の宿屋に泊まった。マズラが最後に、報酬だと言って俺にくれた金貨のおかげで、体を売らなくても滞在出来た。翌日には、小さな舟を借りる事も出来て、島まで送ってもらえる事になった。
「ここまでが限界だ。街の者は誰も立ち入らない禁域なんだぞ」
砂浜が見える位置で舟を止めた街人に言われた。頷き、俺は海に降りる。そして礼を言ってから、浅瀬を進んだ。水を吸って重くなった衣を纏ったまま、砂浜に上がる。足跡を残しながら、俺は正面に見える森へと進んだ。
――迎えには来ないと宣言された。街の人々は、俺が死にに行くのだと思ったらしい。そういう旅人は多いそうだ。引き留められる事はなく、代わりに祈りを捧げられた。
森の中は暗く、どこまでも高い木が伸びていて、空が見えない。昼なのに、夜のように暗い。暫く進んでいくと、ポツリポツリと蛍のような光が見え始めた。それらを見回していると、ツキンと胸から快楽が広がった。進むにつれ、それはどんどん強くなっていく。
自分が進むべき方向を、すぐに理解した。快楽が示す方向に歩けば良いのだ。俺の体はすぐにドロドロに蕩けそうになっていったが、必死で歩く。そうして開けた場所に出た時、一際大きな光と出会った。それに引き寄せられるように進んだ頃には、俺は快楽以外何も考えられなくなっていた。ダラダラと汗が零れてくる。無意識に俺は、光に向かって手を伸ばした――すると直後、ギュッと手首を掴まれた。
「漸く来たか」
嘗て、憎んでいた声が、その場に響いた。ハッとして目を見開くと、目の前にベリアス将軍が立っていた。過去の姿と全く変わっていない。
「ああ、刻印をしておいて良かった。唯一の生き返る術だからな」
「っ……あ」
「今度こそ、永劫お前を辱めてやる。安心して良い」
「ち、違う。俺は解放を願って――」
「解放? それは俺に抱かれたいという意味以外を示すのか?」
ベリアス将軍が俺を抱きしめた。瞬間、全身が沸騰した。
「あああああああ」
その腕の感触だけで、俺は果てていた。ガクリと崩れ落ちた俺を、ベリアス将軍が抱き留める。そして首筋に噛みついてから、強引に服を剥いだ。茂みに押し倒され、土の臭いの中、俺は剛直を挿入された。その時、俺は絶望した。
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