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―― 第七章 ――
【第五十五話】知性と感情の有無
しおりを挟む寝室のベッドに仰向けになり、昼斗は久しぶりに見る天井を眺めた。瞬きをすると、対峙した敵の人型戦略機の姿が脳裏を過ぎる。円盤は、どうなったのだろうかと漠然と思案し、それから響いて聞こえた声を思い出した。
『地球を滅ぼす』
そんな声だった。
「ラムダの秘宝を返還すれば、滅ぼさないという意味に聞こえたけどな」
ポツリと零した昼斗は、じっくりと考えようと瞼を伏せた。Hoopは脅威だが、人型戦略機が仮に攻めてきたならば、数にもよるが地球はすぐに陥落すると考えられる。
「十二体目だとは言っていたけどな……地球にだって、第二世代・第三世代機がある。ラムダという惑星に、新型機が無いとは限らない」
昴は明言しなかったが、敵方にも、人型かは兎も角知的生命体がいるのは明らかだろうと昼斗は判断している。そう、エノシガイオスの声も話していたからだ。
嘗ての国境線が描かれた地球儀を、漠然と昼斗は想起した。線を少し通り抜けただけで、地球上には様々な文化や概念が広がっていた。それが星を跨ぐとなれば、同一の価値観がそちらにも形成されているかは疑問ではある、が、昼斗は目を開けながら呟く。
「知性」
思考能力、知能――倫理観。仮に著しくかけ離れていたとしても、先方に、〝感情〟や〝罪悪感〟は存在しないのだろうかと思考する。昼斗は、そうは思わない。一つの文明体系が広がる惑星があるのだから、ラムダという名だと機体から聞いたその星にも、独特の文化や価値観があるのだろうと思うし、ならば、〝気持ち〟だってあるのではないかと感じる。
「……話し合いで、解決は出来ないんだろうか」
敵、そう呼称するのが正確なのかも昼斗には分からないが、ラムダ系人類が存在すると仮定した際、あちらの要求は、明確に一つだった。
「ラムダの秘宝を返却すればいい」
そうしたら、もう地球を襲う事はないという、脅迫。
昼斗にはそう感じられた。
「秘宝を返して和解出来ないんだろうか」
呟いてみる。だが、〝ラムダの秘宝〟がなんなのかを、昼斗は知らない。それさえ分かったならば、話が劇的に転換するのではないかという予感がした。
「昼斗。届いたよ。クラムチャウダーも出来たよ」
そこへ、昴が顔を出した。体を起こし、笑顔で昼斗は頷いた。
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