黒薔薇の刻印

猫宮乾

文字の大きさ
上 下
25 / 61

【二十五】痛みと快楽Ⅰ

しおりを挟む

 結局の所、風の国の兵士達とヴェルスの行為は変わらなかった。俺を抱き潰しては、戦場に出て行くのだ。俺は次第に無気力になっていった。だが――ある日、ヴェルスが机に置いた剣を見て、ゴクリと唾液を飲み込んだ。

 ベリアス将軍を手にかけた時の事を思い出す。魔力が無くとも、元々あまり魔術が使えなかった俺には関係無い。俺には、剣があるではないか。

 その日、ヴェルスが不在の時、俺は必死に体を起こして、部屋の外の気配を窺った。残っている兵士達が酒を飲んでいた。乱雑に剣が置いてあるのが分かる。俺は気配を殺して、その剣を奪った。そしてそのまま、地の国の砦を逃げ出した。

 ――もう、俺は性欲処理の道具としてなど、生きるつもりは無い。
 そうだ、まだ生きているのだから、これからの道を切り開かなければ。
 そのためには、この首輪をなんとかして外さなければ。
 黒薔薇の刻印は、どうにもならないのだとしても。

 そうして俺は走り抜け、近くにあった地の国の小さな街へと入った。

「やってくれるねぇ」

 肩を叩かれたのは、その時だった。凍り付いた俺に、いつの間にか後ろに立っていたヴェルスが残忍な笑みを向けた。

「剣はなぁ、一本でも戦場以外でなくすと怒られるから、全てに魔術がかけてあるんだよ。残念だったな」
「っ」
「まぁ良い。このまま、献上してやる。丁度、この街は公爵領地の一つなんだ。変態として有名なマーニラ公爵閣下の――歓楽街なんだよ。娼館だらけだ」
「な」
「もっと鍛えてもらうと良い」

 ヴェルスはそう言うと、俺の手首を引き、無理矢理歩き始めた。抵抗しようにも、首輪がそれを許さない。涙ぐみながら、俺は丘の上にある邸宅へと連れて行かれた。その城のような大豪邸で、俺は仮面を付けているマーニラ公爵に引き渡された。ニタニタと笑いながら俺を見ていた公爵は、ヴェルスが帰った後、俺の首輪に触れた。

「どうやらヴェルスは正確には気づかなかったようだが、これは風の国の王族のみが所持する奴隷の輪だな。王族にまで可愛がられたのか。相当出自が良いか、生贄だったか。もっとも、手の甲に冒険者印の痕跡があるのだから、どうせ貧乏で身売りしたような輩なのだろうな。外見が綺麗だというのも災難だな」

 そう言うと公爵は、俺の顎をきつく掴んだ。

「私は綺麗なモノが嫌いだ。戦でこの顔に火傷を負ってからな。貴様の体も、すぐに醜く変えてやる。まずは逃げ出せないように、足の指を切り落とすとするか」

 俺は戦慄し、恐怖から震えた。快楽以外でこれほど震えるのは、久しぶりだった。

「っく、冗談だ」
「!」
「麗人が恐怖で凍り付く顔が好きでな」

 俺から手を離すと、公爵が俺を抱き起こした。そして俺を、地下室へと連れて行った。そこには様々な、卑猥な玩具が並んでいた。それを見て目を見開いていると、強引に公爵が俺の服を開けた。

「ん? 黒薔薇の刻印だと? 火の国の縁者か?」
「……」
「随分と興味深い体だな。どれ、味見をするか」

 俺を寝台に座らせると、萎えている俺の陰茎を、公爵が握った。そしてねっとりと筋を舐めあげてから、チラリと俺を見た。

「甘い味が残っているな。魔力は空だが――この味は、神の味だ。王弟であるから、地の神の力を引く私には分かる。これは良いもらい物をしたようだ。ヴェルス団長にはあとで褒美を与えるよう、陛下に進言するか」

 そう言ってから、公爵が俺の陰茎を口に含んだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔王様の小姓

さいとう みさき
BL
魔族は人を喰う。 厳密には人の魂の中にある魔力を吸い取る。 そして魔族の王たる魔王は飢えた魔族を引き連れ、今日も人族の領域に侵攻をするのだった。 ドリガー王国の北にあるサルバスの村。 ここには不幸にも事故で亡くなり、こちらの世界に転生した少年がいた。 名をユーリィと言い、前世では立派な料理人になることを夢見ていた。 そんな彼の村にもいま、魔族の魔の手が迫るのだった。

皇城から脱走しようとする皇帝のペット

匿名希望ショタ
BL
鬼畜なご主人様である皇帝から逃げるペット。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

田舎のヤバすぎる奇祭で調教される大学生

抹茶
BL
【特殊性癖もりもり注意】媚薬、拘束、無理矢理、睡姦、3Pなど、愛はあったりなかったり。大学生の澪は、サークルの先輩に誘われて、田舎の夏祭りの手伝いをすることに。そこでは子宝祈願の怪しすぎる儀式が受け継がれていた。境内に組まれた舞台の上で、衆目に晒されながら犯される……

奴隷騎士のセックス修業

彩月野生
BL
魔族と手を組んだ闇の軍団に敗北した大国の騎士団。 その大国の騎士団長であるシュテオは、仲間の命を守る為、性奴隷になる事を受け入れる。 軍団の主力人物カールマーと、オークの戦士ドアルと共になぶられるシュテオ。 セックスが下手くそだと叱責され、仲間である副団長コンラウスにセックス指南を受けるようになるが、快楽に溺れていく。 主人公 シュテオ 大国の騎士団長、仲間と国を守るため性奴隷となる。 銀髪に青目。 敵勢力 カールマー 傭兵上がりの騎士。漆黒の髪に黒目、黒の鎧の男。 電撃系の攻撃魔術が使える。強欲で狡猾。 ドアル 横柄なオークの戦士。 シュテオの仲間 副団長コンラウス 金髪碧眼の騎士。女との噂が絶えない。 シュテオにセックスの指南をする。 (誤字脱字報告不要。時間が取れる際に定期的に見直してます。ご報告頂いても基本的に返答致しませんのでご理解ご了承下さいます様お願い致します。申し訳ありません)

鬼の騎士団長が淫紋をつけられて発情しまくりで困っているようなので、僕でよければ助けてあげますね?

狩野
BL
不本意に騎士団に入れられた遊び人貴族×淫紋をつけられた謹厳実直な騎士団長。 R18多めです。 【あらすじ】 ラトゥール王国の騎士団長カルナス・レオンダルは若くして騎士団長に任命され、その強さと周囲への厳しさから"鬼"と呼ばれていた。政治的圧力で加入を認めざるをえなかった名目だけの副団長、大貴族の放蕩息子であるシルヴァリエ・アンドリアーノとは犬猿の仲だ。 ある任務で淫紋をつけられてしまったカルナスは、突然やってくる発情に苦しむようになる。必死にそれを隠そうとするも、かえってそれが"淫紋"を育てる結果になってしまった。偶然それを発見したシルヴァリエは、淫紋の力を弱めるためという名目でカルナスと関係を持つようになる。それまでの意趣返しとばかり強引な行為をしかけていたシルヴァリエだが、徐々にカルナスに特別な感情を抱くようになり……?

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

処理中です...