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【二十】鳥と樹Ⅰ
しおりを挟む「あ……ぁ、ァ……ん」
そこからは、ずっと貫かれていた。時間軸が曖昧になっていく。自分がどこにいて、どのように存在しているのか、分からなくなっていった。風のような魔力が、俺の肌を愛撫しているのは分かる。
「あ、あ……ァ、んは」
ずっとフェル殿下は、俺の乳首を吸っている。薔薇に掌をあてながら、逆側の乳首を吸うのだ。その度に、体から力と――魔力が抜けていく。どんどん俺の体が空っぽになっていく。
「動いてくれ……ああ」
貫いたままで、殿下は動きを止めている。淫らに俺の腰だけが動いている。気持ちの良い場所に当たらなくて、もどかしくて、瞳が濡れた。壮絶な快楽の記憶が甦ってくるのだが――どうやら今宵は新月らしい。俺の体は、純粋な性交がもたらす熱しか拾わない。
それでは、もうダメなのに。薔薇を撫でられる度に、俺は自分の体を熱に絡め取って欲しいと、朦朧とした意識で考えていた。
「あ、あ、フェル殿下」
「やはり私を知っているのか――が、今の私は神の代理だ」
「ああ……」
ゆっくりとフェル殿下が腰を動かした。そこに生まれた僅かな刺激がもたらした快楽が、ゾクゾクと背筋を這い上がる。
「んン!」
フェル殿下が甘く乳首を噛んだ。ジンとそこから広がる甘い快楽に、俺の体が跳ねる。だが穏やかすぎる快楽は――エガルの元で味わったような解放はもたらしてくれない。
「ぁ……ァ、あ……やだ、いやぁ、嫌だ、も、もう……」
「そうか。そんなに欲しいか?」
「ああ、は……ん、ン……欲しい、欲しいんだ。突いてくれ」
「では樹の神の力、喰らわせてもらうとするか」
「っ、ぅあ」
「その意味が分かるか?」
「ん、ぅ……うう」
殿下が何事か口にしているのは理解出来た。だが、何も考えられない。俺はただ喘ぎながら、哀願するしか出来ない。
「あ」
俺はその時、目を見開いた。
「ああああああ!」
気づくと、殿下の姿が変化していたのだ。それは、巨大な鳥だった。凶悪な陰茎だけが、人の形をしているのだが、その他の全てが変化している。
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