黒薔薇の刻印

猫宮乾

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【二】黒薔薇の刻印Ⅱ

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「ネルス第二王子殿下か」
「!」

 名を呼ばれ、震えながら視線だけで振り返る。すると歩み寄ってきた敵――父王陛下の首を落とした張本人である火の国の将軍、ベリアスの姿がそこにはあった。闇夜のような瞳をしていて、口角を持ち上げて俺を見ていた。捕まった。もう終わりだ。ミネスを見捨ててまで逃れようとしたのに、ここで俺は死ぬのだ。

「なるほど、樹の国一の美姫と歌われている第二王妃の子息だけはあるな」
「……」

 恐怖で指先までもが凍り付く。震えていると、ベリアス将軍が喉で笑った。剣を引いた将軍は、俺の顎をグイと持ち上げると、残忍な顔をして笑った。纏っていた外套を剥がれ、草むらに引き倒されたのは、その時の事だった。ぶつけた後頭部の痛みと、殺されるという恐怖に息を呑んだ時、リボンを解かれ、強引にシャツを開けられた。

「たまには少年も一興か」

 獰猛な目をしたベリアス将軍が、俺の首筋に噛みついた。恐怖で凍り付いたままの俺の乳首を、ベリアス将軍がギュッと摘まむ。その刺激に、俺は更に震えた。何をされるのか、すぐに理解した。

「嫌だ、やめろ」
「抵抗しろ。その方が犯しがいがある」
「あ、ああ!」

 下衣の上から陰茎を覆うように掴まれる。閨の講義は、まだ座学しか受けていない。他者にその場所を触られた経験が、俺には無かった。そのままあっさりと下を脱がされると、夜風に下腹部が撫でられた。ねっとりと俺の胸を舐めたベリアス将軍は、片手で俺の陰茎を擦り始める。恐怖と混乱で、俺は涙ぐみながら、何とか押し返そうと試みる。

「ひ、嫌だ」

 俺の太股を持ち上げたベリアス将軍は、その側部を舐めてから、残忍な目をしたまま、片手で己の下衣を脱ぎ去った。そして――。

「――うあああああ!」

 一気に慣らすでもなく、俺の後孔に凶暴な肉茎を突き立てた。押し広げられる痛みを覚えた時、血が出たのが分かった。強引な挿入で、俺の体が傷ついたのだ。その血を潤滑油代わりとするように、ぐっと奥深くまで、ベリアス将軍が体を進める。引き裂かれるような痛みに、俺は仰け反った。熱く硬いものが、俺を穿っている。

「きついな。そう締めるな」
「いや、いやだ、ああ……うあああ」

 抽挿が早くなる。その度に、血がぐちゃぐちゃと音を立てる。強烈な痛みに、俺は号泣した。息が苦しい。

「ひ!」

 その時、グリと太い先端で、内部のある一点を刺激された。その瞬間、頭が真っ白になった。ジンと全身に、見知らぬ感覚が広がる。

「ここが好きか。こんな風に乱暴にされても感じるのか」

 せせら笑うように言われ、俺は首を振りながらボロボロと泣いた。だが、残酷な現実として、そこばかり突き上げられる内、俺の陰茎は反応を見せた。


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