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【十七】塗り替えられるⅡ
しおりを挟む気づけば俺は、素直に頷いていた。向かった先は寝室で、それを見て思わず俯く。俺に求められているのは、体なのだとすぐに理解した。
「自分で解して、俺の上に乗れ」
「……っ」
その声を聞いた瞬間、俺の体の奥深い場所が疼いた。俺もまた、欲していた。
言われるがままに服を脱ぎ、俺は指を菊門から挿入する。
そんな俺の前で服を脱ぎ捨てたエガルは、すぐに寝台に上がってきた。
「随分と複数の魔力で体を染められているな」
「あ……」
繋がった瞬間、耳元で囁かれて、背筋が震えた。
「火の魔力だな。火の国では、相当犯されたのか?」
「ッ」
「これでは、誰でも求めてしまう体だな。俺の魔力で塗り替えてやるから安心しろ」
「あ、あア……あ」
俺は太股をエガルに絡める。俺の腰を掴んでいるエガルは喉で笑うと、抽挿を始めた。すると、彼の陰茎が触れている箇所から、体が楽になっていった。同時に、本能的な恐怖に襲われた。
「あ、あ、何、なんだこれ、うあああ」
「俺の魔力を注いでいる」
「あああああああああああああ!」
無我夢中で俺は体を揺らした。壮絶な快楽が染みこんできたからだ。それは、今までのような灼熱とは根本的に異なった。体から何かが吸い出されるように抜けていく。すると同時に、穏やかな快楽が俺を飲み込むのだ。俺は舌を出して、必死で息をした。
「やっかいな黒薔薇だな。この刻印をした人間は、完全にお前の体を塗り替えようとしたらしい。だが、俺の魔力にかかれば、封印は可能な程度だ」
「あ、ひぁ……は、ふぁァ……あ、あ……」
エガルが俺の乳首に触れ、ピアスを外した。両方の赤く尖っている乳首を羽のような優しさでエガルが撫でると、ジンジンと快楽が広がった。それからエガルが黒薔薇を覆うように、掌を当てた。
「あ、ア!」
すると薔薇の模様を走るように、魔力が広がったのが分かった。全身が軽くなっていく。数年ぶりに、この時俺は、全身の感覚を明確に取り戻した。
「せめて昼は貞淑でいられるようにな」
「あ、あ……ああ……ァ」
「エガルの名をもって、黒薔薇の刻印に命じる。熱は月の動きで変動させよ。満月の夜、昂ぶるように、新月の夜、収まるように」
「あ、ああああ! うあ、何、いやぁああ」
その時黒薔薇が光を放ち、俺の全身に快楽の漣が走った。
「これで楽になる。毎日昂ぶる事は無い。あとは、俺を覚えろ。お前の魔力、全て俺に渡し尽くせ。風の国の性魔術の生贄になるんだ、お前は今後な」
「あ、あ……ああ……そんな、あ……体が変だ、変だ、う、うあ」
力が入らない。ブルブルと震える指先にまで、何かが染みこんでくる。ずっと果てている感覚がした。息が出来ない。
「吸い尽くしてやるから安心して良い」
この夜俺は、何が起きたのか、この時点では分からなかった。
後で理解したのは、エガルが俺から黒薔薇の呪いじみた熱を抜いてくれたという事だ。
――だが、代わりにこの日から、俺はエガルの性奴となる事が決定されたとも言える。
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